【体術】【C】【ー】
◆◇◆◇◆
地面を強く蹴るそれだけのこと───『瞬退』そのひとつに含まれる『防御』と『攻め』の両刃
簡単に見える故にそれの持つ奥深さ、表面上の強みと弱みを軽視してしまうことは言うまでもない
◆【組み手】
木剣を構えて互いに打ち込む、受けは禁止───ひたすらに『瞬退』のみを練習する。エルナ先生とマリアさんのを見て尚掴見切れない歯痒さばかりが募る
「…」
何か、決定的に足りないんだよな。こんなことよりマリアさんと話をしたいのに
「よそ見か!エセ貴───」
「…」
「───族??速???」
振りかぶり、振り抜くまでに剣に振り回されている。レベルが上がれば確かに全体の動きが明らかに変わる。振る剣の重みや空を切る音が変わる
だからと言って力任せに振れば良いものでもない───体内での力の相殺が起こることなんてそれこそ『論外』だ
そうか。何というか、これ、演劇に思えるんだ───攻撃する側、守る側で分けられて、どうにも身が入らない
それにやりたいことが糞詰まりを起こしているせいかな?地に足がついている気がしないんだよな、
「…」
◆【先生が手を叩いた】
皆が呼び集められて次の話が上がった
「それじゃ、実践と行こうか」
その一言に皆が騒めき始める。30分程度で身につくものなのだろうか
「汝、痛みを覚えて強くなれ」
無茶苦茶だな。エルナ先生が木剣を構えた
◆【先生に呼ばれ、剣を躱す課題】
「3回以内に瞬退を成功できたら
ご褒美をあげよう」
「それって?」
「成功したやつの上に乗ってやる」
エルナ先生が課題と条件付きの成功報酬を提示してきた。これに1年の男性陣が喜びを見せて、女性陣もまた喜びを見せていた───人気だな。エルナ先生は
「シャルフ・ラグデン、行くよ?」
生徒の名前が呼ばれた。さて、僕はこの時間に
「おぇ!!」
破裂音と生じた風により驚き振り返るとラグデンさんが腹を押さえて丸まっていた。対するエルナ先生は明らかに振り抜いた木剣を掲げていた
えぇ、何?あの容赦のない痕跡───痛みは痛みでも嘔吐する程の威力とか聞いてないのですがそれは、真剣だったら死んでる
「あっ、ごめーん。ちょっと強すぎた?
加減わかんないや」
サディスト。いや、ただ手加減が、ど下手くそな可能性もあるな。しかし、3回と待たずに全員が一撃一殺で『伸される未来』が見えるのは何故だろうか
「今治すから。【ヒール】」
回復魔法でも【中位】に位置する『回復魔法』だ。傭兵稼業で身につけた処世術の可能性も───いや、ないなあの屈託のない笑みがそれを物語っている
「もう一回立って〜?さぁ」
◆【レノア】
Sランクに差し掛かり最も成果を上げたのはレノアさんだった
「ッグ」
「惜しい…5回」
しかし、それでも褒美には足らなかった───それも明らかに動きが違った。エルナ先生は恐らく相手によって調整をしている。初撃が最も軽いのだろう。それとは対照的に2発目は要警戒だった
「このクソ教師…」
「良いねぇ、その調子〜」
◆【僕の番になった】
これの何処が『良かった』ことなのやら───初回から死屍累々だわ
「それじゃあ、身体あったまったかな?
爆発しそうじゃん?
ノル・スタルジア」
これ、『LP』のことか。どうでも良いか
「よろしくお願いします」
◆【鑑定眼】
名前:エルナ・ストーングス
年齢:24
種族:人間
レベル:232
職業:英雄学校『教師』
スキル:【体力上昇B】【体術A】【片手剣術A】
【一穿A】【土壁C】【ヒールA】
状態:『健康』
◆【咄嗟に】
めちゃくちゃ強いな。けど、やっぱり『継戦力』に優れている構成だ。29人を相手にしても上がらない息で察しはついていたが【体力上昇】があるからかな?
「んじゃーいく、っよ!」
え?マジ!?───失敗した。間髪入れない攻撃に咄嗟に【あれ】を使ってしまった
「ノル?アンタ何やってんの」
木剣が振り抜かれたが、当たっていなかった。しかし『瞬退』は失敗していた
『コン』と甲高い音がする。急いで『指向性』を先生から外した上で僕は【魔弾】を使ってしまった───吹き飛ばされた剣先が僕の後方で地面にぶつかり、滑り飛んでいった
「すみません、何というか癖で」
『集中』し過ぎた。この人、圧が強いんだよな。威力と違って、ガモンさんというより、バシェルさんに近いものを感じる───殺意ではないものの、『威圧』がある
◆【図らずも2発目】
「1発目、残念」
「…」
最も軽い一撃目を『武器破壊』に使ってしまった。馬鹿すぎる。本当にやらかした───ここから後2発。速度は上がり続ける
「えっとぉ、合図は省かないで頂けると」
「次は気をつけるよー」
エルナ先生が剣を構え、流れるように
「始めるよ」
また対面する。振り回された木剣を前に『瞬退』を使ったものの───エルナ先生のそれはあからさまにさっきより速かった
「…ッぐ」
いってぇ…短剣をブッ刺された記憶が甦って来る。エルナ先生の動作が速過ぎる
「2発目、残念」
「…」
「いいね、その目」
【治癒】を使い腹の痛みを取り除く、加減が本当に上手いな───腹立つ。褒美とか以前にこの女に負けるのが普通に腹立つ
◆【体術】
「…まぁ良いか」
再び合図なしの攻撃が来た。しかし、分かっていたとて、見えているからとして、普通に退いただけじゃ叩き切られるのが目に見えている
「このタイミングだと確実に…」
だから『ズル』をした。実践だろう?なら死なないことを第一優先にするんなら───流水が如く舞って見せてやる
「はぁ!?」
「〜」
足が限界だが、成功した
「絶対当たると思ったのに」
それでも手加減ありきとはいえ、一本取れたことにえも言われぬ満足感が肺から漏れた【1279】直後。歓声が上がった
「よっしゃ!ざまぁみろ!」
「いやったぁ!!」
「よくやったぞ!ノル」
流石にボッコボコにされたせいか、1年全員が凄く喜んでいる───よっぽど萎えていたのだろう
エルナ先生が仕切りに木剣を眺めていた
「先生?」
「全力で振るったのに…」
おい、今なんて言った?




