40、山羊先生の断罪③
それは、ご先祖様の存在そのものをかけた問いかけでもあった。
そんなことは、在ってはならないし、もし在ったなら絶対に許すことは出来ない。
たとえその為に自分が殺されようとも、ご先祖様は絶対にその事を容認することが出来ないのだ。
「はい。わたし共は、人間の肉を食っています」
「ぐふっ!」
思わずご先祖様は呻いた。昨晩の黒い怒りがぶり返した。
目の前が、真っ黒になるほどの怒りだった。新人たちは、ご先祖様たち旧人の絶対的ダブー、暗黙のうちにある絶対侵してはナラナイ禁以を平然と踏みにじっているのだ。
ご先祖様は、みるみる真っ赤になった。硬く握った拳がブルブル震えている。
ご先祖様は、殺気立っていた。しかし、ぎりぎりの極限で堪えていた。
爆発の一歩手前で、かろうじて踏みとどまっていた。
だが山羊先生は、そんなご先祖様をよそに何故か恬淡としていた。
山羊先生とて、それがご先祖様の重大な問いかけ、存在をかけた問いかけであることを十分承知していた。
ここでは山羊先生が、一番身近で感じた人間だ。
「ご先祖様、ご先祖様が今、言い難い理不尽、不条理を感じているのは承知しております。おお、しかし、お願いです。暴走する前に、どうか私の話しを聞いてください」
「……暴走?」
ご先祖様は、血走った目で睨みつけた。
「そうです。暴走です。それでも、なお憤懣がおさまらないなら、この私から煮るなと焼くなと好きになさってくだささい。不肖、私はその覚悟ができているつもりです」
山羊先生は、決然と言い放った。これは、真正面からご先祖様を見て言い切った。
ご先祖様は、刮目して山羊先生を見た。これは、思ったよりキモのすわった人物らしいと思った。
「いや、分かった。……あんた等の言い分というものを聞かせて貰おう」
「はい……」
山羊先生は「はい」と返事したものの、なかなか喋り出さなかった。何から話すべきか、思案してるらしい。ご先祖様は、ジリジリと待っている。
……ツと山羊先生は立ち上がり、とっとっとっと窓際まで歩いて行った。
窓を開け放つと「おお、いい天気だ」などと、呑気なことを言っている。
開け放った窓から、春の冷気が素早く入り込んできた。窓を閉めて戻ってきた山羊先生の手には、いつの間にやら紙と鉛筆があった。それで、説明するらしい。
「ご先祖様は、人類が滅亡したことは知っていますね」
山羊先生は、ご先祖様のイタイところを突いてきた。
「そのことは、聞いている」
「おお、そのことです。ご先祖様にはツライことかもしれませんが、そのことを抜きにして私どものことを理解するのは、難しいと思います。それでは、なぜそうなったのか……原因はわかりますか?」
「それは……」
ご先祖様は、言葉に詰まった。記録映像は途中で止めてしまっている。
「それは、二十世紀の人間のせいです」
「えっ、そんな……」
思ってもみない展開になってしまた。
「いや、そんな、何でそんな……」
ご先祖様は、思い当たるふしもある。しかし、全部か全部二十世紀人だけのせいではなかろうとの思いもあった。
体調不良が続いています。
食欲がない。吐き気がする。風邪かなと思う。花粉症もあるかな。おまけに歯痛も。
何か食わなければと思い、うどんを半玉分作って何とか食いました。丸のみです。
今、少しだけ回復基調です。
いや~、季節の変わり目は怖いですね。




