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『第二次審査』〈その2、寒さの中で〉

◆◇◆◇◆


 謝罪を終えて帰ろうとした途端に『寂しさ』を感じた。その方向は『シャリーさん』のいる方向からだった。僕を見る目に感情はなかった


 身じろぎ一つせずにただ『じっ』と僕を見ていた


「おい、その人の邪魔になってるだろ」


「…」


 頭を下げて遠退く背中に僕も背中を返した


◆【唇が痛い】


 心臓が締め付けられる様な気持ちの悪い緊張を受けることになった───手を伸ばせば届く距離の明らかに『助け』を求める人を無視する行為はどんなに頑張ったとしても慣れることはできなさそうだ


 公的に手を取ることはできない。『ハーレム』と公言されている以上それに手を出すことは『法』に手を出すことと同義である。今は耐えるしかない


『略奪』は問題となる───しかし、不幸中の幸いとはこのこと。自然な形で話を聞けた。先の受け答えは確実に『4人』には聞こえている


◆【機を待つ】


 震える歯を唇を挟むことで耐える。気がつけば唇が切れていたが、これは食いしばりのせいか───或いは『ブライトネスさん』かその両方か、いずれにしろ準備を終わっているだろう


 鼻の奥、喉との交差点が微妙な痛みを訴えているのが何よりの証拠だ


「ただいま戻りました」


 麻袋の口を広げ【風撃】を入れて、冷気を吐き出させ続けている───徐々に会場に『肌寒さ』と『乾燥』が齎された


◆【2題目】


「次のお題は『寒さの中で』…

 どの様にして身を温めるか、です」


 寒さに堪え、伯爵が鼻を押さえた。鼻腔を刺激する寒さの到来はこの時期には『毒』になりかねない代物だ。特に気温の上がり続ける今日この頃の『薄着』はさぞ堪えることだろう


 しかし、『道具店』やはり早かった。店主は準備していたとばかりに全員に『防寒着』を装備させ、自分も暖かそうな装備に身を包んだ


 これには会場も驚きを隠せなかった


「何でんなもん持ち歩いてんだよ!」

「ありえねぇ!」

「お題を初めから知ってたんじゃねぇか!?」


 観客席から野次が飛ぶ中


「そんなんだから彼女のひとりも

 作れねぇんだろうが」


 いつかの台詞をそのままに『意味』のより深い言葉となって観客席をぶん殴った───これには思わず『ぐぅの音も出ない』と言った様子で口籠もるものが続出した


「すまん、何か売ってくんないか?」


◆【土のかまくら】


 そんな中、ガモンさんが道具店のゼルファンさんに頭を下げて近寄っていた───話の内容からして寒さに対する『対策道具』を交渉中と言ったところだった


 しかし、ガモンさんもただ他人の道具頼りというわけでもなく、『土盾』を器用に変形させ『かまくら』の形を整えていた


「すみません、今持ってるのは

 彼女達への備えばかりで…」


「そこを何とか!」


 ガモンさんの頼み込みにより『発熱体』をひとつ買い取り、それをかまくらへと持ち込んでいった───もしかしなくともゼルファンさんの『道具袋』は『異空間保存』だろうか。抜かりなしと言った様子だ


 一方、ラムウギルドは身を寄せ合うことで暖をとっていた。人数有利ならではの手法ながらあまり有効とは言いづらかった───何せ『薄着』を超えた装備の2人は寒さに震えている様子。それに納得しているならいざ知らず、何故従っているのか


「ノル殿」


「ルナさんどうしましたか?」


「他の御三方には相談済みなのですが───」


◆【呪いの装備】


「呪いの装備…ですか」


『呪いの装備』───俗称。【不利益】を被る効果のみを持つ、もしくは【利益】との両側面を持つ装備の総称である


「はい。あの独特な形状と魔力

 教会に持ち込まれるものに酷似しておりますが

 確信が持てず───」


「…仕方ないか」


【鑑定眼】を使い装備の詳細を目にした時【束縛】【強制装備】などが見て取れた───いずれも『グダス・ケントール』の所有物だった


「確かに呪いの装備ですね」


 もしや『解呪系』の恩恵を受けるべく『依頼料』が目的の参加だろうか、などと考えるが『グダス・ケントール』の所有物が一貫している点で不自然だ───態々装備させる意味は一体


「…もしかして」


 ここでひとつ、嫌な予感が頭をよぎった。つくづく思うのは、どの家にも『その手の輩』が発生するのは何かの因果なのだろうか


◆【詐欺】


 ギラン・スタルジア。次男であり、僕の兄の顔が浮かんだ


「詐欺の可能性がありますね」


『支援詐欺』───救済をうたっておきながら呪いの装備を着けさせ、支払い、もしくは労働力を獲得することを目的とした詐欺の一種だ。ギラン兄さんも『これ』を仕掛け、仕掛けられで散々苦労を受けた


「…憲兵に突き出しますか」


「いえ、ここは【解呪】で───」


「『あれ』は大丈夫ですか?」


「…私にはもう、関係のないことです」


 構わず、静止する


「ノル殿…」


「…」


【解呪】を試みようとするルナさんの腕を掴み引き止める。死を目前にした『自棄』が見て取れる


 大方、公爵との契約を交わしたのだろう───『対価』を必要とする【スキル】を悪戯に使おうとするのをこちらも見過ごせる訳がなかった


「そこまで!次のお題に行くぞ!」


 ルナさんを引き止めているうちに伯爵が『2題目』の終了を宣言した


『道具店』はハーレムとしての違いを

『オーディンギルド』は臨機応変に対処し

『ラムウギルド』は見せつける様に回答し


◆【2題目も終了】

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