『ノル・スタルジア』〈藁しべ長者の藁〉
◆◇◆◇◆
「ジェンナさん」
「誤解されることが嫌なので云いますが
こんなことするのは経験なくて
初めてなんですが───」
官能的な『特典』を聞いた手前、これから『ジェンナさん』が僕に『取引』を持ち掛ける上で差し出そうとしている『対価』の目星はついてしまう
「───頑張り、ます」
「ジェンナさん」
声が震えている。休憩室───もとい『仮眠室』らしい場所。ベッドが最奥に設けられている。そこに真っ直ぐ向かった
「ぁ、あのっ!」
「ジェンナさん、受付嬢のランキングって
いつまでですか?」
「え…月末締めです」
「学校の素材は当てにできないか」
「それはどういう…っ」
◆【毛布をジェンナさん目掛け放った】
「何を…」
振り返ると服が散乱していた。案の定だった。心臓がうるさいくらい鼓動を刻んでくる
「専属受付嬢の話は正直受けても構いません」
「じゃあ、服を───」
「ですが条件が4つあります」
「よ、4つもですか」
僕では『ジェンナさん』の成績を他の冒険者を抑えて貢献度上位に押し上げられる保証はない
「安心してください。ただの質問です
必須項目はひとつ。これに答えていただければ
専属受付嬢に僕を入れてください」
「…良いんですか」
「対価に見合うだけの働きはするつもりですが
確実な安心を保証できません」
「…承知の、上です」
明らかにそんな雰囲気ではないのが分かる
◆【4つの質問】
立ち位置を入れ替え、ジェンナさんをベッドに腰掛けさせる。急いで確認したいこと
「ジェンナさん。本当にこんなことを続けてでも
受付嬢を続けたいですか?」
「それは…」
「僕は、冒険者になる前は司書をしていました」
「え?」
やりたいことに『対価』を払う。それに納得しているなら僕が止めるべくもない。しかし、辞められない理由によって、これを『半強制的』に強いられている場合、何か抜本的な対策を取らないことには絶対と言っていい───ジェンナさんは後悔をする
「続けられるなら続けたかった職場です
しかし、止むに止まれず、その籍を去りました」
「…っ」
「ジェンナさん、この仕事は
本当に身体を許してでも続けたいものですか?」
「ち、違う。そんなんじゃない」
「分かりました」
なら、やるべきことは決まった
「ふたつ目の質問ですが、期日のことを考えた時
月末まで働き続けることになりますが
よろしいですか?」
「もとよりそのつもりです」
さて、残りが重要だ
「3つ目、この専属受付嬢は月末をもって解消と
しますが異論ありませんね?」
「…分かりました。その後は
自分でどうにかしていきます」
「ありがとうございます」
これが最も重要だ
「では、最後の質問です」
「…はい」
「髪の手入れってどうしてますか?」
「え?髪の手入れですか」
師匠の髪を触っていた時、やっぱり毛先のまとまりがアリスやレノアさんと比べて悪かった様に見えた。ただ拭き取るだけでは足りないことが分かったので頼まれた以上は全力で挑まなければ───とは言っても知識不足で何から手をつければいいかわからないので助言を受けようと考えた
「そうなんですよ。し…り合いが腕を悪くして
髪の手入れを僕に頼んできたもので」
「えっと…」
「あ〜答えたくなければ無理にとは云いません
すみません、変なこと聞いて」
やっぱり、他の人に聞くべきか。レノアさんは…僕に会ってくれるだろうか
「必須の質問には答えていただけているので
この部屋から出次第登録を進めて下さい」
「いえ、それならおすすめの所があるので
お教えしますが…」
「助かります」
さて、目下の悩みは解決したし、手始めにデッドリーパーの頭蓋骨を『換金』して貰えば、最下位からの脱出は容易だろう
しかし、狙うは上位だ。Dランクの依頼で『近場』の敵が居ればいいのだが。負ける気は毛頭ないものの"うかうか"しては勝てるものも勝てなくなるだろう
◆【それでは】
ジェンナさんに挨拶をして部屋を出る。もう限界───膝から崩れる様にして座り込んだ
「心臓、うるさ」
あぁ〜もう、はいはい。そうですよ。こちとら煩悩まみれの16超えたばっかの年頃男子ですよ。カッコつけたからって興奮しない訳ないだろ!
◆【1923】
ウゼェ〜。【LP変換】頼むから自重しろ。分かってるから見せつけんな…




