表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第五話「優輝の苦悩! 逆襲のクロコダイルカルア!」
60/141

優輝の衝撃の秘密

 クロコダイルカルアがいた辺りには巨大なクレーターが形成されていた。同心円状に大木が真っ二つにへし折られており、無残な切り口を晒している。経緯を知らない者からしたら、巨大隕石が落下したのではないかと思うだろう。隕石をぶつけたぐらいの攻撃を仕掛けたのだから、あながち間違ってはいない。

「予想外だったバ。クロコダイルカルアを倒せるとは踏んでいたけれども、ここまでの威力を発揮するなんて」

「君が変身させといて、予想外もクソもないよ」

「まあ、司教をひとりやっつけられたのは前進だバ。これからも期待してるバ、ダイヤモンド」

「ちょっと、私たちもいるんですけどね」

「寝てたんじゃないかバ」

「レンちゃん、このコウモリお仕置きしちゃおっか」

「あら、珍しく意見が合ったわね」

「コラ、やめるバ!」

 つい先ほどまで瀕死だったのが嘘みたいに、華怜と渚先輩はバンティーと追いかけっこをしている。ボクはそれを笑いながら見つめているのであった。


「さすがだな、ヴァルダイヤモンドよ」

 聞き慣れぬ声にボクは耳をそばだてる。わざと地面を踏み鳴らしながら接近してくる。嫌な予感がして恐る恐る振り返った。


 すると、マントをたなびかせながら、マスクで顔を覆った少女が屹立していた。ありえない。彼女が存在していること自体信じられない。けれども、ボクが驚愕したのは、加えて傷一つ負っていないということであった。

 ボクらの前に立ちふさがっている少女。彼女は間違いなく大司教だった。


 クロコダイルカルアを倒した光線に巻き込まれたはずだ。なのに、全くの無傷だなんて。可能性としては二つ。至近距離で放たれたにも関わらず回避していたか。あるいは、直撃したものの、傷を負うには至らなかったかである。どちらにせよ、常軌を逸しているのには変わりない。

「まさか、ダイヤモンドの魔法を受けて無事なのかバ」

「正直、危なかったわ。わらわに防御魔法を使わせるとはさすがと褒めておこう」

 咄嗟に防御の魔法を展開して防いだのか。盾の性能といい、反応速度といい、ダイカルアの上層部の実力は圧倒的と評する他ない。


 ゆっくりと近寄ってくる大司教。まずい。巨大クロコダイルカルアを倒すために、三人とも魔力を使い果たしている。本気で攻撃されたら全滅するのも必定だ。

 まさに、彼女にボクらの命が握られているといってもいい。そのことを承知しているのか、大司教はこれ見よがしに片手を広げる。掌底には漆黒の光弾が宿っている。尻を地面に擦りつけながら後退していく。すぐさま逃げ出したいけれども、全身麻酔を施された如く硬直してしまっていた。


 迫り来る光弾。しかも、あからさまにボクを狙っている。ああ、結局こうなるのか。諦観して目を閉じる。途端、様々な情景が浮かんできた。噂の走馬灯とかいうやつだろうか。若干十四歳にして大層な代物を拝見することになろうとは。穂波、父さん、先立つ不孝をお許しください。


 しかし、いつまで経っても光弾は飛んでこない。とっくに全身を吹き飛ばされていてもおかしくないはずだ。どうなっているんだ、一体。まさか、標的を変えられたってことはないよな。

 恐る恐る瞼を開ける。すると、すぐそばに仮面があった。あまりに驚きすぎると声が出ないものだ。そりゃ、いきなり仮面が迫ってきたら腰を抜かすに決まっている。けれども、それだけじゃない。仮面を被っている少女そのものが間近に迫っていたのだ。


 攻撃すると脅しをかけて、急接近してきたのか。逃げようとするが、顎を優しくさすられ、身動きがとれないでいる。生殺しにされているみたいで気が気でない。

 互いに視線を合わせていると、大司教は突如かしずいた。王者の風格とは似つかわしくなく、深々と頭を下げている。どうした、一体どういうつもりだ。


 困惑するボクをよそに、大司教はとんでもないことを言い放つ。

「お待ちしておりました。邪神様」

「邪神って、何を言っているんだ」

「自覚はないか。無理もなかろう。だが、そなたこそ、わらわたちが追い求めし邪神である」

 ボクが、邪神。全く訳が分からない。


 反論しようとしたものの、いきなり口を塞がれた。同時に、顔中に熱を帯びてくる。あまりに甘美な味にボクは目を白黒させる。

 ほんの数秒だったけど、唇に残る感触は強烈であった。え、えっと、これって、まさか。でも、間違いないよね。どうしよう、初めてだったんだけど。


 圧倒されっぱなしだった華怜たちも、この暴挙には黙っていることができなかった。

「ちょっとあんた、どさくさに紛れてなんてことしてんのよ! 私だってまだやったことないのよ」

 幼馴染とはいえ、中学生でこんな経験がある方が稀だと思うよ。強気な彼女にしては珍しく声が震えている。

「彼の者曰く、初めてを奪われることほど屈辱的なことはない。お姉さん、涙が出そうだ」

 それはボクのセリフだよ。涙が出ちゃう男のくせにビーインラブイズユーだよ。


 動揺するボクらを嘲笑うかのように、大司教は右腕を前に深々と一礼する。

「そなたの戦意を削ぎ、魔法少女を大幅に弱体化させようと思ったが、よもやいい意味で作戦が狂うとはな。そなたが邪神であるのならば話は別。大いに憎み、大いに戦うがいい。さすればわらわたちの悲願が達せられるだろう」

「だから、何を言っているんだよ。ボクが邪神ってどういうことだよ。そんな大層なものなんて……」

 反論しようとして口が止まった。まさか。まさかだけど、あいつがそうなのか。


 変身して魔法を使おうとするたびに物騒なことを呟くあいつ。まさかだけど、あいつこそがダイカルアの連中が追い求めていた存在なのか。でも、どうしてボクの中に。

「思い当たる節がそなたにもあるみたいだの。クロコダイルカルアより、お主が魔法を使う際に変な声が聞こえるという報告を受け、もしやと思ったのだ」

「嘘でしょ。言っとくけど、邪神なんて知らないよ。ねえ、一体ボクはどうなっちゃうの」

「答える義理はないの。ただ、そなたにはこれからも存分に戦ってもらおうぞ」

 それだけ言い残すと、大司教は踵を返した。揺らすマントが朧気になっていく。彼女の体が消えていっているのは幻覚ではないはずだ。異空間退避の魔法といったところだろう。


 残されたボクたちにはとんでもない問題が突きつけられていた。詳しいことは分からない。でも、ボクが邪神と関わっているってことは確かなようだ。

「ダイヤモンドが異常に強いのを不思議に思っていたバが、よもや邪神が宿っているとは予想外だったバ」

「バンティー、優輝はどうなっちゃうわけ。倒さないといけないってわけじゃないわよね」

「情報が少なすぎるから、如何ともしがたいバ。ただ、大司教はダイヤモンドが戦うことを望んでいたバ。おそらくだけど、ダイヤモンドが戦いで傷つき、絶望することこそ、邪神復活の最大の糧となるんじゃないかバ」

「ちょっと待ってよ。それじゃ、ボクを絶望させるためにダイカルアの連中はひっきりなしに狙ってくるってわけ」

 はた迷惑すぎるよ。今後の展開が容易に想像できるもん。最大の標的がいるって分かれば、ダイカルアの連中は集中的に五宝町を襲撃してくるんでしょ。ボクらだけでダイカルアの組織全体を相手にするなんて荷が重すぎる。


 肩を落としていると、横から力強く叩かれた。横を見遣ると、華怜が勇ましく並び立っていた。

「落胆することないわよ。要するに、優輝が戦うことなく、私たちが先にダイカルアの連中をぶっ潰せばいいってことじゃない」

「レンちゃんにしては的を射た意見ね。ならばお姉さんに任せておきなさい。ダイカルアは私が崩壊させてあげるわ」

「ちょっと、倒すのは私の役目よ。先輩は引っこんでて」

「クロコダイルカルアに苦戦していて、どの口が言っているんだか」

「あなたも苦戦してたじゃない」

 相変わらず華怜たちは口喧嘩をしている。うーむ、ボクたちで本当にダイカルアを倒せるのかな。前途多難な道筋に、ボクはそっと胸に手を当てる。


「ま、ともかくサキちゃんは気負うことはないわ。さて、勢いで郊外まで来ちゃったけど、帰るのが億劫ね」

 急に現実に引き戻さないでもらえますかね。変身解除されたので、一飛びするわけにはいかない。戻る頃にはすっかり日が暮れているだろうな。沈みゆく陽光をボクはいつまでも眺めていた。

さすがは大司教。俺たちにできないことを平然とやってのける。

ってのはさておき、次回で第一クール完結です。そこ、12話もやってないじゃないかとか言わないの。ラノベ1巻換算なら10万字程度で区切りなんだから(とっくの昔に超過しています)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ