『デッドリーパー』〈死そのものな魔物〉
◆◇◆◇◆
「落ち着いてきましたね」
「そうですね」
街から素材があらかた無くなると『受験者』は学園内で駄弁り始めていた
◆【素材を提出して】
学園を再び後にして街の外へと向かう。ふと見かけた素材の量からして市場に出回っている素材をそのまま学園内に押し込めたと見て間違いないだろう
ざっくばらんに集められ、積み重なったゴブリンの手首は中々にグロテスクな光景だった
中には珍しいものも並んでおり、市場とは別のルートで集めたことが窺い知れた
「殆ど動かないですね」
「点数より、交流を
大切にしているんじゃないかな」
見れば『銀』『金』のバッヂがその手の交流をしていた。耳を澄ませば聞こえてくるのは案の定『派閥間』の『牽制』や『情報共有』の類。騒々しさを逆に隠れ蓑とした会話術をしていた
しかし、機密性の高い情報はそれ程なかった。基本的なのが『世間話』だった。やれ『世継ぎが生まれた』やれ『あそこの商品は質が落ちた』だのと、『興味深い』こそあれ『重要性』はそれ程高くはなかった
◆【2・3度目の提出】
「休憩を挟みませんか?」
「そうですね。働き詰めでしたし」
陽が高くなった頃にシャリーさんと街へ出て、手頃な食事処に入って一服する。この時間帯になると『受験者』らしき人も同じ様に食事処に入っていくのが見えた
「それにしてもノルは、どこの流派ですか?」
「流派?」
「いや、側から見ていたら動きは洗練されていて
しかし、型に嵌まらない自由な刃捌きだったので」
「ん〜どこの流派も習ってないね
強いて言うなら父親からの影響かも」
「なるほど、一子相伝ですか」
「ごめん、気にしたことがないばっかりに」
「いえいえ、気にする者もそういないでしょう」
◆【街が慌ただしく】
「ん?」
「あれは」
人が担ぎ込まれているのが見えた。皆一様に力無く倒れ伏しており、生きているとは思えない様子をしていた
「悲しいですね。日常的なこととはいえ」
「そうですね…」
問題はそこではなかった。明らかに多過ぎる。それに
「似た様な傷に、似た様な死に様」
「不気味ですね」
◆【貴族としての性】
飲み物を飲み終え、席を立つ、問題の渦中に急いで向かわなければならないからだ
「ノル?どうしたんですか」
「シャリーさんは引き続き素材集めを
僕はアレの原因を突き止めに」
「何を言っているんですか
そんなの他の人に任せれば…」
「すみません、ですが放置するには
些か不気味が過ぎます」
人死にの起きている以上はギルドも動くだろう。そうなれば現場が踏み荒らされ、有耶無耶になってしまうかも知れない。最悪取り逃がしでもしようものなら被害はますます拡大する
◆【剣を腰に据え直し、食事処を後にする】
「ノル、同行します」
「シャリーさん、僕は正直
合否なんて気にしていないんです
受験したと言う実績だけが欲しい奴なんです」
ついてきたシャリーさんに振り返り言った
「すみません、頼ってくれたのに
こんな不純な動機で」
「なに、私もさして変わりません
地方で店をするには英雄学校を卒業していると
何かと都合がいいと聞いて受験してるだけです
失敗しても0がそのままなだけです」
「…ありがとうございます」
◆【記憶を思い出しながら街の外へと向かう】
大きな刃物による切創に眠る様な死に方。そして
「助けてくれぇ!」
予感的中、と言った様子で『件の魔物』がユムール川に佇んでいた───いや、浮かんでいた
「デッドリーパー」
「何ですか、そいつ」
「取り敢えず警戒を…っ!!」
「危ない!」
◆【間一髪で避ける】
シャリーさんに言われなければ『あれ』の持つ大鎌に当たっていた───接近して来たそれは『浮遊』しているためか、動作の音が全くと言って良いほど無音だ
『それ』が纏う『黒い布切れ』が風にはためく音と『大鎌』の一振りが風を切る音だけが辛うじて聞こえる程度だ
「読んだそれより、凶悪だな…」
『デッドリーパー』───死が蔓延する場所に現れ、死んだ周囲の魔物や生物の『魔力』を取り込み権限する魔物
その特性上、高レベルでの権限をするため『特定災害級魔物』とされている。街や国もこれを警戒する様にとしているものの、この時期は特に発生しやすいとされている───恐らく『正常性バイアス』による危機意識の欠如が原因と思われる
「どうしますか」
「避難優先、バッタ集めしてる人を
できるだけ離して」
◆【VSデッドリーパー】
「…」
【鑑定眼・偽】で『デッドリーパー』の情報を集める。【デッドリーパー】で【即死の一刈】のみを所持か
こんな危なそうな【スキル】を持ってるやつと直接やり合いたくはないな。そう考えながら距離をとりつつ気を伺う
意識していれば『視界に捉える』ことができ、動き自体はそれほど早くはない。が懐に入ったからと言って油断はできないのが事実だ
「本当に【スキル】一個か?」
『浮遊』『鎌術』を持っていないのが不思議だ。先程から攻撃に転じようと試みるものの『あの』の独特な形状を器用に使いこなしている───魔物の癖に
◆【『レベル』】【50】
【鑑定眼・欠】
〈人の名前とスキル、レベルを知れる〉
【50LP】
◆【510】
「99!?」
【編集】で鑑定眼に付け加えを行い、デッドリーパーのレベルを確認してみたところ、レベルが99だった。レベルによる強化のゴリ押しをしてきているのか───シンプルに厄介だ
「僕のは21か…」
【鑑定眼・欠】で自分のレベルを確認してみたところ『21』だった。正面切っての戦闘では勝ち目が皆無だ
◆【石弾】
鎌の刃に向けて、石弾を飛ばす。避ける素振りもない───知能は高くない様だ
「…」
距離をとりながら石弾による攻撃を重ねる。これは攻撃でもあり、防御でもある。物理的な干渉を受けると言うことは『大鎌』は特別なものではない可能性が高い───時間を掛けてでもこれを破壊しなければ被害が出る
「っ!?」
死体に足を取られ、転んでしまった。起き上がろうと手をついたが、背後に『アイツ』の気配が迫っているのを感じた。背中をなぞる冷や汗が気色悪かった
「クソ!」
【魔弾】による干渉で鎌の軌道を間一髪で逸らしえた
◆【窪んだ眼窩が見下ろしてきていた】
「どうしたもんかねぇ」
立ち上がり、回避するには最早体力も距離もない。やろうとしていた武器破壊も鎌が壊れる気配が全くない。刃こぼれさせるのが関の山、破壊までは叶う気がしなかった
「しかし【即死の一刈】か」
こう言う時に【大賢者】が使えたならいいが、使えたらなぁ〜
◆【攻撃にこだわるその頭蓋】
無い物ねだりは性に合わないので一か八か、試してみることにした
【創作】を使い『鎌術』に意識を向ける
◆【『下手』】
【鎌術・下手】
〈鎌系の扱いが下手になる〉
【50】
◆【410】
頭が勝手に揺れる感覚に『酔い』を受ける
「…ぅ」
あからさまに体調が崩れた。寝ているのがとてつもなく『重労働』と感じる程に疲労感がドッとやって来た
「…少し、不味いな」
再び鎌を振り上げられた。間に合うか
【付与】により【鎌術・下手】を
『デッドリーパー』へ
【100】の対価を要求された
◆【310】
薄れる意識と脱力感の狭間で『デッドリーパー』の鎌が振り上げたと同時に『すっぽ抜けた』───これは好奇だ
「…」
手を伸ばし、デッドリーパーの鎌を弾き飛ばす
「これで…ッグ」
◆【近接戦】
魔物の行動は『合理性の塊』だ『鎌』を手放し、遠方にいった今、優先順位から『武器の確保』がなくなったのか
「ったくさぁ」
【330】───邪魔な眠気が飛んだ反動で落ち続けていたLPが上がり、気分がそれだけ良くなった
依然として怠いものの、歪な気力が生まれていった
◆【340】
何度も振り下ろされる拳が鎧を阻むも、レベルのゴリ押しでめった打ちにされた結果、父の形見の鎧が砕けた。宙を舞う破片が目の前に入った時、動かなければならないと感じた
「っんのクソ!」
地面に根を下ろして久しい程の脱力感を振り払い、剣を鞘のまま振り抜く───黒い布越しに受けた衝撃により身体がバラバラとそこら中に散らばった
それでも尚、動き続ける骨達
「死んどけよ…」
◆【兜を脱げ落ちた】
「…はぁ、はぁ」
防具が壊れた今、倒し切らなければ勝ち目が潰える。しかし剣を杖代わりに姿勢を保つのがやっとで息が切れて仕方がなかった
風邪を引いたみたいに身体がいうことをきかず意識が何度も落ち掛ける
「ノル!」
その声に緊張が解け、意識が遠のいてしまう。言っておかなければ不味いのに
「シャリーさん、トドメを…」
剣から手を離し、デッドリーパーの頭蓋骨を指差した勢いで前に倒れ込む、もう限界だ
◆【そこで意識が途絶えた】




