59,仕事①
再び食事をとるようになって、三日目のこと。
「思想上のことはともかく、ここで実際に生活して行くためには、何か実業をもった方が良いな。ふむ」
と、木師がそんな提案をしてきた。
ご先祖様に異論はない。ただでさえ、大きな図体でブラブラしているのは気が引けるし、心苦しい。このまま、無為徒食を決め込むのは、ズウズウし過ぎると思っていた。しかし、旧人の俺にいったい何が出来るのだろう。
「ふむ、……まっ、今すぐとは言わん。まず、自分に向いた仕事を見つける方が先だろうな」
「はい」
「ついては、ここの新人たちが主にどんな仕事に就いているか教えよう。その中から、自分に向いた仕事を探せばいい。ふむ、ワシと一緒に来るかね。ワシの私宅だ」
「はい。ぜひ」
木師に、私宅があったとは意外だった。今住んでいるここの牧師の家とは、公宅というか仕事場だったのか。
だけど、木師の私宅とは……いったい、どんなもの何だろう。ご先祖様は、むらむらと興味が沸き上がって来るのを覚えた。
「表口で待っててくれ。すぐ行く」
木師にそう言われてご先祖様が待っていると、例のスノボーが現れた。
ただ少し違うのは、スノボーがワイヤーで貨車状の物を引っ張っていることだった。
「乗れ」
木師が空の貨車を指して、そう言った。
「これに?」
ご先祖様は面食らった。いきなりそんな事言われえても……。見ればそれは貨物運搬用のスノボーらしいし、木師が運転するつもりらしいが大丈夫だろうか。
「心配ない。ただし、気合を入れて乗ってもらおう」
「はぁ……」
「いいかな、しっかり踏ん張って、つかまっているんだぞ~。いくぞっ、おりゃー!」
「⁉」
スノボーは、いきなりウイリーしたかと思ったら、全開で走り出した。
ご先祖様は「ひー!」と悲鳴をあげた。一瞬、心臓が止まるかと思った。
年寄りのくせに、エライ乱暴な運転だ。気合を入れて乗れ、と言った意味が分かった。これでは、いいかげんな気持ちで乗っていては、振り落とされてしまうだろう。
貨車は車体を軋ませて初速のすばらしいスピードのまま、畑道に突っ込んで行った。
車体は、ガタビシと激しく揺れる。
「木師―!」
ご先祖様は、手摺をしっかり掴みながら叫んだ。
「「何だー」
「もっと、ゆっくり走れないのかー」
「何で~、サービスで飛ばしているのに~」
「あのね~、周りの景色をゆっくり眺めたいんだよ~」
「ふむ」
ようやく貨車は、いくぶん速度を落として安定した。




