『ゴールデンビー』〈復讐者の前に伏す〉
◆◇◆◇◆
銀狼の背中で地面を駆けつつ、地面に刺さった直剣を回収し、鞘に戻す───近くに虎丸さんが着地した。傷は全くないものの所々に葉っぱがくっついていた
「虎丸さん、怪我はありませんか?」
『問題ない。我の身体を傷つけられるものは
そうおらんからな。しかし』
◆【環境不利】
『力で優っていようともこうも
縦横無尽に動かれては当たらぬな』
「厳しいですね」
いくら虎丸さんが強かろうとも、戦っている土俵が違うためかその攻撃が『ゴールデンビー』を捉えた様子は見られなかった
「どうにか、叩き落とす必要がありますね」
◆【一頭+ひとり+5匹】
【判断力B】と【統率】に身を委ねる隊の凄まじさ足るや、攻撃を避けることは容易だった。銀狼の背に跨っている今【反射神経】【俊敏C】を持っているも同然───戦況を俯瞰する『銀狼リーダー』により、攻撃が当たることは先ずなかった
しかし、攻撃に転じればその拮抗は容易に崩れた───『ゴールデンビー』との空中戦。分の悪い勝負だった。相手の土台に上がることが間違いなのは明白ながらそうしなければこちらが一方的に攻め立てられることになる
回避を続けるにもレベルによる体力差があった。【高速飛行】対【俊敏C】は同等に見えてその特性からやや不利だった───不利な状況を『被弾』する度に回復することで保っているこの状況は僕が失敗すればそれだけでひっくり返されてしまう程危ういモノだった
「逃げ…っ!」
◆【空を埋め尽くす蜂の大群】
『ゴールデンビー』が空中に退避したかに思えた。その一手は攻め手の不足、防ぐので手一杯なんて生優しいものではなかった───『絶望』だった。何せ【謀叛】が見当たらなくなり『ゴールデンホーネット』の指揮が回復していたのだ
「マジか…」
空を埋め尽くす蜂の大群が空から一斉に地面に向けて迫って来ていた───攻撃を受ければ回復が間に合わないのは明白だった
「どうしよう…何、何?」
予想外の一手に空を呆然と眺めていた僕の服を銀狼が噛んできた。離そうとしない上に4匹の体重に負け転ぶと銀狼達がやがて僕におぶさり始めた───まさかこの子達、自分を肉壁になるつもりなのか
「…馬鹿馬鹿!ダメだって!」
『銀狼リーダー』もこんな行動見過ごすのか?───リーダーを見やるも判断に肯定的なのか目を伏せてしまっていた。畜生そんなのアリかよ
◆【巡る思考の端に】
「…ッ」
考えろ、考えるんだ───一波を防げたとて、攻め手と標的が少なくなればそれだけ体力の消耗も速くなる上に回避どころではなくなる
何か、あの最強の攻撃方法に綻びはないのか───僅かな隙間があるものの全員が避けられる余裕はなかった。ホーネット達も1匹残らず僕達を捉えている
「…いや」
ひとつ思いついた。ドリアードに『種族特性』があるなら『蜂型』にもそれがあるはずだ。しかし、不確定要素ばかり、この一手を失敗すれば全滅必至───それでも全滅の延命の今よりはマシだろ
「上手くいけよ…」
肉壁から這い出て、魔力を集中させる───銀狼達が駆け寄ってきて、服を噛んでくるがどうにか間に合った
◆【陽光】
「虎丸さん!」
手のひらに貯めた【陽光】が宙に勢いよく飛翔した次の瞬間───2個目の太陽が炸裂した。それを見計らって『石弾23↑』を構える
石弾越しに衝撃が伝わってくる。石を砕いていく程の威力───地面に激突して次々に視界の端で潰れていく『ゴールデンホーネット』だった辺り一面に広がる『黄金色の体液』の海は無残なモノだった
「…」
【探知】で岩越しに『悠々と飛ぶゴールデンビー』が目に止まった。所詮は『虫系』ということなのだろうか
「虎丸さん」
『うむ』
◆【石弾を放つ】
『ゴールデンビー』目掛け石弾を撃ち出す───勢いの落ちやすい最大溜めの『石弾』では有効だとは行かないながら、当てることが目的ではない
『そこ!』
ゴールデンビー目掛けて撃ち出した勢いを受け、虎丸さんが勢いよく飛翔する───空中に一時的な地面を作ることで飛翔に余裕を持たせた一手だったが奇しくもその一手は空振りとなった
『!?』
が、その隙を逃さずもう一手が『ゴールデンビー』を真上から地面に向けて叩き落とした───ドリアードの親木の一撃がこれを成していた
動きが止まった『ゴールデンビー』に目掛け『銀狼リーダー』が走り出していた───しかし、その足の速さは4匹のものと比べ遥かに劣っていた
千載一遇の好機───それでも足りない。駆ける速さと『ゴールデンビー』の回復の接戦。それを制したのは紙一重で『ゴールデンビー』だった
空中に飛び立ち、身を翻すその姿は『瞬退』に似ていた───銀狼リーダーの爪が『ゴールデンビー』の羽だけを捕らえ、揺らいだものの即立て直した
◆【1538】
【投擲C】
〈物を投げる時に精度、威力、射程に
レベルの補正が働く様になる〉
◆【『アレ』を投擲】
「いい加減倒れろ!」
僕は全力で『ゴールデンホーネット』の毒針を投げつけた───『瞬退』の直後同様にある一定の位置で『滞空』を始めた直後に直撃を受けた『麻痺』の一撃は大した物ではなかっただろう。毒腺の抜き取られた残り香ばかりが残る『鋭いだけ』の投擲物だ
しかし、黒獅子と銀狼に対峙している今───攻防のうちに起こった『状態異常』は『致命的』だった
───ついに勝敗が決した
決めて『虎丸の打ち下ろし』
『銀狼の爪による一閃』だった




