『師匠の助言』〈頼りになる人〉
◆◇◆◇◆
「ドリアードさん、ここで待っていてください」
「ノルちゃん、待ってます、ね」
脳裏に浮かんだ言葉から逃げる様に2層へと向かう選択をした。僕が辿り着いた結論とは違う何か、別の視点───それこそ『鑑定眼・偽』の時の様な、そんな思いつきもしない一手に縋る様に2層へと向かった
「虎丸さん、二層に着いたら…」
『委細承知』
「ありがとうございます」
◆【2層へと】
虎丸さんにドリアードさんの警護を任せる。ひとりにすることが何より不安で仕方なかった───何でこんなに狼狽えているのかがわからない。アレはエマじゃ無いそんなことは分かっている。分かっているのに
「…っ」
気持ちの悪い感覚に頭を悩ませながら、師匠の元を訪ねた
『弟子が頼りにしてくるこの瞬間!
オリヴィア待ってました〜』
師匠の明るさに安心感を覚えた───いつもの明るさで出迎えてくれるこの時間に確実に救われた瞬間だった
◆【籠と箱】
師匠に一連の流れを伝えた
『ゴールデンホーネットなんて聞いたことないかも
蜂で一番強かったのってレベル700の
ポイズンビーだったかな?』
700って、凄いな今の僕ではどんなに策を考えても勝てる未来が見えない敵だ
「どうやって勝ったんですか?」
『【創作】と【付与】で自重を
数百キロプラスしただけー』
「自重を?」
『我が弟子は頭が硬い様だね〜
創作の真価は『創造性』だぞ?
既存のものにばかり囚われては…』
「それ、LP高くなりますよね」
『ぐっ…痛いところつくね』
オリヴィアさんはLPを豊富に有している故、それを基盤とした立ち回りが可能な人だ。今の僕とは違うことを忘れてはいけない
「…何か、ないか」
『…ねぇ、ノル君』
◆【諭す言の葉】
『オリヴィア的には今回のは諦めて欲しいかな
死んで欲しくないし、我慢してれば
ゲートキーパーってのは倒せるじゃん?』
「そうなんですけど…」
師匠でさえ、僕の考えた選択と同じ結論を出した。それが一番だということは間違いない様子だった
『そこより下層なら、ノル君のレベルが
上がることは間違いないんだしさ?』
「…」
『ノル君…』
レベルを上げれば『LP』が溜まる───群体の中でもあぶれた個体を倒せば、間違いなくレベルが上がるだろう。それなら『毒』の心配をせずとも良い筈だ
『ノル君!』
「はい!?」
『ぜん、ぜん!!ノル君らしくないじゃん』
「らしく、ない?」
『いつもの淡々としたノル君はどこ行ったの?
オリヴィア心配!』
「…」
『何か、隠してるよね?』
「いえ、そんなことはないです!
全て話しました」
『流れを、ね?詳しくは聞いてないでしょうが』
「…」
◆【ゲートキーパーと株分】
ドリアードのこと、その子が頼ってきたこと───そして、知人に似ていることも話した
『なるほど、それで躍起になってるってことか』
「はい…」
『貴族ってのはどうしてこうも
神様気取りになりやすいんだろうね』
「どういう?」
『ノル君?貴方の手は何本?』
「え?2本ですけど…」
『そう、2本だけどうしたって助けられるのには
限界がある。例えば崖に親と友達が
ぶら下がってる。どちらか片っ方しか
助けられないとしたらどうするつもり?』
「…どちらも助けたいです」
『それが神様気取り、選択しないといけない
そんな時にも選択を後回しにして
結果どちらも救えない』
「…っ」
何も言い返せなかった。その通りだったからだ。我儘ばかりを通して、結局何もできていない
『だから』
「それでも───」
それでも貫き通したい意地がある
◆【833】
「───頼られた。これは守りたい、です」
『自分が死んでも?崖から落ちちゃうよ?』
「助けた人にも手が2本あるなら
上手くいけば4本になります」
僕が代わりに落ちても2人が生きているならプラスだ
『青クセェ///』
そうだ。僕の手だけじゃない。虎丸さんだっている。ドリアードさんだっている───【創作】に【付与】【編集】で手段はいくらか増やせるんだ。八方塞がりではない
【ゲートキーパー】はどうにかしよう。今は『助ける』ことを最優先で立ち回らなければ、討てぬ竜の何とやら─── 手に入っていない結果にあれこれと迷うべきではなかったんだ
『そういうことなら、この───』
「…師匠と話していたら妙案が湧きました」
『え?』
◆【扉に手を掛ける】
『ちょちょちょ!待ってノル君!』
「え?」
師匠に呼び止められた
『今から良い感じに褒めてオリヴィア的には
師匠ムーブしようとしてたのに
酷くなくなくない?ノル君
そういうところあるよね』
「それって」
『うむ、弟子が一皮剥けようとしてるってのに
無粋だったわ〜作戦。立てるぞ』
「…!はい」
【843】師匠はとても頼りになる───話していただけでも道標をくれた上に『助言』までくれたのだ。さすがだ




