第七話/三月二十一日/真魚②
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
膝から崩れ落ちた媼は微動だにしない。
「…… …… ない……」
ぶつぶつと呟きながら、うなだれている。ちょっと衝撃が強すぎたか?
「媼よ、信じられないかもしれんが、儂にも信じられんのだ」
媼を諭すように語りかける。
「たわけ! お前のような小娘がお大師さまのわけないじゃろ!」
全く信じていなかった。媼の眼が大きく見開き、今にも殴りかからんばかりに身を乗り出す。
刹那、男が駆け寄り組み敷くと、媼ともども平伏した。
「申し訳ありません! 貴人よ! このババは鈍感なのです!」
「お主にはわかるのか?」
「これだけ強い法力の波動……。さぞや貴い御方でしょう」
この翁であれば話が通じそうだ。自らの置かれた状況を説き聞かせた。
「ふぅむ、信じられませんが、貴人はお大師さま? 美緒の身体に留まられておるのですか? それならば、この尋常でない法力も納得できますが……」
この身体の主は佐伯美緒という。
翁は美緒の祖父であり、先祖代々受け継がれてきたこの寺で住職をしている。
どうやら儂の遠い縁者のようだ。
人々の信仰が衰退した現代では、媼のように法力を感じない者が多いという。
「そうか……。儂が瞑想に入ってから一二〇〇年も経ったというのか……」
「美緒は、美緒はどこへ行ったのです⁉」
媼ががなり立てる。
「それは儂の内に留まり、眠っておる。安心するがよい。この不可思議な現象が解決すれば、おのずと意識を取り戻すであろう」
たぶん。
しかし、不思議なことに、この身体の主が同居し、息衝いているというのは事実である。
背中合わせのように、常にそこにいる。
息遣いを感じる程に。
「話を聞く限り、どうやら儂は弥勒慈尊とともに下生したのではなく、何者かによってこの身体に封されているという事のようだな。何か心当たりはないか?」
翁は右へ、媼は左へ目を逸らした。
「心当たりがあるようじゃのう……」
どうやら詳しく話を聞かなければいけないようだ。
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