『盛運の黒鞘』〈積年300、Uに至る〉
◆◇◆◇◆
『無限の迷宮』に向かう最中で感じた違和感を頼りに亡き人からの贈り物を友と共に見つけることができたものの───言われていた通り『曰く付きの品』であった。それでも不快感がなくなったことに少なくとも安心感は得られた【1184】
◆【運の値】
「…」
運というのは奇妙なものだ。敢えて断言するのであれば『因果律』へ干渉できる力───有り体にいえば『物事が上手くいく可能性』を無理矢理に可視化した物を値と呼び、これが高ければどうしようもない事象を除き自らの思い描く未来に辿り着ける
と言ったものだ。『幸運』や『不運』が必ずしも『万能ではない』ことは言うまでもない───突然何もかもが上手くいくわけがない『積み重ね』がつもりに積もって、ある日眼前の水面に『ひょっこり』顔を見せる。それが『運』の形だ
◆【このまま使えば不味いのは明白だった】
『ふむ、この直剣にはかような力があるのだな』
「はい」
しかし、このまま使うには『不確定に悪いこと』が起きてしまう可能性がある
◆【『S』→『A』や『全て』→『ある程度』】
【不運律・強刃A】
〈運の値をある程度刃のモトへと『変換』する〉
【1850】
「…」
ダメだ。剣自体の【スキル】を【編集】するにしても必要『LP』が多過ぎた。『運』より『LP』を犠牲にする方が今は問題になる
「…どうすれば」
『強刃』の効果は捨て難い、かと言って持っているには危険が大きい───どうすればいい?
◆【鑑定眼】
産地:ルーデンベルクの鍛治屋
区分:109,875
種類:直剣の鞘
ランク:A
所有者:ノル・スタルジア
スキル:なし
◆【剣と鞘は別物】
「…あ、そうか」
先行投資。この行いで『鬼が出るか蛇が出るか』───強大な力を手中に収めるにしてはかなり分の悪い賭けだというのに不思議な『確信』があった
集中し、つけるべき【スキル】を踏まえ『最適化』を【アイツ】に任せることにした。渋っていても埒が開かないためだ。これから先『これ』絶対に必要になる
「【この鞘に剣を諌めるだけの力を着けるには】」
【大賢者】を使う───貴重な時間、『LP』を『お前ら』に割くんだ。これで無意味でした。なんて言ってくれるなよ
『ノル。何をしている?』
「…っ!」
身体から大きく抜け落ちていく『何か』が掴んだ『鞘』へと手のひらを伝って流れていくのが分かる。このまま『吸い殺される』のではないかと思う程に『重く』そして───視界が大きく歪んでいくも寸出のところで耐えることになった
淡い光を放ち、程なくして消えた───黒塗りの直剣は『それ』を包み込む鞘と共に僕の手に握り込まれていた
◆【518】
産地:???
区分:0
種類:直剣の鞘
ランク:UB
所有者:ノル・スタルジア
スキル:【幸運C】【輪転・運】
◆【スキル詳細】
【幸運C】
〈所有者の運の値が恒常的に上がる〉
【輪転・運】
〈運は常に廻るモノである
納刀中『変換』した値を『循環』する〉
『循環』
〈消費、変換、欠落した値を円環から独立させ
自己の間で保存すること、減っても元の値に
時間をかけて戻っていく〉
◆【素晴らしい武器】
『ノル!何をした』
「何を、したんでしょうか?ははは…」
浮かれていた。不思議と笑顔になり、そればかりか『何もかも』が上手くいくとさえ思える程に身体の芯から自信が満ち溢れてくる
柄を握り、鞘を握り、両手の親指を使って少しずつ押し出すと研ぎ澄まされた刀身が姿を現した───陽光を裂いて現れた引き込まれる様な輝きをしていた。鞘の『月』、柄の『夜』、刀身は言うなれば『雲』だろうか
「すみません、急ぎましょう」
『うむ』
◆【諸刃の直剣を『整調』した】
◆【大賢者】より
鞘は剣を納める物。刃を表に晒すことを避けるべく作り出された物である以上、その存在による『剣』への『対策』───『辻褄合わせ』が可能になる
『幸運』なことに『300年』の『同衾』は『魔力』が『染みつく』までに十分な時間だった
『鞘』であること『300年現存』したこと『金細工』が施されていたこと───それらの『積み重ね』により『LP』による後押しで【幸運】の『獲得』に成功した
その他の装備でやろうとしたなら『10,000〜』は軽く掛かる
◆




