表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人の行方  作者: 森三治郎
PR
70/86

70、モモンガ②


「まっ、何はともあれ入って」


ご先祖様は、モモ先生に続いて住まいに入った。入ると土間があった。

ずう~と、どこまでも土間だった。真ん中に粗末なテーブルがあり、今にも壊れそうなイスがある。ご先祖様が躊躇していると、モモ先生は壁にはね上げてあったベットを倒し、折りたたまれてあった脚をセットした。上に乗っていたふとんやマクラを収納庫に片付けると、畳一枚分のイスになった。

次にモモ先生は、台所で何事かガサガサ、ゴトゴトやり出した。しばし待つうちお茶が出てきて、トンとお茶うけも出された。何やら、アメ色をした不思議な物体が皿の上にある。ウリのような、瓢箪の出来損ないみたいな物が、輪切りにされてあった。


「いただきます」


ご先祖様は、一切口に入れてみた。少し酸味のある、甘いのかしょっぱいのか分からない不思議な味がした。


「これは何ですか」


「キューリの古漬けだ」


「これが……キューリ?」


なるほど、良く見ればキューリだ。しかし、そのキューリは尻の部分が楕円形にラグビーボールのように膨れていて、そのにイボのついた曲がった細い茎が先端から伸びていた。

モモ先生は、野菜作りの専門家と聞いたが……。


「これは、新種のキューリなんですか?」


「んや、ただのキューリだ。それはね、山どりのキューリなんだ。ちゃんとした畑で作ったやつじゃなく、実験で山に種を播いてみた。そしたら、そんな風な物が出来ちゃったんだよ」


「はあ、そうですか」


「種を土にくるんでダンゴ状にした物を、山とか土手とか空き地にバラバラと播くんだ。そうすっと、自分で勝手に芽が出て育つ。成ったら採ってくる。手間要らず、空き地利用と一石二鳥だ」


「はぁ」


「だけど、やっぱり、そういうやり方に向くやつと向かないやつがあんな。カボチャなんか、もともと土手っカボチャというぐらいだから、良く出来る。いろいろ試してんだが、トマトとかキューリとかパッとしないな~」


「あの~、俺、普通の畑で、普通に耕して、普通に種まいて、普通に野菜など作ってみたいと思ってるんだけど」


「あっ、そうが……」


モモ先生は、何か思い直したふうだった。



モモ先生は、ご先祖様に普通の野菜作りの指導を始めた。ここは余るほど土地も耕地もふんだんにある。

夏野菜や果物類、トマト、キューリ、ナスなどの植え付けから始まった。

モモ先生の実地指導は、適切だった。かなりの人数を指導してきた経験者らしく、ソツがなく上手だった。


「ご先祖様はスジがいい」


言葉づかいが乱暴なわりに、人を持ち上げるも上手かった。

これで、ご先祖様のここでの生計の道筋のようなものが、少しずつ築かれていった。


ナルコユリ


挿絵(By みてみん)


ナルコユリです。風情が涼し気です。

似たような野草にアマドコロやユキザサがありますが、それ等より葉がシュっとスリムで色が少し淡いかなぁ。

昔は、滋養強壮剤として用いられたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ