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『5層の魔境』〈巨獣の食物連鎖〉

◆◇◆◇◆


 今、唐突に『無限の迷宮』に来ている───唐突な閃きなんてあったものじゃない。どれだけ頑張っても時間ばかりが過ぎて無駄に感じたので『無限の迷宮』の攻略を進めるべくやってきた次第だ


◆【到着】


 周囲を確認し、安全策で『隠密』をしながら進んでいると、石畳を何か軽いもので叩く音がし始めた。『巨大顎蟻』が通路の先で何かを集団で食んでは右往左往していた


◆【お食事中】


「…」


 5層に入ってからどれだけ経っただろうか。階層全体の構造、魔物の構成の把握が完了した───今回の階層は巨大な何かが通路を存在していることが顕著だった


 巨大な蟻も十分に恐ろしい存在ながら『巨鰐』『巨蛇』『巨蛙』などが見受けられた


 そのどれもが『レベル50』を越している容赦のない構成であり、それぞれが共食いをする形で通路を占領しているのが『5層』だ


 中でも1番ヤバいのが『黒獅子』だ。体格もさることながら『鑑定阻害』───鑑定系の【スキル】の効果を『無効』にする能力を持っているのか『こいつ』の情報だけは終ぞ分からなかった


【スキル】らしい『攻撃』は一切せず、それでいて一挙手一投足が『必殺』の力を発揮している。体格はどの魔物よりも大きく、空間にポツンと影が落ちた様な体色と唯一色のある部位は『眼』だけ、その色も火の赤や夕焼けの温かいものではなく寒色寄りのものだ


 普通の『獅子』とは全くの別物であるのは言うべくもない───頭頂部に『花』が咲いていることも含めて別物だ。とは言ってもこの階層の中でも危険度は低いと見て良かった


◆【巨蛙VS黒獅子】


 それというのもレベル144という、一般人が対峙すればまず逃げることに徹しなければいけない巨蛙が気ままに弾んでいた時、黒獅子が横切りと対峙することになった


 黒獅子の方はこれに対し『無反応』だった。一瞥の後、巨蛙を避ける様にして進路を変えたのである───しかし、巨蛙は違った


 巨蛙は自らの武器である『伸びる舌』を使って黒獅子に対して攻撃を仕掛けた。舌の速さは衝撃波を出す程の初速によって弾き出され、黒獅子の後脚を捉えた


 先ず人が直撃すればタダでは済まない威力だったものの、件の黒獅子に反応はなく───あろうことか平然と歩き続け、巨蛙を引き摺り始めた


 石畳に引き摺られる巨蛙は始めこそ、跳んで追っていたものの力尽きヘタれるとされるがままになり、これに黒獅子が気がつくまで引き摺られることになった───黒獅子は鬱陶しいと感じたのか巨蛙を踏み潰すと「邪魔」と言わんばかりに後ろ足を仕切りに振り回して、これを振り解いた


◆【このことから】


 黒獅子はレベル144を軽々と屠れる『強力』な生物ながら、その本質は『穏やか』なものと見て間違いなかった。巨蛙と相対した際にも自分から攻撃を仕掛けなかったところを見るに『思考』を持つ『存在』なのだろうと思う


 だからと言って接触しようとは微塵も思わないが、何はともあれ一定の安全性は『黒獅子』の後を追っておけば大丈夫だった───レベルは200を越してるか【スキル】による自力の底上げが考えられる。仮に倒すにしても情報がなさ過ぎるので当分は『隠密』でやり過ごすことになるだろう


「この体勢…疲れるな」


 通路に両手、両足をベタ付けし、天井を背にして移動する。通路が暗いことが幸いして、魔物は目の前か左右のいずれかにしか警戒を示さないので五層はこれでやり過ごすことにした

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