『虎丸』〈迷宮の掃除屋〉
◆◇◆◇◆
急いで迷宮へと向かう。もう時間がない───『無限の迷宮』に向かい。我武者羅に『魔物』を狩っていく道中は空いており、5層に早々に到着した───しかし、1〜4層の内。最早2層の師匠以外は煩わしく感じてしまう
こうも時間に追われているとどうしても思ってしまうものだった
◆【鑑定眼】
名前:巨大顎蟻
レベル:51
スキル:【俊敏性上昇C】【巨大】【強顎】
◆【VS巨大顎蟻】
食事に夢中だった『それ』の背後から【石弾】を溜め放った
「…!?」
が蟻は食べていた獲物を盾に活用して『石弾』を防ぎ、こちらに反撃をし掛けてきた───やや速い動きから『噛みつき』が繰り出される
「…っ!」
その顎の閉じた時に聞こえてきたのは大凡生体から聞こえる音では無かった───まるっきり金属音だった。『石弾』も弾き、仮に当たったとしても頑強な顎が容易に『それ』を砕いてみせた
「…っ」
突進に合わせ【水玉】をぶつける。が威力足らず、水による弱点を狙った法術も空回りとなった───【魔弾】により身体の装甲を辛うじて貫くことはできたが未だに威勢は良い状態だが攻撃が単調なので【石弾】による『初速』による砲撃で頭部を潰して勝てた
咬合力は脅威ながらその程度だった
◆【巨蛇VS巨蛙】
あいも変わらず、全体的に規模がデカい───先の蟻とは比べ物にならない怪獣決戦が今、眼前で繰り広げられている
先に仕掛けたのは巨蛇からだった。地面を這って動き、蛙を一飲みにせんと大口を開ける。僅かに確認できた口内には牙がなく、丸呑み特化といった見た目だった
後手、巨蛙は蛇を捕らえようと幾たびも舌を伸ばす。が蛇の動きは線に見えて『点』が如く捉え辛いものだった
蛇が大口で蛙を一飲みしようとしたのを跳ぶ事で回避するも着地点には蛇の尻尾があり、蛙が着地と同時に締め上げられた
勝負は決した。かに思えるも巨蛙には【あのスキル】がある。締め上げる程に『分泌』される体液が巨蛇の拘束を溶かし殺す事で無効化した───蛙は溶かしたそれを丸呑みしていき、気がつけば蛇の死体はなくなっていた
「…」
それを見終えた上で『石弾』を落下させた。『ブチ』と嫌な音を立てれば全身に満たされる『満足感』を得た【844】
◆【違和感】
しかし、何だろう。巨蛙のレベルは60と『以前』見た個体と比べかなり低いものばかりだった。安全と言えば安全ながらレベルを上げる点に視点を置くのであればあまり喜ばしいものではなかった
「ん?」
その理由は目の前を悠々と歩く存在感のある黒色の獅子が問題だと分かった
「虎丸さん、お久しぶりです」
『ノルではないか』
虎丸さんが山の様に『巨蛙』を積み上げていた。そのどれもが爪によるひと掻きで絶命させていた───なんと言うか『やけ食い』の様相が見て取れた
「ここで何を?」
『何、バシェルと別れ、気がつけばここに
いつか別れるものとは覚悟していたが
いざその時となると…我は弱いな』
「…バシェルさんは森番に戻られたんですかね?」
『うむ、グレイフォレストの森番として
再びかの森の住人として受け入れられた
しかし、我は共には居れんかった』
「そうでしたか」
取り敢えず『荒れた』毛並みや萎れた花の手入れを始めた。急ぐ必要はあるものの落ちぶれた友人を放っておく意味はなし、気掛かりがひとつでも少ない方がいい、と納得させ僕は急ぐ足取りを緩めた
◆【手で鬣を整え、水と太陽光を与える】
『この様なことをしても特に返せるものなぞ…』
【849】鬣の感触は猛々しい見た目とは裏腹にとても優しい手触りをしていた。乾燥させたばかりの毛布の様に軽く、柔らかい上に手に馴染む不思議な感触に少し心を落ち着けるだけの時間があった
「別に、僕がやりたいからしてるだけです」
『そうか…そうか』
さて、花の調子が元に戻ったのでゾンビの居る『6層』へと降るべく装備を整え、麻袋を背に抱える
『ノル。もう行くのか』
「はい、ここよりもっと下層へ
虎丸さんもたまには
本物の陽の光浴びてくださいね」
『…あぁ』
道中魔物がやたらと少なかったのは虎丸さんが相当してくれていたお陰だろうか、それなら『そのお礼』も兼ねてだ
◆【6層へと降った】




