『十六の死印について』〈呪いのスキル〉
◆◇◆◇◆
五層に向かう階段の終わりは見えず、何故か安定して下れていることが『どこか恐ろしさ』を僕に返して来た───広い空間。それはこの先にいる存在が『巨大なモノ』であるかも知れないという『恐怖』だった
◆【5層へ】
長い長い階段を降りて早々に撤退を余儀なくされた。今までの魔物は少なくとも補えるだけの【何か】があった
『レベル』の差を埋められるだけの【力】があった。しかし、今回ばかりは『体格』『レベル』に【スキル】も充実した相手が五層に蔓延っている状況だった───よしんば1匹倒せたとしても『数』の暴力で蹂躙される可能性があったので安全策を取っての撤退をした
◆【鑑定眼】
名前:巨大顎蟻
レベル:45
スキル:【俊敏性上昇】【巨大】【強顎】
◆【スキル詳細】
【俊敏性上昇】
〈反応の速さに補正を受ける〉
【巨大】
〈体格を大きくする〉
『体格が大きい』
〈筋力・耐力・頑丈に補正を受けている状態〉
〈俊敏・敏捷・燃費に劣悪を受けている状態〉
【強顎】
〈顎を使う行動に補正を受ける〉
◆【2層まで撤退】
『おかえりノル君〜』
「ただいま戻りました」
師匠のいる近くで剣の手入れを始める。砥石による『研ぎ』は必要ないものの、少し汚れが目立つ様になっていた。布で拭き取り、油で擦り、軽く熱しながら剣全体を拭き上げた
『手入れ慣れしてるね』
「見様見真似ですけどね」
『私も手入れして〜』
「…」
剣を鞘に戻す
『なんか言えヨォ〜』
「師匠の冗談って本当に笑えないなぁ」
荷物入れをひっくり返す。デッドリーパーの頭蓋骨ってどこに持っていくべきだろうか───袋の中身を掃除して、荷物を収めて、改めて口を縛った
『冗談じゃないよ。大真面目』
はぁ、この人は本当に何なんだ
「あのですね。妄りに
そんな頼み事をするのは───」
『いや、よく考えてみ?200年ぞ?200年
これ白粉じゃなくて埃だからね?
流石にこれは屈辱的なんだよ〜』
「…っ、確かに」
失念していた。本人にとっての『不快感』は他人には分からないものだ。師匠に至っては200年もこれというのは流石に想像がつかない
今でこそ慣れたが、母に頼まれた時もそうだった───本人が助けを求める。それがどれだけの『負担』を得ているのか。親の弱った姿というのは幼い時に見るのはただただ恐ろしく、そして悲しかった故にやりたくなかった
それでも頼るしかないという状況。誰が最も『苦しい』のか、そんなものは態々口にするまでもない。しかし、身内でもない人の体を拭くというのは流石に気が引けるな
「…」
『せめて、髪だけでも…だめ?』
髪だけなら───まぁ、いいか
「…分かりました」
『チョロ…』
「おい」
ホンマ、こいつ
『慣れたら全身を〜ってイッタ!?ノル君
全力で叩いたね!』
「懲りてください」
◆【やるか馬鹿】
点検と手入れを終え、荷物の中から柔らかい布を取り出し、師匠の髪を撫で拭う。布の色が変わる"かわり"に髪の色が鮮やかなものになった
死鎖呪の影響で『元気』がないながらも浅い川面を見ている様な、静かな美しさがあった
『とか何とか言いつつ、ありがとね』
「別に…」
櫛とか、買うべきだろうか
「そう言えば師匠、十六の死印について
何か知りませんか」
『ん〜【死印】か。あまり詳しくはないけど』
埃を払いつつ、師匠の口から【件のスキル】についての情報が得られた
◆【十六の死印】
【〜の死印】
〈?〉
呪いのスキル。これがある対象は『〜』の条件を満たすことによって、死亡する。年齢の場合、その年齢に近づく度に肉体は衰弱していき、その年の最後に死亡するとされている
必ずしも死ぬ訳ではないものの、今日に至るまでこれを意図的に逃がれたものはいない
◆【不明点】
「ですか」
布の色が変わらなくなる頃には話が終わった。銀髪混じりの師匠の髪は見違えるほど綺麗になった───【1693】。しかし、知れば知るほどに存在理由が分からない【スキル】だ。何なんだろう
『オリヴィアも詳しいことは分かんない
家系が呪われていたりすると
その子孫にも発現したりするみたいだけどね』
「…」
『普通のスキルじゃないってことは確かだね』
やはり、【スキル】を直接【鑑定】する必要がありそうだ───それでも確かに輪郭を捉えられたであろう進展は大きなものだった
◆【1703】




