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【陽光】【E】【500】

◆◇◆◇◆


「なんか俺、めちゃくちゃ疲れた」


「ははは、流石にバラバラになっても

 噛みつこうとしてきたのにはドン引きでしたね」


「こんなところもう、懲り懲りだよ」


◆【5層への階段を上がり】


「虎丸!」


『バシェル!我が友よ!』


 虎丸さんが大きく吼えバシェルさんに近寄り、頭を擦り付け、舌で何度も舐め、しまいには上からのし掛かった


「虎丸っ、お前ってやつは!

 300年も待ちやがって!!」


 バシェルさんが泣きながら虎丸さんを抱きしめた


『友との約束を守り待っていた

 それだけではないか』


「そうだな…そう、だな。ほんとうに

 馬鹿だった。俺が本当に馬鹿だった」


 声色が弱々しくなりながらも言葉を絞り出す姿は友への懺悔を己の不甲斐なさで有耶無耶にしない様にする───ケジメに思えた


◆【ひとしきり泣いて】


『バシェルよ。聞いてくれ』


 再会を祝福する雰囲気───それを最初に切って話し始めたのは喉を鳴らしていた虎丸さんからだった


「なんだ、改まって」


『この迷宮の攻略は、些か危険が過ぎる』


 虎丸さんがバシェルさんに『諦める』様にいった


『1層の攻略に300年、このままでは

 故郷の恋人を置いていくことになるぞ』


「…」


 虎丸さんはどこまでもバシェルさんを思って言葉を続けた───バシェルさんにとっての『それ』はどう映るのだろうか


『我が友よ。愛とやらが物に代わるなら

 我とて止めぬ。しかし、そうではないのだろう』


「だが、それではお前はどうするんだ…」


 雲行きが怪しくなってきた───


『何。かの森には我が不要とされたまでよ』


「…」


「すみません、バシェルさん

 話が見えてこないんですが」


 ───感動の再会だけでは終わらなかった


◆【迫害】


「エルフの間で『肌の色』で対立が生まれたんだ

 エルフのみならず、他種族の体色にさえ

 その思想を…」


「…」


 エルフの里では『300年前』に『肌の色は魂の色』という『宗教的思想』が生まれたらしい───それは『スノーエルフ』や『ダークエルフ』、『バンブーエルフ』などを『別種』として扱う『思想』だった


 それは異根種───根本に『別種』の始祖を持つ種族のこと。体色が『黒』の虎丸さんにも『その思想』の迫害を受けていた


「なんですか、その馬鹿馬鹿しい思想は!」


「それで300年も離れている今

 この思想がどうなっているか分からない

 それで故郷に戻れっていうのは、言うのは…」


『我が友よ。お別れだ』


◆【バシェルの故郷に虎丸さんは入れない】


「なんで、なんでそんなこと言うんだよ!」


『命は有限だ。定命の者であれば

 子孫を残すことが役目だ。我もそれくらいは

 承知しておる』


「300年、300年を無駄に待たせて

 お前を待たせて、なんでお前は」


『その様なことは気にするな

 我は好きで待っていた』


 虎丸さんはどこまでも『穏やか』だった。バシェルさんの涙を舐め取り、胸に頭を埋めて慰めた───バシェルさんは何も言えなかった


「…」


『乗るといい。故郷まで送ろう

 ノル。お前も乗るといい』


「いえ、僕は2層に用があるので

 2人で戻って下さい。道中はお気をつけて」


『その心遣いに感謝する』


 積もる話はあるだろうし、僕は居ない方が…


◆【花が萎れている】


「虎丸さん?花が」


『すまないがノル、水を持っていたら

 かけてもらえると助かる』


「水玉でもいい?」


 頷いてもらえたので手で器を作り【水玉】を溜め、虎丸さんの頭にかける


『…悪くない』


◆【1123】


 最近『栽培』に関する関心が大きく、無駄にならないと判断して、とある【スキル】を【創作】した───それは


『これは!陽の光ではないか!?』


「おぉ、こんな感じで出るんだ」


 拳に込めた『魔力』を上空へ放る。それは小さな『光源』となって辺りを照らし始めた───『ヨミール草』や家庭菜園を考えたりするとやはり無駄にはならない筈だ


◆【1173】


 迷宮の中で『太陽光』を浴びて虎丸さんの花が元気になった


『この恩は必ず返すぞ。ノル』


「はい、ではお元気で」


「ノル君、何から何までありがとう」


 2人を見送った


◆【静かになった5層】


「はぁ…」


 なんと言うか。凄く疲れたな


 何かバシェルさんに返し忘れてる様な?いや、そもそも何も借りてないし、何だろう?この引っ掛かる感じは───荷物を改める


「あ!短剣返し忘れた」


 腹にぶち込まれた短剣を抜いてそのままだった


◆【鑑定眼】


 産地:グレイフォレストの鍛治場

 区分:91754

 種類:短剣

ランク:A

所有者:バシェル・クライラー

スキル:なし


◆【陽光を手に入れた】


【陽光】

〈陽の光を発する光源を浮遊させる〉


 陽の光を展開する魔法。陽の光を受けたと言う『結果』を『齎す』魔法───ストレス解消や気分を好転する効果、睡眠の質が上がる


『再現』と言うより【治癒】などの『回復分野』に近い『術式』だ


「当たっていても別に日焼けはしない」

◆【大賢者より】


 よく『〜の再現』は危険だと言われることがある


 例えば『ブラックホール』などは良い例だ。本来の性能を『再現』した『魔法』があれば確かに危険だ。たった数秒、発動したら術者や惑星そのものが死ぬことだろう


 しかし、それらを『術式』に起こす上で『不便』なことをするわけがない───『便利』を追求した果ての『魔法』であり、『再現』を追求したものではない


 故に『結果』を踏まえて存在する『魔法』において『有害性』は考慮しないものとする。よしんば『有害性』がある場合『何を再現したか』が問題になるだろう


◆

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