第六十話【全六十七話】/三月二十四日
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
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岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
賀陽は起き上がらない。
その仮面は虚空を見つめている。
踵を返す。
「こいつは……七瀬を! 相応の罰を! 与えないと……!」
みさきが拳をこれ以上は無いという位に固く握りしめている。
「もうこいつはただの小柄な男だ。力も、呪いも如意輪観音様が持っていった」
みさきの拳を掌で包むと、指の一本一本を解きほぐしてやった。
「他の不幸の上に己の幸せはない、それは儂らも同じだ」
みさきは静かに頷くと、踵を返した。
「それじゃ、説教もしたし、七瀬の様子でも見に行くか」
「えっ……!」
みさきが唖然としたように、息を呑む。
「真魚、何を言っているんです……?」
「病院にいるんだろう?」
「七瀬は……死んじゃったんですよ……」
「えっ?」
「いや、これだけ科学が発展しているのだ。死くらいなんとかできるんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょう! 一度失われた命は……もう戻らないんですよ!」
みさきは両手で顔を覆って叫んだ。
「では……七瀬は……?」
「だから死んでしまったんです! もう会えないんです!」
いやいやいや……
「え、待って! 月まで行けるこの世界で人が死んでしまうのか! 車だってテレビだって飛行機だってあるのに、機械で身体は作れないのか!」
「できるわけないでしょう! だからこんなに悲しいんです!」
だから命は尊いんです!
「では、なんで病院に連れて行くんだ! 治してくれるのだろう!」
「真魚……」
みさきはその説明も躊躇われるように、それ以上何も言わなかった。
「それならば、あの時七瀬の身体に宿っていた魂はなんなのだ」
「どういうことですか、真魚……」
「魂は確かに七瀬の身体に留まっていた。輪廻もしていない」
「それは……どういう……」
「七瀬の命数は尽きてはいない」
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