第五十八話【全六十七話】/賀陽、追想
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
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岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
あの『大災禍』の日。父と母はあっけなく死んだ。
軍服の男が突然家へやってきて、土下座して父と母の死を告げた。
俺が覚えているのはその一瞬の光景だけだ。
「死」の概念もわからない齢だった。
孤児となった俺は親類縁者をたらいまわしにされた。
行く先々で引き起こる異常な現象に「鬼の子」とか「呪われた子」と呼ばれ、腫れ物に触るように扱われた。
厄介払いのように放り込まれたのが、皇典講研だ。
そこで俺は再び、軍服の男と出会った。
名を三田という。
三田は荒事専門の摩法使いだった。
再会した時、三田は全てを教えてくれた。
父と母の上司だった事。己の力不足のために二人を救えなかった事。今も申し訳ないと思っている事。
三田はずっと自分を責め続けている、子供心にそう思った。
刑部七瀬が二見家に引き取られたように、俺も関谷家という名家へ引き取られた。
だが、礼節を重んじる旧家に俺は馴染めなかった。
寄る辺のない俺は、修練もそこそこに三田について回った。
家族のいなかった三田は俺の意志を尊重して大切にしてくれた。
瘴気の満ちる現場が多かった。
それでも三田と行動を共にしている時が唯一、安らぎを感じていられた。
しかし、それを良く思わなかった関谷の家は、俺たちを引き離した。
三田も働く場所を奪われたのだろう。
その日から姿を見ることはなくなった。
俺は皇典講研を捨てた。
行く当てなんか無かった俺は賤賊になった。
最初は雨風を凌ぐために橋の下で寝起きし、日々の暮らしに必要なものを盗んだ。
食べる物、飲む物、着る物……。
冬になり、住む所が欲しくなった。人を脅して金を奪った。
その頃には、もう歯止めが利かなかった。
俺に失うものはない。
自らの身に禁術を刻み、成長が止まる。
金がありそうな所を片っ端から襲った。
次第に皇典講研の包囲網が狭まってくる。
追っ手は殺した。もう逃げられない。
次は俺が殺される番だ。
そんな覚悟をした時、三田がやってきた。
ああ、俺はこの男に殺されるんだと思った。
しかし、三田は皇典講研を抜けていた。
俺を逃がすために。
お前だけは殺させない、と。
気配を悟られないように、山の中で細々とした生活を始めた。
日の出に起き、陽が落ちると眠る。
鶏を飼い、畑を耕した。
たまに山を下りて必要なものだけを買う。
最初は慣れなかった。
俺の荒れた生活態度を何度も怒られた。
それでも、三田との生活は楽しかった。
心にぽっかりと空いた穴を埋めるように、包み込んでくれた。
家族とはこういうものかと思った。
いつ見つかるか、いつ殺されるか、常に怯えていた。
そんな生活の中で突然、三田が倒れた。
当然、病院には連れていけない。
闇医者に診せても原因がわからない。
三田は呪いだと言った。
これは未来永劫解けない呪いなのだ、と。
三田は次第に歩けなくなり、寝てばっかりいるようになった。
俺は賤賊へと戻った。
全国の神社仏閣を襲い、呪いを解く鍵を探して回った。
それでも、解法は見つからない……。
三田の身体は悪くなる一方だ。
三田の呪いを断ち切るためには宝剣が必要なんだ。
どうしても……
どうしても!
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