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第三十四話/三月二十二日

“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”

佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。

圧倒的な祈りの力、法力を伴って……


千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。


弘法大師『空海』・・・真魚

吉備の鬼神『温羅』・・・みさき

『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶

空海を追う『摩』法少女・・・七瀬


四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。

小旅行気分でお読みください。


弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。

 また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。


 みさきは車から降りると、軒下に干してあった玉ねぎを一束とり、ネギと同じ籠へ放り込んだ。


「真魚はこの籠を台所へ持って行っておいて下さい」


 玄関から中へ入ると、家を出た時のまま、電気は消えていた。

 どうやら伽耶はまだ起きていないようだ。


「私は朝食を作っておきますので、伽耶を起こしてきてもらえますか?」


 車庫から戻ったみさきは、前掛けをして早速料理に取りかかった。


「真魚、根気が大事ですよ」


「何が?」


「行けばわかります」


 意味深な言葉が気にかかる。言われた通り、伽耶の部屋へと向かった。

 扉を開けると、敷かれた布団から大きくはみ出して熟睡している伽耶が転がっている。


「寝相わるいなぁ。おい、伽耶。朝だぞ」


 声をかけるが、起きる気配はない。

 すると突然、スマホがけたたましく鳴り響いた。

 大きな音に反応して伽耶が辺りをまさぐり始める。

 スマホを探しているようだが、なかなか辿りつかない。

 仕方がないので手渡ししてやると、慣れた手つきで音を止めた。

 そして、そのままの体勢で再び眠りに落ちていく。


「おいっ! 寝るな! 起きろ!」


 今度は身体を揺さぶって、強引に起こしにかかった。


「んー、はいはい……。起きました。起きましたから」

 そう言いながら、身体を起こそうとはしない。


「寝るなー起きろー」

 掛け布団を剥ぎ取り、更に揺さぶる。


「起きてる起きてる起きてるからー」

 全然起きていない。起きる気もない。


「起きろー!」

 今度は耳元で叫ぶ。


「起きない!」


 起きない宣言をされてしまった。

 瞳は相変わらず引き結ばれたままだ。

 こうなったら仕方がない。

 伽耶を仰向けにすると、両腕を引っ張って、る。


「重い……」


 完全に力の抜けた伽耶の身体は、遅々として前に進まない。

 廊下を引き摺り、途中で休み、たまに壁で頭を打ちつけながら、また引き摺って居間まで連れてきた。


「みさき、こいつ起きないぞ」


「ですよね」

 料理中のみさきが事もなげに首肯する。


「朝ごはんができましたので、その辺に転がしておいて下さい」


 そう言うと、お盆に碗を載せて長机まで運んできた。

 机の上には白米に碗、焼き魚に香の物と彩り豊かに並んでいる。


「先に頂きましょう」


「ああ、そうしよう」


 みさきは前掛けを外し、席に着いた。

 食事を始めた矢先、伽耶のスマホが再びうるさく鳴り響く。

 素早い手つきで黙らせると、伽耶は大きく伸びをして起き上がった。


「んんんーっ。よく寝た!」


「伽耶、おはようございます。ご飯できてますよ」


「急に起きたな」


 伽耶は辺りを見回し、頭をさすりながら不思議そうな表情をしている。


「なんで私、リビングで寝てるの? あと、なんか頭が痛い……」


「起きないから連れてきたんだ」


 忌々しく抗議する。


「真魚が連れてきてくれたんだ。ありがとう! それじゃ、いただきまーす」

 軽薄な感謝が済むと、伽耶は朝ごはんの時間へと華麗に移行していった。


「真魚、言い忘れていましたが」

 みさきが笑いをこらえている。


「伽耶は二度目のアラームでしか起きない人なんです」


「先に言え!」


 全く、無駄な体力を使ってしまった。


お読みいただきありがとうございます。

皆様の応援が、執筆の糧です。


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感想はもちろん、

舞台となる岡山・香川の旧跡・名所のリクエストもお待ちしております。

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