第四話/三月二十一日/七瀬①
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
◇弘法大師『空海』…真魚◇
◇不死身の鬼神『温羅』…みさき◇
◇『吉備津神社』宮司の娘…伽耶◇
◇空海を追う『摩』法少女…七瀬◇
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
午前四時、寅の刻。突然「それ」はやってきた。
稲光が走り、頭の中が真っ白になる。
目を覚ますと、身体は怯えるように硬直し、指先は小刻みに震えていた。
何が起こったのか理解できない。とてつもなく強い気配が圧し掛かってくる。
金縛りを振りほどくように、枕元の霊刀を手に取った。
「何者だっ!」
大声を出してみると、頭が少しはっきりした。
部屋を見回すが、異常はない。誰もいない。心臓の早鐘だけが、自身の生存を証明していた。
直後、着信音が鳴り響く。鼓動がピークに達し、止まるかと思った。
だが、聞き覚えのあるメロディが自我を呼び戻す。
「本部」からで間違いない。
震える指を押さえつけるように動かしてスマホを開くと、「総員招集」の命令文が表示された。
動揺に反して、思考は冷静だった。
霊刀をぎゅっと握ったまま、ホテルの部屋から廊下へと転がり出る。
今までに対峙したことのない大きな力。
その片鱗が途切れることなく纏わりついていた。隣の部屋の扉をガンガンと叩く。
目的の人物はすぐに出てきた。侍女の近江である。
顔を見るなり叫んだ。
「車を!」
事情を呑み込めない近江だが、私の鬼気迫る表情に切迫した状況を悟ったようだ。
すぐに車の鍵をひったくり、一目散に駐車場へ向かった。
私は仕事道具を持って駆け出すと、玄関前のロータリーに荒々しく横付けされた車へ飛び乗った。
「どちらに?」
「とにかく南へ!」
黒塗りのセダンが急発進し、公道へ飛び出していく。
同時にスマホを取り出し、目的地に目星をつけた。
この方角……。
ある人物の名前が頭をよぎる。
佐伯美緒
空海の再来ともいわれる神童。
私より一つ年下で、今年、高校へ進学する。密教に精通しており、その特殊さゆえ本部から目をつけられている要注意人物だ。
行き先を定めると、上司へ報告するためにスマホを開いた。
「刑部です。私は直接、現場へ向かいます」
迷いを振り切るように、決意を吐き出す。
『力の源流点を察知したというのか⁉』
「方角からして、善通寺。佐伯美緒が関係していると思われます」
『七瀬! だめだっ! 一度、本部へ帰参せよ!』
「猶予はありません! 私が一番近いはずです!」
そう言い放つと、スマホの電源を切った。
力が抜け、沈み込むように座席へもたれかかる。
激しい動悸が未だに収まらない。
この力の主と対峙したとき、無事ではいられまいと確信していた。
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