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第三十九話/三月二十二日

“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”

佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。

圧倒的な祈りの力、法力を伴って……


千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。


弘法大師『空海』・・・真魚

吉備の鬼神『温羅』・・・みさき

『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶

空海を追う『摩』法少女・・・七瀬


四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。

小旅行気分でお読みください。


弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。

 また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。


 吉備津神社に到着すると、玄関の前で伽耶が待っていた。

 車を停めると、心配そうな面持ちで駆け寄ってくる。

 みさきは車の窓を開けて応えた。


「みさき、何があったの!」


「襲撃されました。この女に」


「この子が刃物少女⁉」


「刃物少女言うな!」


 このやり取りも板についてきたな。


「でも、水晶珠は割れてないんだけど、なんで……? 失敗した?」


「貴様が仕掛けたのか? 未熟だな」

 七瀬は呆れたように息を吐いた。


「なっ⁉」


「あんな子供騙しの感知陣では足止めにもならんぞ」


「やめとけ! な? 自らすすんで敵を作るな」

 割って入るも、七瀬は知らん顔でそっぽを向いた。


「ま、私でなければ間抜けが掛かっていたかもな」

 まだ言ってる。

 伽耶は感知陣が役に立たなかった自責の念と、身も蓋もない皮肉の板挟みで泣きそうになっていた。


「土岐子を待たせているんだろう。案内してくれるか?」

 伽耶は先頭に立って、とぼとぼと歩き始める。

 廊下を進み、重い扉を開くと、土岐子が座って待っていた。

 嘉治の姿は見えない。


「いらっしゃい。今日は当主が不在にしていてね。私が代理で話を聞かせてもらいますよ」

 土岐子は立ち上がると、努めて優しく話しかけた。

 少し形式ばった印象を受ける。


「あなたが刑部七瀬ですね」


「いかにも。貴様は藤宮の土岐子だな。報告書をよく読ませてもらっている」


「まさかこんな所で『摩』法少女とお会いできるとは、驚きです」


「摩法少女言うな!」

 もはやお家芸だな。


「魔法少女だって!」

「変身でもするんですか?」

 みさきと伽耶が噴き出す。


「あなたたちの思っている『魔』法少女じゃないよ。摩利支天の『摩』法少女。有名人よ」


「野蛮なマ法少女がいたもんですね」

 みさきが笑いながら言うと、くくく、と伽耶も笑いを噛み殺す。


「伽耶の感知陣を潜り抜けたと聞いた時から、あなただと思っていました」


「私の前では児戯じぎに等しい。鬼もたいしたことなかったしな」

 未だに笑いが止まらない二人に対して、七瀬がチクリと言い放つ。

 空気が凍った。


「あなたの組織はもっと穏やかだと思っていたけれど」


皇典講研こうてんこうけんは治安維持のための手段を選ばない」


「皇典講研って何なの?」


 伽耶の質問には土岐子が答えた。

「皇典講研は、神社本庁じんじゃほんちょうの前身で今はもう存在しない組織よ。表向きは、ね。人知れず、超常現象の管理と研究を行っているの。みさきちゃんが普通の人間と同じ生活を送れるように戸籍や身分証を作成しているのも皇典講研よ」


「みさきは知っていたのか?」

 七瀬をジトっとにらんでいたみさきへ問いかける。


「そういう組織があることは聞いていましたが、詳しくは知りません。話題にするべきではない、そういう秘密の組織だと思っていましたので」


「その通り。この事は絶対秘密よ。伽耶には、そのうちに教えていくつもりだったけど、事ここに至ったら仕方がないわ。全てをお話ししましょう。いいでしょう、刑部さん?」

 七瀬は沈黙で肯定する。

 土岐子は長椅子に腰かけると、皆に座るように促した。

 七瀬は座ることなく腕を組み、壁に背中をもたれかけたまま立っていた。


「皇典講研には超常現象を秘密裏に処理する部署があるの。そこには全国から素質のある者が集められて日夜訓練に励んでいる。各地の超常現象の情報を収集し、その力が悪用されたり人に危害を加えるようであれば、排除するために暗躍する。刑部さんはその中でも上位の存在だと聞いているわ。まさかお大師さまを追っているとは思わなかったけれど」


「鬼の事もよく知っているぞ、丑寅うしとらみさき」


「私たちが後見人になっている対象については、定期的に報告が必要なの。みさきちゃんの事も……ごめんなさい」


「謝る必要はないですよ。吉備津神社が庇護ひごしてくれているおかげで、私のような鬼でも安息の日々を送れています。むしろ感謝していますよ」

 土岐子は胸のつかえが取れたように息を吐き、微笑んだ。


お読みいただきありがとうございます。

皆様の応援が、執筆の糧です。


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舞台となる岡山・香川の旧跡・名所のリクエストもお待ちしております。

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