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第四十七話/三月二十三日

“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”

佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。

圧倒的な祈りの力、法力を伴って……


千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。


弘法大師『空海』・・・真魚

吉備の鬼神『温羅』・・・みさき

『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶

空海を追う『摩』法少女・・・七瀬


四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。

小旅行気分でお読みください。


弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。

 また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。


「では、行こうか」


「何を好き好んで図書館なんかに……」

 七瀬はあからさまに面倒くさそうな表情を浮かべた。


「こんな素晴らしい施設に来ないなんて、損しておるぞ」


「あー、はいはい。どうぞご自由に」


 七瀬はキョロキョロと辺りを見回しながら、館内へと入っていく。

 続いて入館すると、昨日と同じように二階への階段を上がる。

 昨日読み終えなかった本を読書用の机に並べた所で、七瀬が詰め寄ってきた。


「おい、こら、勝手にどっか行くな!」


「ご自由にと言ったろうが。儂はここで本を読んでいるから、好きにしておれ」


「子供向けの本じゃないか」


「儂はまだこの世界の知識が足りぬ。まずはここから勉強じゃ」

 そう言って、読書に没入していく。

 七瀬はうろうろとしていたが、どこからか本を持ってくると、隣に座って読みはじめた。


 ・

 ・

 ・


「おい!」


 不意に沈黙が破られる。


「お腹減った。お弁当を食べよう」

 腕時計を見ると、十一時を少し回ったくらいだった。


「早くないか?」


「こういうのは食べたい時が旨い時なんだ」


「儂はまだ腹が減っていない。一人で食べておいで」

 七瀬にお弁当の入った包みを手渡す。


「そっか。わかった」


 やけに素直だな。

 そそくさと去っていった七瀬を見送ることなく、読書へ戻った。

 しばらくすると食事を済ませたのだろう、元通り隣に座って読書を再開していた。


 ・

 ・

 ・


「真魚! 真魚!」


 ハッと気づいて、本から顔を上げる。

 みさきが声を抑えながら、何度も呼びかけていた。

 隣を見ると七瀬は机に突っ伏して寝ているようだ。


「みさきか。仕事が終わったのか?」


「また、ずいぶん集中していたんですね」


 腕時計へ目を落とすと、やはり昨日と同じく十四時を指していた。


「ああ。夢中になってしまった」


「お弁当は食べましたか?」


「いや、まだだ。どうも集中すると途中で止められなくなる。悪い癖だな」


「仕方ないですね。では、食べに出ましょう。たまには外の空気を吸った方がいいですよ」


 みさきはそう言って微笑んだ。

 お弁当の入った包みは七瀬が持っているのかな。

 そう思って隣を覗くと、机の端に包みが見えたので持ち上げる。

 やけに軽い。

 嫌な予感を抱きつつ開くと、空の箱が二つぽっち入っているだけだった。


「おい! 七瀬! 起きろ!」

 揺さぶり起こす。


「ふぇ。揺らすな。食後の睡眠は格別なんだ」


「儂のお弁当をどこへやった!」


 七瀬は寝ぼけ顔のまま、人差し指で自らのお腹を指し示した。

 ニヤリと口元を歪めると、再び机に突っ伏して寝入ってしまった。


「おい! こら!」

 声をかけても起きようとしない。


「真魚、もういいですよ。パンでも買いに行きましょう」


「じゃ、私はメロンパン!」

 七瀬は急に跳ね起きると、手を挙げて答えた。


「お前なぁ、そんなに腹が減っているのか」


「成長期だからな」

 胸を張って言う。


「儂だって、身体だけは成長期だ」


「明日から七瀬のお弁当は三人前にしてあげますよ。さあ、行きましょう」


 きびすを返したみさきにぱっと立ち上がった七瀬がついていく。

 その後を追いかけた。


お読みいただきありがとうございます。

皆様の応援が、執筆の糧です。


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感想はもちろん、

舞台となる岡山・香川の旧跡・名所のリクエストもお待ちしております。

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