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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第八話「腹ペコの錬金術師! 創造の戦士ヴァルトパーズ」
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秘密兵器ロックマン

 すると、石ころがひとりでに震え出した。断っておくが、トパーズが手のひらで転がしているわけではない。彼女の手は静止しているが、石ころは縦横無尽に動き回っているのだ。

 それだけでも相当な不可思議現象だが、更なる異常を目の当たりにすることとなった。

「獲物はあいつか。しけた面してやがんな」

 キャアアアアア! シャベッタアアアアア! おしゃべり人形とかなら、仰々しく驚く必要はなかったかもしれない。でも、相手があまりにも異様だった。


 トパーズの手の内に収まっている石ころに目や口が付き、憎たらしくハウンドカルアを睨みつけているのだ。どうなってんの。石ころが勝手にしゃべっている。いや、石ころがしゃべること自体おかしい。


「ロックマン。あいつを倒して」

「面倒くせえな。仕方ねえ、姉ちゃんの頼みなら乗ってやんよ」

「ロックマンって、色々とまずくないか、その名前」

「石男だからロックマンで間違っていない」

 プラグインしてトランスミッションする方ではないか。つい名前についてツッコミを入れたけど、それ以前に色々とツッコみたいところがあるんだよな。


「ねえ、ウルル。あの魔法って何なの。石ころが動いてるんだけど」

 華怜もまた疑問に思っているのか、ウルルを詰問する。あまりの剣幕にウルルは怯えていたが、咳払いすると解説を始めた。

「トパーズが得意とするもう一つの魔法だル。時間制限はあるけど、物質に命を宿らせて思うがままに操ることができるんだル」

「つまり、あの石ころはすばるんの相棒になってるってわけだね」

 しゃべるだけに飽き足らず、自由自在に動かせるのか。


 トパーズの掌から離れた石ころことロックマンは飛び跳ねながらハウンドカルアへと向かっていった。

「なんだこの石。ぶっとばしてやるし」

 単なる石ころと舐めているのか、ハウンドカルアは牙を剥きだしにして真正面からぶつかっていった。魔法で強化された牙だ。ただの石ころであれば楽に粉砕できるだろう。


 だが、あいにくロックマンはただの石ではなかった。しゃべって動く時点でただの石ではないんだけどね。

「オラ! 行くぞいぬっころ」

 囃し立てると勢いをつけて真正面からぶつかっていった。よもや、自ら牙へと飛び込むとは思ってもいなかったのだろう。虚を突かれたせいか、ハウンドカルアの動作が遅れる。

 隙が出来たのを逃さず、ロックマンはものの見事に体当たり攻撃を決めた。その衝撃たるやすさまじく、ハウンドカルアの牙に亀裂が入ったのだ。


「ありえないんですけど~。牙がないと大福食べられないし~」

 心配するのそっちですか。うろたえている怪物相手にも容赦せず、ロックマンは執拗に体当たり攻撃を仕掛ける。あまりにも単調な攻撃の繰り返しではあるが、ハウンドカルアは着実に傷を蓄積させていっている。

「オラオラオラ! ちんたらしてんじゃねえぞ」

 口汚く罵りながら突進を続ける。そして、ついにその時は訪れた。真正面から攻撃を受け止めた途端、牙が音を立てて粉砕されたのだ。

「ああ、牙が、牙がぁ」

 抜歯された影響か、多少呂律が怪しくなっている。「ざまあみろ」と言わんばかりに舌を出すロックマンであったが、突然として目鼻が消え失せた。おそらく、トパーズの魔法の効力が消えたのだろう。


 最大の武器が砕けてしまったため、勝敗は大方決したようなものだった。項垂れるハウンドカルアにトパーズはおもちゃの銃を差し向けた。

「あなたに勝ちはない。素直に降参するべき」

「まだだし~。まだ奥の手があるし~」

 負け惜しみか。しかし、ハウンドカルアは面を上げると魔力を集中し始めた。それも性懲りもなく口の辺りにである。粉砕されてもなお、噛みつき攻撃を繰り出してくるつもりか。


 いや、違う。魔力が蓄積されるにつれ、怪しげな吠え声が響き渡る。耳にしていると、嫌が上でも満月の荒野を連想してしまう。一体、いかなる攻撃を仕掛けようというのか。

「これが私のもうひとつの魔法だし~。雄々しき砲声よ! 真空をも引き裂く弾丸となりて貫け! 咆哮砲台ギャリックハウリング

 呪文が詠唱された直後、ひときわ大きな吠え声が轟いた。あまりの爆音に、ボクらは思わず耳を塞ぐ。まともに聞いていたら鼓膜が破れそうだ。


 遠くで観戦していたボクらでさえ、被害を被ったのだ。至近距離にいたトパーズはひとたまりもなかろう。実際、彼女は耳を抑えたまま片膝をついてしまっている。

 その様を指差し、ハウンドカルアは嘲笑を浴びせかけた。

「どうだし~。あたしの奥の手だし~。牙が無くても、吠え声を魔法で強化すれば十分攻撃できるってわけ」

 牙より攻撃力は劣るものの、リーチの長さと奇襲性は段違いだ。おそらく、耳栓だけで防げるようなチャチな代物ではない。あと少しだったのに、こんな隠し玉を繰り出してくるなんて。


 ここに来て形勢逆転されてしまったか。立ち上がるものの、トパーズは棒立ちしてしまっている。諦観してボクは肩を落とす。しかし、蘭子はにやにやしたまま腕組みしていた。

「トパーズがピンチなのに、心配じゃないの」

「いいや、全然。むしろ、怪物を心配した方がいいんじゃない。今ので、すばるんは完全にプッツンしちゃったからさ」

 あれって、本気で怒っているのか。無言のままハウンドカルアを凝視している。あまりに異様な雰囲気に優勢だったはずの怪物が尻込みする始末だ。

石男だと厳密にはストーンマンなんですけどね。

ちなみに、HPが600あって敵のランダムなパネル3つに岩を降らせる攻撃を仕掛けてくる動かないネットナビとはなんら関係がありません。

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