『マリア・F・アルバート』〈箱入り娘〉
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陰鬱な日々の積み重ね、積み上げようとも必ず瓦解する努力をする、そんな怯えながら過ごす日々は閉鎖的で、とても生きた心地のする様なものではなかった
稽古をしていようとも、勉学に励もうとも、それらは全て16から17歳になった瞬間に『死』とともに崩れ去るのだから───それでも体裁は保つべきと『仮面』を被れば、日々の浪費は加速の一途を辿ることになった
それを嘲るように『早熟』が開花した。日々の現実逃避でさえ、かき消されていく様だった。でも───
◆【起床】
「…朝だ」
身体が震え出そうとするのを必死に抑え、深呼吸をする───自分さえ騙せる【演技】は数少ない時間に使うための体力を『怖気』から守ってくれる
最後のその瞬間まで公爵として過ごそう。その日から震える時間さえ無いのだから
「…」
ある日、何の予兆もなく永遠に寝続ける。それなら何の感情を持つことなく死ねただろうに───【十六の死印】という凶器を突きつけられ続けて、この日15となった
自分に残されたのは『1年』と『364日』と知っている今をどう飲み込めばいいのだろうか───その答えを見出すのに私という人間が生きた年月はあまりに短いものだった
◆【食卓】
ひとしきり泣き、涙の跡を隠す様に顔を洗う───ひとり隠れて泣き慣れてしまって久しく、自室を後にして一階へと下る。するとドアを隔てて1枚向こう側から両親と兄上の声が聞こえてきた
「国外で有望な人を連れてきます」
「国家間の情勢が不安定な今
騎士でもないお前を他国に送るわけには…」
「では
父上はマリアが死んでもいいというのですか」
「…」
「兄上、冷静になって下さい」
「!?マリア」
私は家族に恵まれている。アルバート公爵家の娘としてこれまで周りの人たちにどれ程助けられてきたか───だからこそ、であるからこそ私のことで言い争って欲しくない
「公爵家の第一子息。これが持つ価値を
兄上はよくご存じのはず」
「分かっている。分かっているけど…」
「折角のお食事が冷めてしまいます」
「すまない、マリア」
「そんな、マリアはとても幸せですよ?
父上、母上、兄上から毎日気にかけて頂いて
衣服も食事も、暖かい部屋も
これ以上ないくらいに幸せです」
◆【個人の研究】
ただひとり座して死を待つばかりではない───『呪い系』と呼ばれる【スキル】をこの歳まで研究を続けてきた。治すために多くの人に力を借りた
その過程で【代償】と呼ばれる『契約』に辿り着いた───何かを犠牲にして、何かを得る。アルバート家はその昔『世界の厄災』に対して【これ】を支払った
その【代償】に行き着いたその日、私は取り乱し、自室で泣き通した───『契約』は既に支払われた後であり、これを無効にすることは当事者ではどうにもいかないのである
「どうして!わたくしが…まだ
まだ!生きていたいのに」
自分の力ではどうにもできない現実に16の歳となった時に行き着いた
◆【誕生日の翌日】
この命が尽きる歳まで1年を切った
「マリア…何か欲しいものはあるかい?」
両親の問いにいつもは無難に答えるものの、その日だけは違った───そうだ。本当に死ぬのか分からないことに俯き歩みを止めるわけにはいかない。公爵家の娘として将来のことを考えなくてはいけない
「───わたくし、英雄学校を受けたいのです」
朝食時にそう告ると、皆が目を丸くしてわたくしを見ていました。そして、治療に専念すべきと口を揃えて言ってきた
けれども、人生で初めての我儘を言った───そうだ。この『病』に蝕まれてからというものの『わたくし』ではなく『十六の死印』がまるで中心の様な人生を送らされてきました。であるなら、この1年未満くらいは『マリア・フィアナ・アルバート』として、生き抜きたい
「わたくしの病気が治っても、その時に
無職だったら困りますわ。ですから───」
『口八丁手八丁』───【スキル】以上に達者になった【演技】で『説得』した。家族は尊重してくれた
◆【しかし】
それでも、既に試験が行われた今年は見送る他なかった───公爵家の特権を使えば『或いは』。しかし、それはわたくしの望むところとは違いますので短い学生生活となるやも知れませんが気高く生きてやります
それから『英雄学校』に向けての準備をしているとあっという間に時間は経っていった───そして、ある日ギルドという場所に『奇妙な噂』が立つ様になった
それは『オリヴィアの子孫が現れた』というものだった。一縷の望みを感じ、無理を言って『オーディンギルド』へと足を運ぶことになった




