『ノル・スタルジア』〈普通の少年〉
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若干くすんだ色のベッドの上で目を覚ます。いつも通りの朝、窓から外を見て雲の流れや密度を確認して部屋の外へ向かう。今日は晴れ間が続きそうだと安心して身支度を始める
太陽が山を越えると同時に自室の廊下へと出る扉を開けて軋む床の音が増えていないかを確認して、自室のある2階から1階の『リビング』へと向かう
◆【キッチンへ】
今日は雨の心配をしなくていいので妹と母に温かい料理を作っておける。雨や雪など湿気が予想される日は保存の効きやすい料理になるため、視覚的に地味なものが増える
栄養素的には問題はないものの目で見て、鼻で感じて、口で味わってこその料理だと思う
時間がある時はそう努めている
◆【郵便物の回収】
そうこうしていると配達員が投函口に新聞といくつかの郵便物を入れて行く音が聞こえてくる。それを回収したら妹が階段を降りてくる。それか寝坊しない様に起こしに向かう
「おはようございます。お兄様」
「おはようアリス」
今日は時間通り起きた様でホッと胸を撫で下ろす。最近妹、アリスは僕が部屋に入ることを極端に嫌っているためだ。基本入ることはしないが、それでも遅刻は許容できないのでアリスが不機嫌になるのを覚悟で扉を何度も叩くハメになるのだ
◆【不穏な郵便物】
「ん?」
新聞に請求書、給与明細。そして今日はふたつ余分な物が混ざっていた。どちらも図書塔の蝋印が押された便箋だった
「なんだろう、新書の受け入れ通知かな?」
『図書塔の蝋印』は『図書塔』が発信する郵便物に対して施される蝋による封のこと。一目で図書塔からの郵便物であることを知らせる加工のことだ
その内容は『新刊出版に対して』や『新書受け入れ』、『要修繕蔵書の受け入れ』など───『図書塔』に所属するものに対して『図書塔』からの通知を行うことを主な内容とする
よほどの急ぎでもない限り、朝に目を通すのが吉である
「…どういうことだ。これ」
『解雇通知』だった。僕が所属していた図書塔に子爵家の新人が入るとのこと。問題なのは空席は元より存在していないことだった
そこで図書塔を統括する委員会が僕をクビにして、その空席に件の子爵家の方を据えるとの旨が綴られていた
◆【あまりのショックに驚き呆ける】
「わ、わぁ」
こんなことってあるんだなと思った。昨日まで図書塔のために働いていたというのに気がつけば無職になっているなんて管理していた本の物語の中だけだと思っていた。幸いなことに組織都合により特別手当が支給される様だった。まぁだからなんだって話なんだけど
「…」
そしてもう1通。僕はその内容を見て驚きから落胆に変わった。手付かずだった便箋の内容は『推薦状』だった
推薦状自体はとても助かるものだ。口添えというのは如何なるときでも味方として、推薦先に対して便宜を計ってくれるという証明書の様なものだ
なぜ落胆しているのか。その推薦先が他の図書塔に、ではなく悪名高い『英雄学校』という施設に対するものだったからだ
英雄学校───後代の英雄を育成することを目的とした学校である。と言えば聞こえはいいもののその評価は賛否両論となっているのだ
入るのに大金。続けるのに大金。出るのに大金と一度入れば骨の髄までしゃぶり尽くされない銭ゲバ学校ら入学者の実に半数が『かの学舎』を去ると言われている───その代わり卒業が叶ったならば『実績』となり『英雄学校』の強力な『口添え』を手に入れられるのだ
「アリス、僕。少しだけ外に出てる
学校に遅れない様にね」
「分かりました。お兄様」
◆【散歩に出掛ける】
雲のひとつでも掛かっているなら『情景描写』としては良さげながら生憎の『晴れ模様』だ。乖離も甚だしいことこの上ない状況だ
「僕悪いことしたかな…」
太陽の角度が絶妙なせいで光による目潰しを受ける。咄嗟に手を前に出し、視線を避け、光から目を背けた
現実から目を背ける様に




