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人の行方  作者: 森三治郎
63/66

63、バイク①


次の日、ご先祖様はさっそく機械屋のロバを訪ねた。

なぜ機械官でなく、機械屋なのか……。木師によると、役人の身分を保証すると、ろくなことがないそうで必ず利権が生じ、腐敗や堕落、怠慢などが生じるそうだ。

しかし、役人はやっぱり必要である。だから、任期が限定してあり、その上不都合があればいつでも解任されるという。

ともかく、ロバは機械屋であるらしい。

ロバの家は西側の山裾にあって、ご先祖様は木師の家からブラブラ歩いて行った。

ロバの家が小さく見えるが、歩くとけっこうな距離がある。やがて、のどかな田園の向こうに、巨大な山のような廃材らしきものが見えて、その廃材の端っこに廃材と似たような建物が突き出ていた。

近くで見ると、案に違わずバラックのような建物だ。取って付けたような壁面と、取りあえず乗せてあるようなトタン屋根がプラプラしている。

思わず『大丈夫なんだろうか』と、思ってしまう。

その建物は工場と自宅が棟続きとなっていて、内部はかなり広い。けっこう敷地も広く取ってあり、宅地側の一画に長方形の花だんがあって、葉だけになったチュウ―リップやスイセン、ヒヤシンスなんかが植えてある。これから伸びるであろうユリの芽が、何本か見えた。

ロバも、簡単な園芸をしてるらしい。宅地の軒下には、君が代ランが何本か植えられていた。


「こんにちは~。俺、旧人のご先祖様と呼ばれる者です」


どうも、ヘンな具合だ。俺の名前もここの連中に負けず劣らず、ヘンな名前だ。


「は~い」


工場の中から、顔をススで黒く汚した子供が出て来た。真っ黒になった手に、妙な工具を持っている。一瞬、『お父さん、居ないのかね』と聞いてしまいそうになった。

一見して、イタズラ小僧っぽい印象だ。髪はボサボサ、服もところどころほつれて汚れているが、目がキラキラと美しい。好奇心で輝いている。


「ご先祖様ですね。木師から聞いています。バイク、出来てますよ」


「いや、それはありがたい」


言う通り、工場の中にはバイクがあった。その傍らに、もう一人子供がいて何かしている。


「出来た?」


「うん、あとは試運転するだけ」


「あっ、これ()です。イノシシの猪です。電気系統を見てもらってます」


「じゃあ、エンジンかけてみます」


猪がハンドルをもって、セルを回した。グッ、グッ、グッと何度目かの試みの後、ブォンとエンジンがかかった。ブォン、ブォンと猪がアクセルをふかす。


「やかましいなー!」


それでなくとも、カン高い声をさらにカン高くして、興奮気味に猪が言った。

その時、カシャっと何かが触れて、ブォォォとバイクは猪を引きずりながら走り出した。


「わっ、バカー!」


二人が「あっ!」と言う間もなく、バイクは外に飛び出した。そして、ガシャーンと何かにぶつかる音がした。

急いで外に出てみると、バイクは君が代ランに突っ込んで倒れている。猪は肉厚で硬そうな、針のような先の尖った君が代ランの葉に突き刺さっていた。


「あわ~」


見るからに痛そうだ。モズのはやにえのようになった猪が「う~む」と唸っている。


「救急車だー!」


程なく、パホォ~パフォ~と救急車が来た。救急車といっても、スノボーがカプセル状の物を引っ張っているだけだった。


「大丈夫かな」


「大丈夫でしょ、大したことない」


ロバは何ともアッケラカンとしている。心配する気色もない。

新人たちの特色なのだろうか、何事に対しても態度がサバサバし過ぎているようだ。

ともかく、猪は救急車で運ばれていった。


君が代ラン


挿絵(By みてみん)


君が代ランです。

北米原産の観葉常緑低木です。葉が尖っていて、痛そうです。

あまり、見かけないですね。(けっこう大型ですし、美しいとも言えそうもないですし)

絶滅危惧種かもしれない。

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