『ルナ・ヒーラー』〈ハーフエルフの聖女〉
◆◇◆◇◆
雲がやや掛かる空模様を前に教会の扉を押し開き中へと入った。静かで真っ暗な室内に入る。蝋燭の火が落とされた大聖堂の中は青みがかっていた
ひんやりとした空気が身体を通り抜けた
◆【大聖堂の中】
普段は暖かみを帯びた陽光が差し込み、ステンドグラスが床に美しい模様を投影するが今日という天候に限っては月明かりすら入ることはないだろう───鼻を通った雨の匂い、少ししたら降り出すようだ
「ごめん下さい」
縦尺、人3人分。横尺5人程度の両開き───大聖堂の大扉。出入り口から頭だけを入れて誰にいうでもなく、強いて言うならば『教会関係者』の誰かしらに聴こえればなと呼んでみた
生憎と返事は返ってこなかった
しかし、教会というのは『誰でも迎え入れる』という、常に開け放たれた施設だ。別に入っても問題ないものの、やはり気が引けてしまう
明日改めて訪れるべきだろうか
◆【呻き声】
「!?」
大聖堂のよく響く構造により、中に居るであろう誰かの『苦しそうな声』が聞こえて来た。かなり近い場所からだ───【霊感】によるものだろうか
「うぅ…」
しかし【霊感】と呼ぶには何処か『音』と言った感じだった───『そんな人』達からの訴えというのは『念話』に近い性質を帯びるものだ
「おわっ!」
声の出所を見回していたら床で倒れ込んだ人影が目に入った。大聖堂に並べられている長椅子に半身を預けてぐったりしていた
◆【鑑定眼】
名前:ルナ・ヒーラー
年齢:27
種族:ハーフエルフ
レベル:35
職業:聖女 冒険者
スキル:【魔法銃術B】【エナジーショット】
【ヒールショット】【失神癖】【解呪】
状態:『気絶』
◆【移動を優先させる】
「良かった」
状態は『気絶』だった。ことをせく状態───『瀕死』や『〜病』などではなかったので一先ず抱え上げ、長椅子に横たわらせ、起きるまで待つことにした。探し人がこんなに早く見つかるとは思わなかったので余裕ができてしまった
麻袋を枕代わりに置いて、辺りの散策を始めた
「…」
教会関係の物品と言えどそのどれもが『普通』だった。インテリアのひとつひとつに『神性』とかついてるものとばかり思っていたもののそんなことはなく拍子抜けと言ったところだ
『洗礼杯』の中身も『井戸水』とやはり【スキル】が重要になるのは言うまでもない様子だ
「…?」
洗礼杯の縁に何やら白いものが付着していた。それは『白い結晶』で石のような触感をしていた。硬度は高いがかなり脆かった
「…何で」
「ヨミール草を使っていないせいです」
「…ッ!」
◆【起きた聖女】
「聖女様…」
「こちら、ありがとうございます」
「どうも」
この声って───
麻袋を受け取った時、ステンドグラス越しに月明かりと街明かりが差し込んでくると『ハーフエルフ聖女のルナ』の姿見がはっきりと目視できた
「貴方は」
「君は」
そこに居たのはギルドで『聞いた声』、『廊下で蹲り頭を抱えていた人』のモノだった
「お久しぶりです。聖女ルナ」
「こちらもです。ノル・スタルジア」




