『シャリー・ノルドア』〈不思議な平民〉
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翌日。第二試験への通過者の発表があるとのことで英雄学校の敷居を跨いだ先で『伯爵家令嬢』が腕を組み不服そうに僕に視線を向けていた
「昨日はよくも私をコケにしてくれましたね」
「え?」
睨みつけ、口を『へ』の字に曲げた。そんな立ち姿で『伯爵家令嬢』は僕のことを見ていた
◆【ご立腹な伯爵】
大理石で造られたアーチを少し過ぎた英雄学校の正門近くでブルードン伯爵令嬢に呼び止められた。理由は分からないものの冷たく鋭い視線が注がれる
「チームの意味を教えたいわ、全く…」
「私めが何か、やってしまいましたか」
「周囲が怠ける中でちゃんと働いたのは
褒めてあげるわ」
「ありがとう、ございます?」
呼び止められ、叱責を受ける内『点数』に関しての不服はないことが分かった。てっきり『有償枠』を使用しなかったことに腹を立てているとばかり考えていたので、尚更何に対して怒りを露わにしているのか分からなくなってしまった
「不躾ながら何故ブルードン様が
不服に感じているのか、私には分かりかねます」
「私の名前…どこで聞いたのかしら?」
しまった。『偽名を使っている伯爵家』の名前を呼んでしまった───『全能感』が抜けてからというもの、どこか『危うい感覚』が抜けずにいる。気をつける必要がある
しかし、口を衝いて出てしまった『伯爵家の名前』はどの様に弁明したものか
◆【全て話すことに】
これ以上『不敬』を重ねる前に謝罪することにした。知った事実は変わらず、それでいて知った経緯に関しては自分には非がないのは明らかだった
その部分を取り繕ったとして、新たな火種になるくらいならと話すことにした
「提出上限の警告の際
ブルードン様の名前を耳にしました」
「そちらが偽名、とか考えなかったわけ?」
「…実は」
不満を露わにする『伯爵家令嬢』に爆弾を投下することになるものの、これ以上の隠し事はボロが出そうなので『シャリー・ノルドア』という名前について説明した
◆【憤慨】
呆然とする『伯爵家令嬢』だったが、ことの陳腐さに気がついた
「…ッ!」
シャリー・ノルドアという名が『仲間のひとり』の実名であることを知って『伯爵家令嬢』は顔を真っ赤にして怒りを露わにした
「貴方…知ってて私を!」
「滅相もありません!」
伯爵の龍鱗に触れてしまったらしく、今にも斬り殺さんとする気迫で迫ってきた。人死が出ない様に努めないといけないのに
「某を庇うためにやったことです。レノア」
そんなこんなしていると、後ろから『シャリー・ノルドア』が僕と『伯爵家令嬢』との間に割って入ってきた
「平民の癖に失礼でなくて?」
「おや?失礼なのはお互い様でしょう
シャリー・ノルドア伯爵令嬢?」
「…っ!!」
悪戯に笑うシャリーさんと顔から火を吹くんじゃないかと真っ赤に憤慨する『伯爵家令嬢』の一触即発の場面に『もうどうしていいやら』分からずに居ると『伯爵家令嬢』は踵を返して会場に向けて歩き出した。助かった
「おや?許してくれるんですか?」
何故そこで火に油を注ぐんだ!案の定『伯爵家令嬢』が凄い形相で振り返った。がその物言いは『表情』とは裏腹に落ち着いたものだった
「いいこと!
点数が低かったら許さないんだから!」
「わぁ、ありがとうございます
シャリー・ノルドア様」
「私の名は!レノア・ブルードンです!!」
◆【生きた心地がしない】
目の前で怒れる伯爵家が会場へと向かう背中を呆然と見送ったものの、問題になるといけない故にシャリーさんに声を掛ける
「後で謝りに行きましょう」
「何、点数が出ればチャラなのでしょう?」
「形ある誠意というのは
後々でも役に立ちますので」
加えてアレは本当の意味での『許し』たり得るものなのかが不明だ。やはり謝ることに越したことはないと思う
「ノルは真面目ですね…」
「これが一番波風を立てない方法なので」
ましてや相手は『伯爵家』───上位貴族の機嫌を損ねたなら下位のものにどんな『とばっちり』を受けるのか想像もしたくないのが現実だ
「大丈夫ですよ。彼女は許してくれます」
「何を根拠に…」
「某の勘は当たるんですよ?」
『ニヤリ』と笑ったシャリーさんが会場に向けて歩き出した。前髪で隠れて尚『豊かな表情』をしていた
ふと、何故あんな綺麗な目を隠しているのか不思議でならないものの、先の『偽名』同様問題の火種になりかねない為、口を噤んだ
◆【口は災いの元と言うし】




