『ゴールデンダンゴー』〈黄金色の球虫〉
◆◇◆◇◆
『虎丸さん』に跨り降る迷宮の景色は一言で言えば『鏖殺』だった。5層で分かっていたことながらだった一撃でそこらの敵が粉微塵になっていく様は爽快を通り越して、いっそ哀れとさえ思える程だった
気がつけば7層。ここまでの時間の短縮になるとは───僕ひとりなら未だに2層付近を歩いていたことだろう
◆【7層】
『…む?』
「どうしましたか?」
『気配がせぬ』
虎丸さんがそう言った───気配がしない。というのはどういうことだろうか?
「それはどういう意味ですか?」
飛んでくる虫を【紫電】で爆ぜさせつつ、辺りを警戒する
『降るための階段が分からぬのだ』
虎丸さんがいうには『降り階段』の気配が鼻越しに感じられるため、7層までは一直線でここまで来れたとのことだった───7層に置いてはそれが全く感じられないという
『すまぬ』
「非常に助かってますよ!?」
◆【散策】
「それにしても、不思議ですよね」
『何がだ?』
「地下なのに太陽はあるし、自然もあれば
生態系が存在してるってところです」
『なるほど確かに面妖だな』
「…それはそれとして」
先程から黄金色の『丸まり虫』───やや厚みのある身体、頭と尻側が薄く、前後の中間点が最も太く、全身を節のある殻で防備している虫が先程からこちらを『捕食対象』としめ狙いを定めているのが感じられた
「虎丸さん」
『皆までいうな。極力手は出さん』
「ありがとうございます」
圧を感じる。いつかに感じた『ゴールデンビートル』とは比べ物にならない重圧だ。レベル差のある相手を倒す───レベルを上げる効率的な方法だ
◆【鑑定眼】
名前:ゴールデンダンゴー
レベル:115
スキル:【斬撃耐性C】【刺突耐性C】
【体術A】【生命探知】【純化】
◆【抜剣】
「…(すぅ)」
警戒してか近づいて来なかった『ゴールデンダンゴー』も虎丸さんが退けば身体を丸め突進してきた
剣を抜き、構える。今やお守りとなった父親の剣と比べ、かなり重量のある片手剣───ガードのない両刃の剣を両手で掴み、振り上げる
【斬撃耐性】がどれ程の効果を発揮し『諸刃の直剣』はそれを凌駕し得るのか───相手の転がりに合わせて『反撃』の要領で切断を試みる
「…っ!」
見通しが甘かった『手応えがなかった』───ゴールデンダンゴーの殻は想像を超え、容易に切断してみせた。問題があるとすれば『込める力』を誤り『黄金スライム』と初対峙した時と同じく『空振り』と似た現象が起きたことだ
剣の重量と相まって肩が取れかねない反動を受けた───凹みがつき、回転の動きに不規則さが生まれたことでゴールデンダンゴーは停止のタイミングを逃し、木に突っ込み停止した
「…」
木に突っ込み、腹の内側をこちらに晒したゴールデンダンゴーをそのまま真横にて両断するべく振り抜く───ゴールデンダンゴーが挟む様にして身体を丸め受け止めてきた。器用なことをするが
【紫電】でゴールデンダンゴーの身体を痺れさせ、柄を持つ手を反転させ、【石弾】で『丸まり』を無理やりに解すと剣が抵抗もなく、抜けた
◆【パーティの利点】
【718】身体の熱が治るまで時間が掛かった。1体でレベルが上がった。やはり効率が上層と比べ段違いに良いのが分かる───これなら剣に使った『LP』の回収は早々に終わるだろう
『見事だノル』
「ありがとうございます虎丸さ…ん」
虎丸さんの呼び掛けに振り返るとその口から『昆虫種』特有の『脚』が覗いていた───虎丸さんは本当に優しいな
「露払いありがとうございます」
『何、気にするな』
◆【解体】
殻を身から取り外していくと自ずと可食部?ばかりが残った───見た目は魚の刺身に似た見た目ながら解体する前を見ている身としては食べるか悩むところだ
その隣で『バリバリ』と敵を喰い千切る虎丸さんに聞いてみる
「モンスターって美味しいんですか?」
『不味くはない』
「それ美味しくない時の常套句では?」
『種類によるとしか言えぬな。毒になり得るものも
ある故に人は口にせぬことが無難だろう』
イナゴは美味しかった。けど、どうしたものか
『我が食うてやろう』
「お願いします」
毒はないとのことだった。しかし、食欲の湧かない見た目と解体の手間を考えると緊急用の食事とするのがいいだろう。少なくとも危険を冒してまで食べる意味もないのが分かった




