45、山羊先生の断罪⑧
「二十世紀人とりわけ、二十世紀後半から二十一世紀にかけての人間の罪は重い。
取り返しのつかないほど、重い。
きやっ等は、先人の血と、汗と、涙の苦痛でようやく出来た平和を、当然のように浪費し、それでも足らずに未来人のツケで享楽に耽った。
おお、そうです。人類を破滅させたのは、二十世紀人です」
「おお、うう……」
ご先祖様は呻いた。
「ふむ、何もそこまでご先祖様をイジメなくとも……。ご先祖様だけのせいでは、ないのだから」
突然、何の前触れもなく木師が割り込んで来た。
「いや、悪い。ドアが少し開いていたので」
木師の後ろには、心配そうな兎の顔もあった。昨日の今日とて、誰もが無関心では居られない事態なのだ。
「おお、私はご先祖様が悪いとは言っていません。二十世紀人の罪について、話していただけです。おお、話していたら、つい興奮してしまって……」
「いや、山羊先生の言う通りだ。二十世紀人の罪は、取り返しがつかない。とてつもない重い罪だ。そして……俺は、紛れもない二十世紀人の人間だ……」
ご先祖様は、わが身の内にあった罪のあまりの大きさに、深甚な衝撃を受けていた。
「ふむ、ご先祖様が悪いわけじゃないだろ。むしろ被害者だったんじゃなかろうか。
そんなに、深刻に考えなくとも」
木師はご先祖様を慰めた。今日の木師は、犬といい、ご先祖様といい慰め方ばかりだ。
「いや……」
小さく言ってフラフラと立ち上がったご先祖様は、肩を落としうなだれて出て行ってしまった。
「山羊先生だけは、味方だと思っていたのに……」
どういうことだと、兎がキツイ目をして抗議した。
「おお、私は今もご先祖様の味方だよ。ただね、これはいずれ知らなければならない事実なんだ。ただ、ご先祖様は想像以上に深刻に受け止め過ぎたようで……。おお、じつは私も内心驚いたいます」
「何て無責任なの。昨日の今日で、ご先祖様がかわいそうじゃないの」
「ふむ、そうじゃよ。あれで、ご先祖様は図体はデカいが神経は意外と繊細なんだ。気に病んで、本当に病気になってしまったら困るじゃないか」
木師も兎に同調した。
「おお……」
山羊先生もそう言われてみると、いささか気になってきた。




