『英雄学校』〈顔見知りが集う場所〉
◆◇◆◇◆
麻袋を肩に掛け、見送りに来てくれた母に挨拶をする。
「いってらっしゃい2人とも」
「いってきます」
「無理はしないでね」
◆【手を振り返し】
「お母さん、元気だったね」
「うん」
【鑑定眼】でさえ、母を蝕む病を特定できなかった。【大賢者】を使おうとも考えたものの『LP』の対価が如何様になるのかが不明な点から辞めておいた
使えるとなった途端『対価』で頭打ちになるとは、どこまで行っても使いづらいことこの上ない【スキル】だ
『教育学校』に向かうアリスを見送り、『英雄学校』へと向かう
◆【大理石のアーチを潜り】
「階級章とクラスバッヂ確認しました
ようこそ、英雄学校へ」
受付でグリンゴブリン以外の素材を返却してもらった。虹色バッタは『緑色』で固まっていた。黒ずんだ見た目から扱いがそれほど良くなかったことが窺えるがこの際、供養しようと思った
麻袋に入れ、中へと向かう
◆【1年教室】
身分は関係ないと言いつつ『初日』は階級章をつけて来させるあたり、教育方針が『軸ブレ』を起こしているのはお察しだ
「…」
視線から『エセ貴族がS?』『何でCなんだ』と言いたげなのが窺える。はぁ、教室に入って早々に陰鬱とした雰囲気に晒される事になるとは思わなかった。帰りたい───てか、ギルドで金を稼ぎたい
しかし、何も悪いことばかりではない。階級章を中心とした派閥が生まれる可能性を目視できるというのはとても有難いことだ
その派閥が肌に合わなければ距離を置くもよし、好ましければ『密かに』恩を売るもよし───学校というのはいわば『小さな社会』だ。今更毛嫌いする気も湧かない。が
「おはようございます。シャリーさん」
「…ノル?おはよう」
◆【明らかに避けられている】
馬鹿馬鹿しい。貴族間で凝り固まることは違うだろ───何故教育機関でそんな初歩を守れない無知蒙昧を晒す輩を目の当たりにしなければならないのか
何故飯が食える。何故武具が買える。何故資金が貯まる───それら全てが『民』あってのことだろうが、最もこの空間においては『身分の差はないもの』とされている
であれば仲良くすることは全てにおいて『利益』となるだろうに
「サイフォン家の次男、コウフだ
よろしく」
そんな中でも『金』はそのバッヂに相応しい立ち回りをしていた。『頂点』の象徴はやはり伊達ではなかった
「スタルジア家の三男、ノルです
よろしくお願いします」
「長男の引き立てかい?この学舎に来たのは」
「ある方々からの推薦です。もちろん
家の名に輝きを持たせる意味もあります」
「弁えてる者同士仲良くしよう。何しろ
君はあの伯爵家に気に入られてるじゃないか」
1年で伯爵となれば『レノアさん』か
「どうやって取り入ったのか、お聞かせ願いたい」
向上心の塊だな
「伯爵様のご厚意に預かっているだけですよ」
「…」
こいつシャリーさんに一切視線を送らないな。一度接触したか、或いは『差別』か。ひとつ試してみるか
「時にヨミール草について
何か分かりましたか子爵殿」
「!?」
あらら、手を離されてしまった。早計が過ぎたかな───まぁ、少なくとも友人と呼べる人を優先することに間違っているとは微塵も思わないけどね
「ありがとう、ノル」
「いえいえ、失礼を働いたのは
あちらが先だったので」
これ見よがしに手を"はたく"───触った感じレベルは20以下、タコの感じから得物は『槍』が主流かな。油断しなければ先ず負けない相手だ
「辞めなさいノル。狂犬じゃあるまいし
睨みつけるのは無作法よ」
「レノアさん」
「レノア…」
「それに頭を下げなさい。公爵様よ」
そんなこんなをしているとレノアさんが部屋に入ってきた。と同時に頭を下げる様に言われたのでそのまま頭を下げる
直後部屋の中の圧がました───この感じはレベルの差が開き過ぎている時に感じる圧だ。それに英雄学校にいる『公爵』となれば、彼の方しかいないだろう
◆【真っ先に声をかけられる】
「おはようございます、ノルさん
この間はどうもありがとうございました」
「こちらこそ、先日はありがとうございます」
「…長い学生生活です
これからよろしくお願いします」
◆【鑑定眼】
名前:マリア・フィアナ・アルバート
年齢:16
種族:人間
レベル:169
職業:英雄学校『Aランク』
スキル:【十六の死印】【片手剣術B】
【溜突B】【ヒールA】【浄化B】
【苦痛耐性S】【演技S】
【疼痛耐性A】【急性痛耐性A】
【鈍痛耐性A】【安静痛耐性A】
【夜間痛耐性A】【日中痛耐性A】
【深部痛耐性A】【内臓痛耐性A】… … …
状態:『過労』
◆【スキル詳細】
【十六の死印】
〈生命力を16で費やす〉
◆【『16』→『17』】
【??の死印】【50】
〈???〉
『意味のない行為です』
◆【そう簡単な話ではなかった】
これが通ればよかったものの、ことはそれほど単純ではなかった。言うなれば『霧を掴もうとする』───無駄な行為が空を切った
【〜死印】は既になされた対価を払った『結果』であり、【これ】そのものは伝える『方法』として用いられてるに過ぎないものと理解した
「マリア、こちらへ」
「…お願い、いたしますね」
「はい」
僕の横を通り過ぎる。マリアさんとアマネさんの顔を見ることができなかった
何も、できなかった。全くの無力、これまでの時間に無駄があったんじゃないかと錯覚する程の『無力』───できること、手の届く範囲、考え得るだけのことをして結局、振り出しから進めてすらいなかった
◆【絶望に打ちひしがれる】
本気で解決できるとは思っていなかった。何かの足掛かりになればとは思った。いざ用意した手段がこれ程までに何もなさなかったことに視線を落とさずにはいられなかった
「ちょっと!ノル?」
「…はい?」
「こ、公爵様と顔見知りって!どういうこと!」
「あぁ、たまたまギルドで…」
…そうだ。ギルド、ギルドだ。何でこんなことに気がつかなかったんだ
◆【ひとつ妙案が浮かんだ】




