『バシェル・クライナー』〈虎丸の盟友〉
◆◇◆◇◆
「バシェルさんで間違いないですよね
虎丸さんの…ご友人の?」
「え、ああ、そうだけど君は?」
「僕はノル・スタルジアと言います」
諸々の事情を伝える。5層のこと6層でのことを話した途端に泣き崩れた
「バシェルさん?」
「虎丸…あいつ。馬鹿だろ…そんな」
拳を握りしめ、顔を俯かせる。涙を見せない様に啜り泣いていた。ひとしきり泣いた後、手の甲で拭うとバシェルさんは立ち上がった
「案内してくれ、謝らなくては」
「はい」
◆【談話しながら5層へ】
「やたら強いゾンビがいて、それに噛まれた後
必死に逃げたんだけど…そこからは…」
「そこで『ああ』なってたんですね」
「うん…いや、まさか300年も立ってたなんて
森番の仕事どうすんだよ…」
「まだ解任されてないみたいですよ」
「マジで?」
話してみると何とも不思議なことに『よく聞くエルフ像』とは全く違っていた───落ち着きというより、寡黙な想像をしていたものの、バシェルさんは気さくというか、感情を表に出している人だった
「そう言えば虎丸ってバシェルさんが
つけたんですよね」
「あぁ…ちょっとな」
「虎丸さん本人は気に入ってますよ」
「そこが問題なんだよな。短い付き合いになると
思って適当につけてしまったのを
あいつめちゃくちゃ気に入ってさぁ…」
◆【少し昔話】
故郷の恋人に告白するべくここにくる以前の話。俺は森番として、森に侵入した魔物を掃討するべく仲間と共に弓を引いていた
当時の俺は浮かれていた。森番は名誉ある仕事だった。やり甲斐十分の仕事、張り切った後、仲間とハグれた。それでも魔物を倒して進んでいた矢先、魔物に組み付かれ殺されると思った瞬間。森の内から影が颯爽と現れた
魔物を一口で噛み砕き、爪の一振りで数多を屠った『黒獅子』そいつに俺は「ありがとう」と言ったら
「そんなことを言われたのは初めてだ」
って言った。それから『友人』として交流が始まった
◆【それから50年】
ん〜長命種の感覚、時間の流れ
「好きな人ができて、告白しようと決心したんだ」
「それでこの迷宮に?」
「あぁ、そんな俺に虎丸は…ついて」
男泣きを始めたバシェルさん
「でも、罠があるから虎丸さんを
5層で待たせたんですよね?それは…」
「違うんだよ。ノル君、違うんだ」
「え?」
「俺は…5層まで何もしなかったんだ
虎丸が全て対処してくれて、申し訳なくて
情けなくて、それで6層はひとりで攻略しようと
飛び出した挙句に」
「…」
バシェルさんが泣き崩れていると、通路の先からゾンビがやってきた。感じる魔力の圧からこれが『強いゾンビ』だと分かった
「バシェルさん、やりましょう」
「…あぁ、今度こそは」
◆【鑑定眼】
名前:ゾンビ
レベル:150
スキル:【感染B】【ゲートキーパー】【不死】
状態:『不浄』
◆【スキル詳細】
【不死】
〈物理的損傷にて死を迎えることがなくなる〉
◆【VSゲートキーパー:ゾンビ】
そりゃ相性が最悪なわけだ
「あいつ【不死】っていう。死なない【スキル】を
持ってますね」
「はぁ?それじゃあ、勝ち目ないじゃん…」
「…」
「ノル君、この腕輪を虎丸に渡してくれるかな?」
「え?構いませんが…ちょっと!」
バシェルさんが走り出し、目にも止まらぬ『3連射』でゾンビを吹き飛ばした
「ここは俺が殿を務めるよ」
バシェルさんは『犠牲』になるつもりらしい
「あの時の雪辱!晴らさせてもらう!その隙に」
◆【飛んでくる両腕】
「な!?」
【魔弾】【石弾】で貫き『相殺』する
「バシェルさん、それはあり得ないです」
「ノル君!?」
貴方を死に物狂いで治した意味がなくなるでしょうが
「虎丸さんに顔向けできないからって
それはないですよ」
「ッグ」
それにしても【不死】の活用の仕方が自由すぎるだろ、あいつ───肉体を切り離して攻撃できる範囲を無理矢理に伸ばしてきたぞ
「ヴウウ…」
でも『不浄』なら【治癒】と【浄化】で倒せる
「有効打は僕が持ってます」
「だからって…君が」
「なので、2人で倒しましょう」
「…っそうか、そうだな!」
◆【1623】




