『オリヴィア・サーヴァント』〈探し人〉
◆◇◆◇◆
「…」
下り階段を見つけた。この隠し迷宮は当たり前ながら下へと続く構造物の様だ───迷宮は空へと続くものや、そもそも空に浮かんでいるものもあるらしいが『お伽話』の領域のため、冗談半分に読んでいたものの、人工ならざる構造物を前に冗談に思えなくなってきた
「天空城…どう浮かんでいるんだろ」
◆【見てみたいなと思った】
二層にやってきた。肌に感じる魔力の変質と肌を刺す感覚が満ちていた。一層とは構造的に酷似しているものの中身は別の物だった
『…勇敢なる者よ、良くぞ来てくれました…
二層で待っています…そこで…ス…』
一層でも聞こえていた謎の声は二層についても健在だった
◆【木製のドア並ぶ空間】
一層に似た構造が終わりを迎えた。代わりに現れたのは木製のドアらしきものが松明同様に等間隔で並ぶ異様な空間───ドア付きの小部屋がいくつも並ぶ空間が現れた
先まで感じていた肌感覚がより一層の『違和感』を覚え始めたと同時にだ
ドアを少し開けて中を確認すると魔物が大量に跋扈している様子が確認できた。好き好んで中に入ろうとは思えなかった
◆【『謎の声』の変化】
『…ち…こっ…ち…』
扉の空間に来ていくつかの扉の中を確認した辺りで『女性の声』の内容が明らかに誘導を目的としたものに変化した
罠だろうか
◆【誘導されるままに扉を開けた】
構造的な差異はない。違いと言えば魔物がおらず、これ見よがしな『美人』が鎖に繋がれている光景がそこにあるだけだ
明らかに罠くさい
『…おいで、あたま、にさわ…って』
◆【いや、無理があるべ】
残念ながら手記には何の記載もなかった。無視をするべきだろうか
『え?…れ、も…もし』
水色の髪の女性。大人の魅力と肌の露出が際どい服を着ている───迷宮にこんな服を着ている人がいるわけがない
加えて、彼女を縛っている四方の壁から伸びている鎖は普通の鎖ではない存在感を放っていた。素材か存在そのものかは不明ながら部屋に入る気にはなれなかった
「…」
『…はぁ、えっと勇敢なぁ〜』
◆【露骨にガッカリしている】
魔物ではない裏が取れたので僕は慎重に部屋に入ることにした。特性上、魔物は人間の真似ができない───この言動は明らかに人のものだ
部屋の中、中心にて吊るされている女性を前にすると目のやり場に困った
◆【本当に布一枚というべき服】
体のラインがはっきり出ている。本当に何故この様な服装をしているのか理解に苦しむ
『…あ…たまに』
彼女は罠でなくとも『鎖』は罠の雰囲気を醸し出している。触れるのはやめておいた方がいいことは明白だった
僕は鎖を避けて彼女の申し出通りに頭に触れた
◆【突如流れてくる情報の雪崩】
【大賢者】と似た感覚を受けた。漠然とした知識の奔流、彼女が思い浮かべていること、伝えたいことが頭の中へと流れ込んでくる
『私はオリヴィア・サーヴァント
超超超一流の冒険者、この大陸で大活躍していた
絶世の美女!!』
「…」
『表の迷宮を攻略して、この裏迷宮に入って
華麗に二層まで攻略したまではよかったけど
この部屋の魔物を倒して発動した罠に捕えられて
驚くべきことに丸200年はこの状態なのだよ』
「…」
堪らず目頭を押さえた
◆【喋ると残念美人】
「事情は…分かりました」
『いやさ?この死鎖呪が曲者でさぁ』
なんか肉体の衰弱具合と『声』の差が乖離している。鎖に囚われている肉体は飲まず食わずで痩せこけて青白いために『衰弱の果て』と言った様子だ
一方声はハツラツとしており、聞いてもいないことを次から次に滝や雪崩が如く叩きつけてくる。精神と肉体が分離を起こしていると言っても良いほどだ
◆【目的の人物を見つけたが】
『呪いの一種で【解呪】とかギミックを解かないと
解放は基本、無理なんだよ』
「そう、なんですか」
オリヴィア・サーヴァントさんを見つけたは良いもののどうしたものかと考えあぐねる。父が目指していた人を前にして、呪いが行く手を阻んできた
どうにかして【解呪】について調べなければならなくなった
『ところで君、見込みあるじゃん』
◆【助け舟】
「急に何ですか」
『ちょうどいいじゃんと思ってね』
ちょうど良いとは何のことだろうか
「何か頼みごとでもある感じですか?」
『頼み事っちゃ、頼み事だね
悪いんだけど。おでこ、くっつけてくれる?』
◆【いきなり何言ってんのこの人】
「…」
『もしも〜し、無視は良くないなぁ。無視は』
「いや、それをする理由は?」
『オリヴィアのスキルを
ノル君にあげようと思って』
さらっととんでもないことを言ったことに心底驚いた。『スキルの譲渡』───そんなことが果たして可能なのか
『まぁ、騙されたと思ってさぁ〜ね?』
そもそも痩せて、青白いと言っても『美人』であることには変わりがない。本人からの了承を経ているからと言って触れるには抵抗がある
それでも【スキル】を『あげる』という言葉は非常に魅力的な申し出だった
「こうですかね」
◆【おでこをくっつけた】
額を合わせる。すると額を通して身体の中に熱い何かが注がれる漠然とした感覚を受けた。それはやがて強く、はっきりとした感覚へと変わった
「…これは」
先の黄金スライムの時とは違った感覚。身体に何か不快感はないものの『異物』が入ってきた感覚に身体の至るところに触れてみるも特に変わった様子はなかった
『おめでとー、オリヴィアのスキルは
【譲渡】によってノル君に受け継がれましたー
一部ダメなのもあったけど強いのは全部いけた!
これで安心して死ねる。サヨナラ〜』
「っ!待って下さい!そんなダメです!」
『はい死にません。ジョークだよ』
「…」
◆【ボコボコにしてやろうかな】




