『マリア・F・アルバート』〈久方の休息〉
◆◇◆◇◆
大事を取ってマリアさんは自宅へと戻ることになった。それというのもマリアさんは『虚弱』ということで学校側に届け出をしているので、専門の治療を受けられる家への帰宅が学校側からも推奨、了承されている。とのこと
◆【保健室へ】
移動中に寝息を立て始めたマリアさんに合わせ、ゆっくり、起こさないように歩きへと移行した───『重過労』は休息を十分に取れていない人がよく掛かる『状態異常』だ。眠れたのであれば『幸運』だ
「…」
化粧で隠されているけど、クマが酷い状態だった。間近で見てわかる───ややコケた頬、窪んだ眼窩、皺れた唇、なんとも痛々しい状態だ
「ノルど…」
「アマネさん、少し声を絞って下さい
休まれてますので」
僕は声を張り上げようとするアマネさんを諌めて、歩き続ける。流石に根本的な治療はできないだろう───保健室に着いたからといって事態は好転しないなら今、この状態は『重過労』を緩和できるいい状況だ
「マリアが寝たん、ですか…」
「…その口ぶりからして、マリアさんは
最近休めてない。そうですね?」
「はい」
『十六の死印』のせいか、それとも『痛み』か───はたまた、その両方なのかも知れない。どうにかしてこれを取り除けないだろうか
「薬物療法は…」
「マリア自身が拒否をしております
『頭痛薬』や『睡眠薬』はヨミール草を
多く使用します。それよりも領内の『回復薬』の
錬成に使うようにと…それで」
「…」
なんて人だ。身を削ることを当然とするなんて
「アマネさん、マリアさんの十六の死印は
いつからあったんですか?」
「十六の死印は生まれつき、持っていました」
アマネさんは保健室の扉を開けると中へと入った
「アルバート公爵の付き人
アマネ・フィアナです」
「聞いております。どうぞ、こちらへ」
保健室の先生に案内され、ベッドへと向かい、下ろそうとする
「っ!」
「迎えの者が来るので…ノル殿?」
「…」
離れてくれない。服の鎖骨辺りの首周りを鷲掴みにされた。無理矢理離せば離れなくはないものの───僕の目の前にいる人は同年代ながら『師匠』と『アリス』が重なって見えた
「このまま待ちますね」
「それは!ノル殿は大丈夫ですか?」
「マリアさんの休息が優先です」
『虚勢』───演技でぼかされているものの【この眼】で『それ』がつくり出す『負荷』を知りえた、引き離す選択肢はなくなった




