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『ゴールデンビー』〈孤独な統率者〉

◆◇◆◇◆


【標的】───敵意を抱いた相手から攻撃の対象にされ易くなり、害意に晒される優先度が非常に高くなる【タウント系スキル】


 集団戦において『優先』的に狙われる様になる


◆【不平不満の向く先】


【統率】は『洗脳』が一番近い効果ながら似て非なるものだ。主な役割は個々人の持つ思想の統制と方向性の確立だ


 それ故に『強制力』としてはお粗末で───利害関係の一致によって成り立っているため、これが著しく損なわれればあっという間に瓦解する


『S』に収束するにつれ、強制力が生まれこそすれ、そこまでの統率者には不要となることが多いだろう


「…」


【火扇】で煽る程に【謀叛(200)】が『100』になり、やがて【付与】を含め『150』にまで下がった。人ではこうはいかないだろう


【588】───一先ずは2匹に【付与】し、前例を作り、これを足掛かりに『ゴールデンビー』を討つべくとした


「では、行ってきます」


「気をつけて、ください」


「はい、虎丸さんお願いします」


『うむ』


◆【VSゴールデンビー】


 走り回り【火扇】による煽り、【謀叛】で『ゴールデンホーネット』を煽る───やがて『ホーネット』が1匹、また1匹と『ゴールデンビー』にその矛先が向かうことになった


『壮観だな』


「ですね」


 空を埋め尽くす虫の群れが『たった1匹』を執拗に追いかけていた───その動きは夕方に差し掛かった『ムクドリ』が如くに空で蠢いていた


 この様子から『ゴールデンビー』が【タウント系】により統率を取れる状態ではなくなったことは明らかだった───『ホーネット』のおこぼれを倒していく、高い位置での討伐はかなり骨が折れた


 虎丸さんに跨っているとは言え、空中で1匹、2匹を倒せれば運がいい方だ


 戦力を削ぐ意味でも『ホーネット』を倒し【1788】まで上がった時、異変が起きた。空中でゴールデンホーネットの塊が途端に爆ぜたのだ


 固まっていた蜂の塊が四方八方に飛び散り、その中から『ゴールデンビー』が【高速飛行】で飛び出してきた


【巨大化】と【高速飛行】による質量と速さの合わせ技に『ホーネット』は次々と倒されていく───【謀叛】持ちは無事ながら相手にならない様子だ


「っぐ…あぁっ!」


『…虫風情が!』


 目で追える速さじゃなかった。気がつけば体当たりを受け、虎丸さんの背中から吹き飛ばされた───直撃こそ避けたものの『直剣』がなければ直撃し、即死だった


 しかしその反動で剣が吹き飛ばされ、腕は痺れていた。鞘だけが腰に座っているこの状況はかなり不味い状況だ


「マジか」


 運良く親木の枝先に着地できたものの『ゴールデンホーネット』が僕を狙わないわけがなく『統率』によって、瞬く間に包囲された


◆【ジリ貧】


【魔弾C】【石弾C】【水玉】【紫電C】【火扇】で耐える。『幸いなこと』に『回避』は間に合っている───攻撃手段が『体当たり』『噛みつき』『針』と近接ばかりなのが救いだった


 それでも不安定な足場で延命している。体力が尽きれば囲まれて生きたまま齧り尽くされることだろう


「ぶな!?」


 突撃して来たモノを間一髪で避けられている状況。どうにかして虎丸さんと合流したいものの『ゴールデンビー』を牽制してくれているこの状況で呼び戻そうものなら今度こそ直撃は避けられない


「ッグ…!?」


 思考の狭間で回避が遅れ、足に針が刺さった。筋肉の痙攣が起こり『痺れ』が上がって来ているのが分かる


「くたばれ!!」


 局所集中により『刺して来たホーネット』を倒し【各種回復】を施す。【状態異常回復】を取得してなければ今頃骨すら残っていなかったと考えると恐ろしいことこの上ないが全身に回る前に『解毒』はできた


 そう何度も喰らえる代物でないのは理解した。腕やそれこそ上半身に喰らえば、回復どころではなく、死ぬことだろう


「ってもねぇ」


 この状況ではそれも時間の問題だ。包囲され、あちらは『数』『機動力』が圧倒的───対してこちらはひとりかつ、主力武器は手から離れ、体力を削られている


「…っ」


 一か八か『石弾100』で地面に着地するのに賭けるしかないか


◆【遠吠え】


「───っ!」


 羽音が不快な重演奏を奏でる中で『それ』ははっきりと聞こえた───月夜に聞けば背筋も凍るそんな、遠くへ長くへ響くであろう笛の様な仲間への呼び声が聞こえた


 銀の光が『ホーネット』の包囲を縫って迫って来ていた


「凄!?」


『ホーネット』が2、3匹と瞬く間に裂かれていくと『銀狼』達が包囲を食い破って現れた


◆【脱出】


「ありがとうって、大丈夫だよ」


 頭を撫で、ふと銀狼の1匹が靴の穴を心配して、顔を覗き込んできた───回復したとは言え『血痕』や『損傷』ばかりはどうしようもないからな


「え?」


『枝が揺れ動いている』───風などの仕業ではなく明らかに地面まで続く枝の足場ができていた


「それ、できるんだ」


 枝の自由な操作が『ドリアード』にはできる様だった───やはり本ばかりでは知りえないことばかりだ


◆【銀狼の背で】


 半ば強引に背中に乗せられ、降りていく───それに合わせて『ホーネット』の包囲も薄くなっていけば数分ぶりながら、2度と踏めないと覚悟した地面との再会を果たした

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