第四十七話/三月二十三日
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
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岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
「では、行こうか」
「何を好き好んで図書館なんかに……」
七瀬はあからさまに面倒くさそうな表情を浮かべた。
「こんな素晴らしい施設に来ないなんて、損しておるぞ」
「あー、はいはい。どうぞご自由に」
七瀬はキョロキョロと辺りを見回しながら、館内へと入っていく。
続いて入館すると、昨日と同じように二階への階段を上がる。
昨日読み終えなかった本を読書用の机に並べた所で、七瀬が詰め寄ってきた。
「おい、こら、勝手にどっか行くな!」
「ご自由にと言ったろうが。儂はここで本を読んでいるから、好きにしておれ」
「子供向けの本じゃないか」
「儂はまだこの世界の知識が足りぬ。まずはここから勉強じゃ」
そう言って、読書に没入していく。
七瀬はうろうろとしていたが、どこからか本を持ってくると、隣に座って読みはじめた。
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「おい!」
不意に沈黙が破られる。
「お腹減った。お弁当を食べよう」
腕時計を見ると、十一時を少し回ったくらいだった。
「早くないか?」
「こういうのは食べたい時が旨い時なんだ」
「儂はまだ腹が減っていない。一人で食べておいで」
七瀬にお弁当の入った包みを手渡す。
「そっか。わかった」
やけに素直だな。
そそくさと去っていった七瀬を見送ることなく、読書へ戻った。
しばらくすると食事を済ませたのだろう、元通り隣に座って読書を再開していた。
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「真魚! 真魚!」
ハッと気づいて、本から顔を上げる。
みさきが声を抑えながら、何度も呼びかけていた。
隣を見ると七瀬は机に突っ伏して寝ているようだ。
「みさきか。仕事が終わったのか?」
「また、ずいぶん集中していたんですね」
腕時計へ目を落とすと、やはり昨日と同じく十四時を指していた。
「ああ。夢中になってしまった」
「お弁当は食べましたか?」
「いや、まだだ。どうも集中すると途中で止められなくなる。悪い癖だな」
「仕方ないですね。では、食べに出ましょう。たまには外の空気を吸った方がいいですよ」
みさきはそう言って微笑んだ。
お弁当の入った包みは七瀬が持っているのかな。
そう思って隣を覗くと、机の端に包みが見えたので持ち上げる。
やけに軽い。
嫌な予感を抱きつつ開くと、空の箱が二つぽっち入っているだけだった。
「おい! 七瀬! 起きろ!」
揺さぶり起こす。
「ふぇ。揺らすな。食後の睡眠は格別なんだ」
「儂のお弁当をどこへやった!」
七瀬は寝ぼけ顔のまま、人差し指で自らのお腹を指し示した。
ニヤリと口元を歪めると、再び机に突っ伏して寝入ってしまった。
「おい! こら!」
声をかけても起きようとしない。
「真魚、もういいですよ。パンでも買いに行きましょう」
「じゃ、私はメロンパン!」
七瀬は急に跳ね起きると、手を挙げて答えた。
「お前なぁ、そんなに腹が減っているのか」
「成長期だからな」
胸を張って言う。
「儂だって、身体だけは成長期だ」
「明日から七瀬のお弁当は三人前にしてあげますよ。さあ、行きましょう」
踵を返したみさきにぱっと立ち上がった七瀬がついていく。
その後を追いかけた。
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