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人の行方  作者: 森三治郎
59/67

59,仕事①


再び食事をとるようになって、三日目のこと。


「思想上のことはともかく、ここで実際に生活して行くためには、何か実業をもった方が良いな。ふむ」


と、木師がそんな提案をしてきた。

ご先祖様に異論はない。ただでさえ、大きな図体でブラブラしているのは気が引けるし、心苦しい。このまま、無為徒食を決め込むのは、ズウズウし過ぎると思っていた。しかし、旧人の俺にいったい何が出来るのだろう。


「ふむ、……まっ、今すぐとは言わん。まず、自分に向いた仕事を見つける方が先だろうな」


「はい」


「ついては、ここの新人たちが主にどんな仕事に就いているか教えよう。その中から、自分に向いた仕事を探せばいい。ふむ、ワシと一緒に来るかね。ワシの私宅だ」


「はい。ぜひ」


木師に、私宅があったとは意外だった。今住んでいるここの牧師の家とは、公宅というか仕事場だったのか。

だけど、木師の私宅とは……いったい、どんなもの何だろう。ご先祖様は、むらむらと興味が沸き上がって来るのを覚えた。


「表口で待っててくれ。すぐ行く」


木師にそう言われてご先祖様が待っていると、例のスノボーが現れた。

ただ少し違うのは、スノボーがワイヤーで貨車状の物を引っ張っていることだった。


「乗れ」


木師が空の貨車を指して、そう言った。


「これに?」


ご先祖様は面食らった。いきなりそんな事言われえても……。見ればそれは貨物運搬用のスノボーらしいし、木師が運転するつもりらしいが大丈夫だろうか。


「心配ない。ただし、気合を入れて乗ってもらおう」


「はぁ……」


「いいかな、しっかり踏ん張って、つかまっているんだぞ~。いくぞっ、おりゃー!」


「⁉」


スノボーは、いきなりウイリーしたかと思ったら、全開で走り出した。

ご先祖様は「ひー!」と悲鳴をあげた。一瞬、心臓が止まるかと思った。

年寄りのくせに、エライ乱暴な運転だ。気合を入れて乗れ、と言った意味が分かった。これでは、いいかげんな気持ちで乗っていては、振り落とされてしまうだろう。

貨車は車体を(きし)ませて初速のすばらしいスピードのまま、畑道に突っ込んで行った。

車体は、ガタビシと激しく揺れる。


「木師―!」


ご先祖様は、手摺(てすり)をしっかり(つか)みながら叫んだ。


「「何だー」


「もっと、ゆっくり走れないのかー」


「何で~、サービスで飛ばしているのに~」


「あのね~、周りの景色をゆっくり(なが)めたいんだよ~」


「ふむ」


ようやく貨車は、いくぶん速度を落として安定した。


イワヒバです。


挿絵(By みてみん)


イワヒバという植物です。

花は咲きません。ただ、葉を繁らせるだけです。ジミですね。

「何が面白いんだ」という人もいますが、葉芸を愛でるということです。

ある意味、清々しいじゃないですか。葉だけなのですから。


30年ぐらい栽培してます。あまり、成長はしてませんね。(自分自身を見てるようです。全然成長してない。^^)

冬は、葉を丸めて冬眠します。(動物みたいですね)

ず~と、同じすがた。不死身とも言えます。

植物は奥深いのです。

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