『エマ・ブライトネス』〈頼れる友人〉
◆◇◆◇◆
入学まで残り『3日』───『図書塔』。あそこに向かうのはいつぶりになるだろうか
袂から上を見上げれば遥か彼方の天まで続いているのではないかと錯覚する程の素晴らしく緩やかな円錐形───街の何処からでも見える『柱の様な構造物』の外周は走っても数十分を要するほど広大だ
これら全て『書物』を保管するための『合理的構造』だ。加えて施設内での飲食行為、攻撃的な行為、暴力行為、読書以外の娯楽行為、原本の持ち出し───『本を傷つけ、読解不可にする恐れのある行為』は禁止されている。本を守るために必要なことだ
◆【図書塔へ】
「おっはよーノル!」
最近、ブライトネスさんと朝早くに顔合わせをすることがある。そういう時は───
「おはようございます。ブライトネスさん」
「図書塔まで歩かない?」
「是非」
───近況報告という名の雑談をして各々の職場に向かう様になっている
◆【近況報告】
「受付嬢ランキングねぇ…」
ブライトネスさんの表情が『不快感』を露わにしていた。最近の自分の行動の説明には必要不可欠な根本にあるものの存在を話したからだ
「すみません。あまり
気分のいい話ではなかったですね」
「…え?あ!うん。そうだね
あまり気分のいい話じゃ、ないね」
ギルドが上手く機能しているのは『報酬』と『ご褒美』による相乗効果だ。片方がなくなれば少なからず『やる気』をなくす人は出てくるだろう
それでも僕はジェンナさんの様に止むに止まれず身体を差し出さなければ解雇される状況がどうしても飲み込めずにいる───違法性がないのにだ
◆【レベル】
「最近急激に強くなったよね?
もしかして、大賢者を使える様になった?」
「いえ、まだ使えるか分からないんですよね
強く…そうですね。ギルドの方々や
師匠の助けもあって順調に伸びていってます」
頑張ってはいるもののやはり『LP』の獲得が厳しいため、それ程『急激に』とは個人的には思えていない───全てが行き当たりばったりな感じがする
「そうなんだ〜」
「まだまだ、強くならないと」
『無限の迷宮』に挑むにはまだ力足らずだ
「んんん///真面目だなぁノルは…」
◆【底の見えない麻袋】
「え?それ結構なお宝じゃん?
見た目普通なのに」
「持ってみますか?」
「うん」
麻袋を手渡し、ブライトネスさんが中を覗き込んだ。真っ暗な空間が広がっている───手を突っ込んだブライトネスさんは中をひとしきり弄り『ジャック・ランタンの触腕』を取り出し、それを戻した
「なんで木の枝を冷やしてるの?」
「さっきのは───」
『ジャック・ランタン』について話した
「だから微妙に魔力を感じたのかぁ〜」
◆【ヨミール草について】
「そうだ、ブライトネスさん
ヨミール草についての
学術書の写しを頼めるかな?」
「え?いいけど、何に使うの?」
「全体の量が減ってるみたいなので
どうにかしたいな、と」
「分かった。それにしてもヨミール草かぁ
懐かしいね。ジッポの森にいったんだよね」
「え?」
「一緒に行って、そこで…」
「そこで?」
「その感じ、忘れてるっぽいね〜」
「すみません…」
「ふふ、良いもん。思い出すまで待つから」
既視感の正体は『ブライトネスさんだった』───小さい頃に彼女とジッポの森に行ったことがある様だった。しかし、霧の掛かった視界の様に僕はそれを明確に思い出せなかった
◆【十六の死印】
「ブライトネスさん
死印について知ってますか?」
「えー、ないそれ〜?」
「では、それについても調べていただけますか?」
「どうしよっかなぁ〜最近付き合い悪いし…」
「頼みます。深刻なんです」
「…分かった。ただし、それが落ち着いたら
とことん付き合って貰うからね?
覚悟しろよぉ〜?」
「勿論です」
「なら、諸々任せたまえ」
ブライトネスさんが胸を張って僕に約束してくれた。やっぱり優しい人だ
◆【893】




