表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッドムーンと偽りのキス  作者: 華月AKI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

九話 思いがけない再会

 日曜の夜。

 充希は怜を迎えに駅へ向かっていた。


 金曜の放課後、瀬能に告白され、唇が触れそうになったあの瞬間。

 週末は顔を合わせずに済んだことで、どうにか心を落ち着けようとしていた。

 けれど――今日から従兄弟の怜が来る。少し浮き立ちながらも、胸の奥には説明できないざわめきが残っていた。


 改札から人波が吐き出される。その中に、ひときわ目を引く長身の姿。


 黒のスーツに就活バッグ。

 色素の薄い髪は照明を受けて淡く光り、抜けるように白い肌は人混みの中でも鮮やかに映えている。

 ちらちらと周囲からの視線を浴びても、怜はどこ吹く風で笑顔を浮かべていた。


「怜っ!」


 駆け寄ると、怜は少し驚いて、すぐに目を細める。


「おいおい……わざわざ迎えに来なくてもよかったのに」

「いいんだよ! 早く会いたかったから!」

「……そっか」


 久しぶりに交わすやり取り。懐かしさと安堵に、充希の胸は温かくなった。


 二人並んで歩き出した、そのときだった。


 駅前の塾から人影が出てきた。制服姿、教科書の詰まった鞄、眼鏡を押し上げる仕草。


「……っ!」


 瀬能孝司。


 心臓が跳ね、金曜の記憶が鮮烈に蘇る。裸眼の瞳、吐息、触れそうだった唇――。


「園田?」


 真っ直ぐに呼ばれ、充希は反射的に怜の背中に隠れた。


「充希?」怜が怪訝そうに振り返る。「友達か?」


「そ、そう! クラスメイト!」


 慌てて言い繕ったが、瀬能は一歩前に出ると落ち着いた声で言い放った。



「……ただのクラスメイトじゃない」

 一瞬の沈黙。

「付き合ってる」


「えっ」怜が素で声を漏らす。

口元に笑みを浮かべ直したが、その指先は就活バッグの持ち手をきゅっと握り込んでいた。


「ちょっ、ちょちょちょっと待てぇぇぇ!!」

充希は顔を真っ赤にして叫んだ。


「誰が!? いつ!? 俺聞いてねぇし!!!」


「昨日、返事をしたはずだが」


「勝手に成立させるなあああ!!!」


 駅前で響き渡るやり取り。周囲の視線も痛い。

 怜は二人を交互に見て、呆れながらも、探るように瀬能へ視線を返した。


 瀬能もまた、眼鏡越しに怜を真っ直ぐ見返す。冷静さと牽制の混じった沈黙が一瞬交わった。


「……もしかして怒っているのか。試しにキ――」


「やめろぉぉぉ!!!」


 慌てて遮った充希は、顔から火が出そうになりながら叫ぶ。


「そ、それ以上は……明日! 学校で!!」


 言うなり、怜の手をぐいっと引っ張った。

「帰る!! もう帰るから!!!」


 雑踏の中へ逃げ込む充希と怜。

 残された瀬能は眼鏡を押し上げ、ただ静かに見送っていた。


 引かれながら歩く怜は口を閉ざしていたが、充希にはわかっていた。

 ――家に帰れば、必ず根掘り葉掘り聞かれる、と。


(最悪だ……なんでよりによって今日……!)


 心臓の鼓動は収まらず、耳の奥でやかましく鳴り響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ