『ルナ・ヒーラー』〈共通の友人〉
◆◇◆◇◆
下層の酒場に入り、その人───『ローラさんの伝手』できてくれたであろう人物と目が合った時、苦笑いが出た
「こちらが友人のルナ・ヒーラー───」
「…」
「こちらが依頼主のノル・スタルジアさんです」
当てが駄々被りしてしまった
◆【取り敢えずお酒を飲みながら】
「…ルナ?」
別に隠す意味もないよな
「あの私は…これを飲んだらすぐに…」
「え?」
「何をおっしゃいますか聖女様?
酔いなんて僕がどうにかするので
今日は飲みましょうよ、ね?」
逃すとでも思うか。聞きたいことはないが、言いたいことは山とあるんだよ。こっちは
「…昨日今日で【解呪】について聞かれるとは
なんてことを考えてはいましたが、まさか
貴方がその相手とは思いませんでした」
「ルナ、もしかして知り合いなんですか?」
穏やかな笑みを浮かべているものの、目は泳ぎ、持っているビールの入った木組みのジョッキが震えているルナ・ヒーラー───何をそんなに深刻そうにしているのか。心当たりがある様子だ
「昨日ぶりですね」
「昨日あったばかりだ」
◆【来てくれた理由】
さて、今日再び教会に赴こうかとしていた矢先にこうなったことは非常に喜ばしいことだ。食事の注文をしつつ、ルナさんに向き直った時───ローラさんが口を開いた
「ルナ。一言あるんじゃない?」
「?」
「ルナったら、ギルドで倒れていた所を
助けてくれた人が会いたいって言ったら
喜んで受けてくれたんですよ?」
「っ!ローラ、余計なことは。それに
あの時助けてくれたのは女性の職員だったでは
ないか。それをよりにもよって利用するなんて」
「あら?言ってなかったかしら…
ジェンナちゃんは取り次いでくれた子で
もうひとり、休憩室に
運んでくれた人がいたのよ?」
「… … …それがノル殿と?」
◆【状況のすり合わせ】
あの時のことをざっくりと話し合った───ユニコーン騒動により多数の重軽傷者が出た
僕が覚えたての【治癒】を使い『気絶』した後、公爵の依頼でやってきた『ルナさん』が現場を引き継いで現場は一時的に落ち着いた
その後、紆余曲折ありギルドの廊下で『気絶』しそうになっていた所を僕が休憩室へと運び『ジェンナさん』に報告、ジェンナさんはルナさんの友人であり、同僚でもあった『ローラさん』へと連鎖したとのことだった
「意識が混濁していたとはいえ
本当に申し訳ない…」
「感謝して欲しくて助けたわけではないので」
一先ず、腹ごなしとした。昼を食べたのでそれ程入らないので届いた鳥の串焼きは『ローラさん』と『ルナさん』で食べて貰った───伝手を使ってくれたし、応答してくれたことに対してのささやかなお礼だ
◆【雑談を続ける】
「不思議ね」
不意にローラさんがお酒から口を離し、そう呟いた───紅潮した頬、酒が入ったからだろうか焦点がやや合わない視線と歪んだ呂律でそう呟いた
「昔馴染みと今馴染みが知らぬ間に
知り合いになって、一緒にお酒が飲める
これって不思議、じゃない?」
にへらと笑ったローラさんのなんとも言えない崩れた表情が普段の『キリッと』した態度からは想像がつかず、思わず笑ってしまう【724】
「そうだな、なんとも不思議だ」
「そうですね」
【734】友達と飲むお酒ってこんな感じなのだろうか
◆【酒が進み】
なんてことを考えていた───
「ノルさんのすけこまし」
「急に何ですか」
───2時間くらいでローラさんが『デロンデロン』になっていた。そこから、机にジョッキを叩きつけての一言がこれだった
「ジェンナちゃんの、時も、そうですが
困ってる人見かけたら、すぐ手を差し伸べて
それが終わったらほっぽりっぱなし…って」
「困ってるなら人として
助けるのは当たり前では?」
「そこです!」
「…」
酔っ払っている姿って何でここまで面白いんだろ───糸の絡まった操り人形みたいな不規則で不気味な動き方をしているのに笑えてくる【739】
「少し不気味なんですよ…」
◆【吐露】
「不気味…ですか」
「ジェンナちゃんって、胸はそこまで
お尻もですが、可愛いんですよ?
受付嬢でしたし?」
「えぇ、まぁ…」
「手を出さなかったんですよね?」
「出しませんよ」
「迫られたのに?」
「…ッ」
急なことで咳き込み、鼻に入り込んでしまった
「他の冒険者なら『ご褒美』として
受け取りますよ」
「ローラさん、誰に聞いて…」
「ノル殿ぉ〜?」
ローラさんを問い詰めようとすると、ルナさんが肩を組んできた。その声色は低く、何処か怒りを感じるものだった
「ルナさん…?」
「可愛い顔しているなぁ〜」
がこっちもこっちで、存外に出来上がっていた
◆【暴露】
「ローラが紹介したい人がいると言った時は
何か浮ついた話かと思ったが依頼の話
かと思えば恩人の話とあってなぁ〜」
「…」
かれこれ、肩を組まれて数分。『この話』が繰り返されている───最初こそ笑っていたものの、少しばかり諄いなと思い【浄化】を使った
急に『スン』となるルナさんはかなり面白かった【744】
「…浄化を使ったなノル殿」
「はい」
さて、これで話の続きができるな
「【解じ…」
「!?」
ジョッキを放り出し、ルナさんの手を掴み上げた───この人は一体何をしているんだ
「何してるんですか…」
酔いの『鼓動』が全く別の『鼓動』になった───呼吸が早くなり、喉がなる。あまりに不用心な行動に緊張が走った
そんな様子を見て謎に微笑んだルナさんが云った
「ノル殿、心配には及びません。『酔い』の解呪は
魔力で支払われますので」
「…」
そうだったのか───いやだとしても心臓に悪い。『解呪』で死にかけた人のする行動じゃないので2つの意味で酔いが覚めた
「だとしてもやめて下さい」
「やはり、ノル殿は優しいな」
「…さいですか」
何か一本取られた気分になった。ローラさんが爆睡をかましている中
◆【聖女ルナとの時間ができた】




