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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第五話「優輝の苦悩! 逆襲のクロコダイルカルア!」
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往生際が悪い怪物

 一息ついてボクは変身を解除する。同時にどこからともなくバンティーが近寄ってきた。

「すごいバ。なんだかんだ言っても帰ってきてくれると信じていたバ」

「手のひら返しが清々しいな。ボクを見限ったとか言ってなかったっけ」

「昔のことなど気にしないバ」

 なんて現金なやつだ。変に恨まれるよりは幾分マシだけど。


「クロコダイルカルアは倒せたのかな。がれきの下敷きになっちゃ無事ではいられないと思うけどさ」

「多分、気絶してるんじゃないかバ。証拠に、あいつが生み出したバグカルアが軒並みノックダウンしているバ」

 指摘されてようやく周囲に注意がいった。大量のバグカルアたちがそんじょそこらで横たわっていた。バンティーの話だと、強制的にバグカルアにされた者たちはいわば操り人形の状態にあるようだ。大元であるクロコダイルカルアがやられた場合、支配から解かれて気絶するってカラクリのようである。ならば、雑魚は気にせずに大ボスを叩くのが一番効率が良かったってわけね。


「無事だったからよかったけど、色々と無茶し過ぎよ。目をつぶったまま突進した時は生きた心地がしなかったわ」

「いや、華怜の方が無茶しすぎでしょ。っていうか、ボクを戦わせたくなくて躍起になりすぎだって。それってもしかして、あの時のことが原因でしょ」

「さすがにバレてたかな」

 華怜は舌を出す。予想的中だったか。ボクも薄々自覚していたんだ。どうしようもないくらい絶望していたから、周りには相当迷惑をかけていたんじゃないかって。そう、母さんが死んだ時だ。


「正直、あの時の優輝は見ていられなかったわ。前から頼りなかったけど、誰かが支えてあげないとどうしようもないくらいうちひしがれていた。それで思ったのよね。私がしっかりしないといけないと。

 ついでに明かしておくと、穂波ちゃんとも話したのよ。お兄ちゃんがあんなだから、私たちがしっかりしようねって」

 穂波がたまに口うるさいなって思うことがあるけど、もしかして華怜が原因なのか。いや、大元はボクのせいか。あまりにもくよくよしていて頼りないから、近親者が支えようとする。どっかで似たような話があったな。


 ともあれ、脅威は去ったことだし一件落着。だとよかったけど、瓦礫の山と化したステージから嫌な音が響いた。不自然にコンクリート片が転がり落ちる音。嘘でしょ、まさか。戦慄するボクたちを嘲笑うように、特徴的な大顎が飛び出してきたのだ。


 埋没していたはずが、瓦礫を強引に掻き分け再誕する。さすがに無傷とはいかず、緑の鱗は所々が傷ついていた。しかし、凶悪な三白眼は健在だ。チェンソーを失っていてもなお、小心者を怖気づかせるほどの迫力がある。

「危なかったぜ。チェンソーを犠牲にして防御魔法を展開しねえとガチで消されそうになるとはな。こんだけの魔力があるってことは、やっぱりてめえが当たりってことで間違いねえってこった」

 吐き捨てると、肩を揺らしながら近寄ってくる。ちょっと、話が違うよ。


「バンティー、ボクの光線魔法って相手を問答無用で倒すんじゃないの」

「俺っちもよく分からない魔法だから質問されても困るバ。おそらく、並の相手なら一撃必殺できるほどの高威力魔法だけど、クロコダイルカルアはそいつを耐えきったってことじゃないかバ」

 ボクが使っていたのはあくまで即死魔法ではなく、高威力の攻撃魔法。ならば、とてつもなく防御力が高い相手になら防がれたとしても不思議ではない。けれども、明らかに攻撃偏重のあいつが耐えられるなんて、防御力も異常すぎるでしょ。


 バンティーの見立てでは、あいつはチェンソーを再度出現させるほどの魔力は持っていないはず。でも、素手だけでもプロレスラー百人力みたいな相手だ。ああ、どうしたらいいんだ。

 苦悩していると、ボクの両隣に華怜と渚先輩が並び立った。

「往生際が悪いと嫌われるわよ。とっとと倒されなさい」

「味気ないけど右に同じってね。年貢の納め時って言葉を知らないのかしら」

 ボクが回復させたおかげで、両者ともに再変身できるぐらいの魔力が残っているようだ。そうか、三人がかりならばどうにか勝てる見込みはある。


 一触即発、正真正銘最後の大一番。そうなるはずだったんだけど、予期せぬところから邪魔が入った。

「出しゃばるな、クロコダイルカルアよ」

 どこからか響く妖艶な声。呆気に取られていると、上空よりマントを広げ、一人の少女が舞い降りてきた。


 ローブを纏っているところからすると修道女っぽかった。しかし、清楚な神職者とは程遠い漆黒の衣装。おまけに、出るところは出ているため、そこはかとない色気を醸し出していた。顔をパピヨンマスクで隠し、着地の衝撃で長い黒髪を揺らしている。

「黒い魔法少女」

 ボクは自然と呟いてしまった。ミステリアスな雰囲気といい、修道女というより魔女という方が似つかわしい。


「バンティー、あんたいつの間に魔法少女を増やしたの」

「あんなの知らないバ。でも、どことなく魔法少女と似た波長を感じるバ」

 魔法少女っぽいけど、そうじゃないってこと。一体何者なんだよ。


「だ、大司教様。どうしてここに」

 強気な態度はどこへやら。怯えきった声でクロコダイルカルアが狼狽する。待って、今何と言った。

「大司教だとバ。そうとうまずいことになったバ」

 ひときわ困惑しているのがバンティーだった。司教が特撮ヒーローでいうところの幹部怪人だよね。ならば、「大」とついているあいつはその上ということになる。幹部の上ってことはまさか……。

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