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『虎丸』〈友の帰還を待つ黒獅子〉

◆◇◆◇◆


 黒獅子を追っていると『6層』に降る階段の前で座り込んで動かなくなった───『デッドリーパー』が階層間の階段の前を守護していたあの姿と重なる。これを倒さなければならないとなれば相当に苦戦を強いられることになる


◆【居なくならない】


 座り込んで小1時間、居なくなる気配がない。一度撤退して、作戦を立てなければならないか、或いは強行突破を試みる必要もありそうだ


「…」


 しかし、【ゲートキーパー】を有していた場合何が起こるのかが問題だ。もし『移動阻害』だった場合、黒獅子と逃げられない壁で挟まれた状況に陥いるという最悪の盤面が予想されるそうなった時、間違いなく死ぬことになるだろう


◆【!?】


 不意に何かに強く引っ張られた


「っえ!?」


『人の声?』


 巨蛙が僕の腹あたりに舌を伸ばしていた。辛うじて届いたそれは服に張りつき、凄まじい威力で引き込みを始めていた


◆【鑑定眼】


 名前:巨蛙

レベル:144

スキル:【毒液・酸】【夜目】【気配感知】


◆【スキル詳細】


【毒液・酸】

〈分泌液が『分解』を獲得する〉


【夜目】

〈僅かな反射光を目で捉えることができる〉


【気配感知B】

〈中範囲の気配を直感的に感じ取る〉


◆【ピンポイント進化】


「アリかよ!そんなの」


【紫電】で『舌』を『感電』させ、本体に『痺れ』を与えた。巨蛙の動きが阻害され、即捕食という事故は免れた───免れたものの舌に直接触れることは【毒液】が邪魔をしていた


「またっ!」


 舌が接着しているせいで再び引き込まれ始める。服に対しては『分解』が働かないのはどうしてだ


「それより、も!」


【紫電】による『局所集中』───レベルの魔力上限は全身を包む魔力の『総量』とも置き換えられる。もしそれを『一点』に集められればレベル差を辛うじて貫通して『状態異常』を差し込める。のだが魔力の消費が激しいのが欠点だ


「…魔、力切れが」


 身体に倦怠感が現れ始めた。これは非常に不味いことだ。恐らく黒獅子にも僕の存在がバレた筈だ。巨蛙に手こずっていたら『漁夫の利』どころか『まな板の上の魚』だ


「【石…」


『邪魔だ。魔物風情が…』


 あら、一撃。さっきまでの死闘はなんだったのか───圧倒的なまでの力の差に最早、興奮を覚える【803】


◆【つぶれた蛙】


『人間、我の声が聞こえるか?』


「き、聞こえてます」


 眼前に、あの黒獅子が来ていた。間近で見ると目力凄


『この時を待ち侘びていたぞ』


◆【逃げ切れそうもないので観念】


『この階層に来るということは

 かなりの実力者と見た』


「5層は逃げてばっかりですけど」


『少なくとも2度

 5層に着て撤退を選択できている

 それは立派な実力の証拠だ』


「ど、どうも」


 なんだろう。この奇妙な時間は───【813】


◆【6層前での会談】


『我が名は虎丸。友人バシェルより賜った

 誇り高き名だ』


「僕はノル。ノル・スタルジアと申します。え〜

 ノスト・スタルジア。フォー・スタルジアから

 受けた名です」


 名乗り口上ってかなり古い喋り方をされるな


「随分と古風な喋り方をされますね」


『そうか』


「つかぬことをお聞きしますが

 虎丸さんはどうしてここに?」


『虎丸で構わん、敬語もいらん』


「これは僕の癖みたいな物なので…

 あ、でも気軽にノルと呼び捨てにして貰って

 構いませんので」


『そうか』


 なんか、接しづらいことこの上ないな。頑固オヤジと話してるみたいだ


◆【ぽつりぽつりと話し始める虎丸】


『この下の階層には罠が無数に仕掛けられていると

 話していた友人が1人で解除に向かってしまった

 彼奴はここで待てとも言っていた』


「それは何故でしょうか」


 下層に続く階段を眺めながら思うものの───その真意は『本人』にしか分からないことがあるだろう。友の傷つく姿を見たくなかったのかも知れない


「どれくらい待っているんですか?」


『少なくとも300年、我は友を待っている』


「その方は長命種ですか。ドワーフの方ですか?

 それともエルフの方ですか?」


『エルフだな。本人はエンシェントエルフと

 我に言っていた』


『古代(エンシェント)エルフ』───ハーフエルフの始祖にあたる種族。人と妖精の混血の中でも不定不滅の血を色濃く受けており、1000年生き続ける人もいる。魔力があれば『不死』と言われる種族だ


「待ち侘びた。とは?」


『ここより下層にて、我が友を探して貰いたい

 返せるものは何もないが…


「構いませんよ。報酬も要りません」


『その口ぶり、貴族の類か』


「お嫌いですか?」


『少なくとも貴殿の心持ちに感謝を…』


◆【非正規依頼『友の捜索』を受注した】


「所でなんですけど」


『聞きたいことがあれば答えよう』


「頭のその花は何ですか?」


『これは我の身体の一部である

 我が滅びようともこの花さえあれば

 我は再び大地を踏みしめることができる』


「そっちが本体何ですか?」


『どうなのだろうな』


 謎が謎を呼んだ

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