『シャリー・ノルドア』〈覚り妖怪〉
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教会に入ると昨日対応してくれた聖職者とは別の人が対応してくれた。シャリーさんとは顔見知りの様で挨拶をした後、早々に教会の裏へと通された
虎丸さんは通路が狭いので待っておくとのことだった
◆【人心掌握に長けている】
「あの方は知り合いで?」
「うん、今朝会ってね」
前々から思ってたが、初めて会った時と『レノアさん』との交流の時もそうだったが、シャリーさんは何かと『距離感』が絶妙だ───あたかも長年友人として、寄り添ってくれている様な親しみを彼女から受けることがある
それはひとえに『踏み込み』が適切だからだろう───他者との距離の縮め方がとても上手いのだ
◆【静かな部屋の中】
程なくして人の足音が無数に聞こえてきた。『聖歌』や『祈祷』の時間───一般的な昼食前の恒例のそれが催されようとしていた
通路を進み、やがて聞こえてきた『説法』を流し聞きしつつ、教会の部屋にルナさんを寝かせた
「さてと、ノルありがとうね」
「構いませんよ。僕も同じ所に向かう
予定でしたので」
人探しに割く時間が短縮できたのは素直に嬉しい所だ。さて、ルナさんが起き上がるまで時間があるだろうし、少し待っておこう
◆【余所余所しいシャリー】
「ノル」
声を掛けられ、振り返ったそこで扉を背にシャリーさんは僕に声を掛けてきた。一室の中でシャリーさんだけが視界で動く唯一の存在になり初めて気がついた。着物の柄が少し───最初にあった時の着物の柄と比べ、暖色寄りだ
なんというか───今の時期そのものみたいだった。時期の『春』と呼ばれる。赤寄りのキモノ、派手なものではなく奥ゆかしく、主張し過ぎない色をしていた
「季節の色って言うんだ」
「なるほど」
季節の色か、季節ってなんだろうか
「寒暖差が激しくなる時期を総称する
某の国の言葉といえばいいかな」
「へぇ〜知らなかった…今度調べて見ます」
ここではそれ程寒暖差がないから無さそうなものの、調べるのは楽しそうだ
「面白いのでお勧めです」
「…」
何だろうか。違和感を感じシャリーさんを見つめる
「もしかして、口を閉じれてませんでしたかね」
「ううん、ノルは確かに口を閉じて考えてた」
「…」
◆【開示】
【読心術】というものがある───相手の『内側』を見ることのできる『力』だ。種類は数多、最も多いとされているのが『行動の先読み』だ
元来『読心』と呼ばれているものの───『表層意識』を『観察』等で事前に知って対処しているだけに過ぎない代物だ
しかし、シャリーさんのそれは『表面に出てくる意識』とは違い『発生する前の意識』を『明確』に読み取り、それを理解していた
「そういう【スキル】ですか」
「どちらかというと『種族特性』かな」
前髪を持ち上げ、シャリーさんがその眼を見せてきた───対の『黒い瞳』と額の位置にある『黄金色の瞳に縦に長い瞳孔』彼女には目が3つあった
「某は『覚り』とある大陸における
妖怪の種族の者である」
「覚り…」
◆【理由】
「聞いたことは、ある?」
聞いたことはない。が、ドリアードさんの様な存在なのだろうか───シャリーさん自らが『ヨウカイ』と、人とは違うことを明示してきた上でひとつ疑問が残る
「いえ、聞いたことはありませんが
何故今それを?」
「今から某が話すことへの違和感を払拭するための
必要な処置なので致し方なく」
シャリーさんはルナさんを一瞥して、深刻な面持ちで話した
「ルナは今日、死にに行こうとしていた」
「…」
本当に運が良かった。森で目覚めるのが少し遅ければ、人混みを発見できなければ、瀕死の少年を助け出せなければ───ルナさんは公爵家へ行き【解呪】で死ぬ所だったのだろう
「ノルは知っていたのか?」
「…知っていました」
「何故、止めなかったのか…なんて
聞くつもりはない。ルナの性格
ノルの意識を覗けば事情は分かった」
僕の理解を置いてけぼりにして、会話が段飛ばしで進んでいった
◆【『覚り』について知った】




