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人の行方  作者: 森三治郎
45/66

45、山羊先生の断罪⑧


「二十世紀人とりわけ、二十世紀後半から二十一世紀にかけての人間の罪は重い。

取り返しのつかないほど、重い。

きやっ等は、先人の血と、汗と、涙の苦痛でようやく出来た平和を、当然のように浪費し、それでも足らずに未来人のツケで享楽に耽った。

おお、そうです。人類を破滅させたのは、二十世紀人です」


「おお、うう……」


ご先祖様は(うめ)いた。



「ふむ、何もそこまでご先祖様をイジメなくとも……。ご先祖様だけのせいでは、ないのだから」


突然、何の前触れもなく木師が割り込んで来た。


「いや、悪い。ドアが少し開いていたので」


木師の後ろには、心配そうな兎の顔もあった。昨日の今日とて、誰もが無関心では居られない事態なのだ。


「おお、私はご先祖様が悪いとは言っていません。二十世紀人の罪について、話していただけです。おお、話していたら、つい興奮してしまって……」


「いや、山羊先生の言う通りだ。二十世紀人の罪は、取り返しがつかない。とてつもない重い罪だ。そして……俺は、紛れもない二十世紀人の人間だ……」


ご先祖様は、わが身の内にあった罪のあまりの大きさに、深甚な衝撃を受けていた。


「ふむ、ご先祖様が悪いわけじゃないだろ。むしろ被害者だったんじゃなかろうか。

そんなに、深刻に考えなくとも」


木師はご先祖様を(なぐさ)めた。今日の木師は、犬といい、ご先祖様といい慰め方ばかりだ。


「いや……」


小さく言ってフラフラと立ち上がったご先祖様は、肩を落としうなだれて出て行ってしまった。


「山羊先生だけは、味方だと思っていたのに……」


どういうことだと、兎がキツイ目をして抗議した。


「おお、私は今もご先祖様の味方だよ。ただね、これはいずれ知らなければならない事実なんだ。ただ、ご先祖様は想像以上に深刻に受け止め過ぎたようで……。おお、じつは私も内心驚いたいます」


「何て無責任なの。昨日の今日で、ご先祖様がかわいそうじゃないの」


「ふむ、そうじゃよ。あれで、ご先祖様は図体はデカいが神経は意外と繊細なんだ。気に病んで、本当に病気になってしまったら困るじゃないか」

木師も兎に同調した。


「おお……」


山羊先生もそう言われてみると、いささか気になってきた。


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