『ルナ・ヒーラー』〈失神癖のある人〉
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遠い日でも振り返る様に記憶の中を揺蕩うマリアは『ノル』との初対面の日までを思い出していた───それは数少ない『ノル』との共通の記憶の最も初めのものであった
何か、優しく暖かい感覚が自分の中に流れ込んできたのを強く感じた時、最初に思い浮かんだのが『彼』との記憶だった
◆【ジッポの森】
『残り1日』───虎丸さんと共に一夜を明かした。虎丸さんといる場合、ジッポの森は完全なる安息の地となっていた
「…うわっ」
しかし、トロル達が行き交うことには変わりなく、地響きや巨体が作り出す陰により朧げながらに目が覚めてしまった。かなり寝ていたのか、陽はかなり高い位置になっていた
「…」
木の密集具合が良くなっており、早速ドリアードさんが解決に動いてくれているのが明らかに分かった
「ありがとうございます…」
『ノル起きたか』
「あ、おはようございます虎丸さん」
◆【街へ】
『うむ、やはり陽の光はいいものだ』
「やっぱり違うものなんですか?」
『これと言った違いはないが芯から満たされている
と感じる』
らしい。確かに【陽光】と比べると気持ち良さが段違いとまではいかなくとも僅差で『太陽』が優っている───明確に『何が』『何処が』は不明ながら
◆【街へ】
正門で虎丸さんの『仮従魔登録』をした。門兵に対して『召喚体』への『命令』を行い、それに従うかどうかを見てもらい、街での活動を許可してもらうと言ったものだ
「余裕でしたね」
『逆らう理由がないからな』
虎丸さんはこれにあっさり通った。当たり前と言えば当たり前なのだが
◆【人だかり】
さて、これから『ルナさん』を見つけなければならない───恐らく今日にでも【解呪】を使うであろうことは想像に難くない。しかし、所在が分からないことにはどうしたものか
「公爵邸の位置も知らないし…」
『時にノルよ。今日は祭りか
何かが催されておるのか?』
「いえ、そんなことはないと思います」
『なればあの人だかり、ただ事ではないな』
虎丸さんが頭を向けた先、僕には見えない方向に何やら人だかりができているとのことで急いで向かうことにした
◆【落下事故】
「誰か!来てくれ!」
駆けつけるとそこには横倒しになった大きな板を数人で持ち上げようとしている集まりができていた
『下敷きになってるものがおるな』
「看板の丁度中心です」
『ならば』
虎丸さんが駆け出した直後、黒い身体が影の様に薄ぼんやりとなったかと思えば倒れていた大きな板が爆ぜる様に割れ、持ち上げようとしていた人達が盛大に尻もちをついた
「…っ」
大きな板が瞬間持ち上げられ、そのまま手が離された───このままでは勢いがついて下敷きになっている人に被害が及んでしまう
「…」
神経が研ぎ澄まされていく【探知】で人の位置は分かっている。『幸い』全員持ち上がった板より全身が低い───構える【魔法】を僅かにズラして発動させる。使うのは【石弾】と【水玉】の2種
どちらも質量による攻撃だ。浮き上がった板をより高く、続く2撃目で吹き飛ばせば板は裏返しに倒れた
◆【重傷】
潰されていた時間は分からないものの呼吸は浅く小さかった。声掛けにも反応はなく、反射反応もなかった
「虎丸さん!近くの教会へ」
僕の【治癒】では怪我を治せても後遺症が残ってしまう。最後の手段とするべきだ───幸い教会が近い、ここからなら虎丸さんの足で余裕で間に合う
『うむ』
「いえ、必要ありません【ヒールショット】」
突如銃声が鳴り響き、僕が抱き上げていた人に白い光が直撃すると容態が安定した。流していた血は宙に散り散りとなり、打撲痕は見る見るうちに回復した
この光、昨日ぶりのものだった
「昨日ぶりですね。ノル殿」
「ルナさん!」
「ノル」
「シャリーさんも」
「ノル。突然だけど、手伝って欲しい」
「?」
2人との再会───と思ったのも束の間。代わりにルナさんが糸を切られた人形の様に倒れ込み、シャリーさんに抱き抱えられた
「ルナさん!?」
「きゅ〜」
「大丈夫、ただの気絶」
「気絶…」
突然倒れたルナさんに動じることのないシャリーさんを見るに問題はない。本当に?───一先ず言う通りに手伝うことにした
「虎丸さん」
『その者は我が運ぶとしよう』
◆【そう言えば】
ルナさんには【失神癖】があったな───魔力を大きく損失した場合や、生命の危機に瀕した時など、凡ゆる負の状況に陥った時『忌避反応』が強く出る効果のある【スキル】だ。『逆引き』調べ




