54、宗教とは③
それでもご先祖様は、気を取り直して聞かずにはいられなかった。
「だけど、俺は前の世界でキリスト教の信者を知っていた。マジメで、温和で、品行方正で、善人のカタマリのような人だった。見本のような人だった。少なくとも、軽薄で、身勝手で、無責任で、ぐうたらな根性なしで、汚らしいクズのような人間より、宗教を持つ彼の方が余程デキが良いと思う。しかし、木師は宗教が悪いと言う。宗教は、そんなに悪いのだろうか」
「ふむ、それは違うな。人間のデキ、フデキは宗教には関係ない。ある程度の人数が集まれば、その中にデキの良いもの悪いものは当然出て来る。宗教は教育の一端も担っているから、宗教が良質の人間を作る製造元と思われかねないが、それは考え違いだ。
ふむ、人間のデキ、フデキは自然発生的なものだ。それに対して宗教とは後から加えられるもの、明らかに意図的なもの、教育に名を借りた占脳であり洗脳であるんだ」
「確かにキリスト教信者は、親がキリスト教信者というのがほとんどだ」
「ふむ、宗教とは、同じ型枠で同じ鋳型の人間を作るようなもので、それらは極めて組織的に行われている。
そして、それらは同じもの同士なら仲良くやれるが、少しでも毛色の違うものにたいしては、著しく攻撃的性格を持つようになる。しかし、個人々々を見ればおとなしく穏やかな人たちである。
ふむ、個々の善人が大勢集まれば大きな善意となるか……といえば、必ずしもそうではない。むしろ、その逆の方が多い。なぜなら、群衆をリードするのはいつの場合も過激な指導者だからだ。
キリスト教の歴史を見れば、その事がよ~く判るはずだ。
奴らは何をしてきたか……、異端審問、十字軍侵略、魔女狩り、免罪符の発行、宗教戦争。布教に名をかりた植民地侵略戦争、その他様々な圧迫、強制を人々に強いてきた。
キリスト教があったから、産業革命は百年以上遅れたという人もいる。
そして、戦争の後ろにはいつも宗教があった」
「それは……」




