【ー】【ー】【ー】
◆◇◆◇◆
「…」
「…」
ギルドに帰って来て早々、凄い人が居た。公爵様だ───風を受け止め、撫でる様に靡く金髪。エメラルドの様に透き通った碧眼の『偶像』が居た
『急いで頭を下げる』───一瞬だけ観ることになった御姿だけで心臓がうるさく鼓動を始める。美人、美女では言い表せられない、圧倒的な『美』がそこにあった
◆【1270】
光を纏っているが如き存在───纏っている雰囲気違い、圧倒的な存在感により空気が重く感じる
「ごきげんよう、スタルジア家のノルさん
オーディンBランク冒険者
ガモン・チョコチフさん」
マジか。何で僕の名前を知ってるんだ?いや、知ってて当然か、ここの公爵様だ。貴族を束ねるお方が知らないわけがない。てか声綺麗
◆【できる限り】
それと同時に感じる『重圧』───生きた心地がしない。不敬を働けば首が飛びかねない状況だ。常に近衛兵の人達から剣先を突きつけられている気分だ
「ごきげんさま、アルバート公爵様」
「ご、ごきげん、さま」
無難にいく他ない。何でこうも心臓や胃に悪い時間が度々訪れるんだよ───ガモンさんに至っては噛み噛みだ
「頭をお上げください。ノルさん。ガモンさん
お邪魔しているのは"わたくし"なのですから
どうか気を楽に」
できるわけがないでしょう───というわけでもない。ここはオーディンギルド会館で、我々はそこに所属するものである。流石にこれ以上に畏まれば『それこそ』不敬で、あまりに不誠実になる
貴族における立ち居振る舞い───相手からの敬意と計らいだ。受けなければいけない
「ありがとうございます」
「…」
頭を上げて、姿勢を正す
◆【優雅な一礼】
ここは舞踏会かしら、最早『芸術品』だ。これ程までに終わって欲しくないお辞儀を見たことがなかった
「マリア・フィアナ・アルバート
気軽にマリアとお呼び下さい」
「恐れながら公爵。それは───」
「あら、同じ英雄学校の生徒ですもの
名前呼び、対等がかの学舎での
初めの教えではないですか」
「そうではありますが」
「以後お見知り置きを」
今一度礼をすると近寄ってきて───手を握られた。とても柔らかくて。そして
◆【冷たかった】
大凡人のしていい体温ではなかった
「…」
触れられたことで生じた高揚感を置き去りにする程に、その手は冷たかった。この冷たさには覚えがあった───師匠だ
「…あ、ぁの」
何でこんなにも平然としていられるのか。分からない。未だ不明ながら『師匠』でさえ、『苦声』を吐露する程なのに『この人』は───
「ノル坊…どうした固まったりして…」
───ガモンさんの声で我に返る
「…っ!いえ、こちらこそ
よろしくお願いします」
付き人の人の視線が怖いな。それでも確認しなければならないことがある。マリアさんが話している間に【鑑定眼】でそれを観た
◆【鑑定眼】
名前:マリア・フィアナ・アルバート
年齢:16
種族:人間
レベル:160
職業:英雄学校『Aランク』
スキル:【片手剣術B】【溜突B】【ヒールA】
【浄化B】【苦痛耐性S】【演技S】
【疼痛耐性A】【急性痛耐性A】
【鈍痛耐性A】【安静痛耐性A】
【夜間痛耐性A】【日中痛耐性A】
【深部痛耐性A】【内臓痛耐性A】… … …
◆【永遠と続く痛みに対する耐性】
何だよ。これ
「ノルさん?」
「はい」
「わたくし、ノルさんの第二試験を
拝見しておりましたの、本当に偶然に
そしたら───」
マリアさんが笑った
「石弾は人によって速度が変わることはありますが
大きさが変わったところを見たのは
わたくし、初めてです」
「僕は…ただ、使い続けただけですので」
「才能溢れる方ですね。いつかお声を掛けようと
思っていたら、こうして偶然。神のお導きかも
しれませんね」
「こうえい、です」
「入学式が楽しみですね
今日は所用があるので失礼します
ごきげんよう」
貴方は一体。どの様な心持ちでその言葉を口にしているのですか。マリア・フィアナ・アルバート様───離れた手、振り向き様、僅かに視認できた表情の強張りが今もなお、彼女が痛みに苦しんでいることを知らせてくる
「…」
僕はただ、一礼をし、見送ることしかできなかった。これはますます、入学に本腰を入れなければならなくなった
◆【十六の死印】
【ー】
〈?〉
諦め切れず、マリアさんを見送り続け、最後の最後に視認できた【スキル】の名前だ
【創作】に通しても『返答』はなく、『Oランク』の【スキル】として【創作】が試みられたものの『Oランク』───自らが望む【自由な形】を指す『ランク』の様で全く詳細が掴めなかった
「第二試験を見ていたってことは【鑑定眼】で
見られることを前提に接触して来た可能性が?」




