第三十話/三月二十一日
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
「ああー、お腹いっぱい!」
伽耶がお腹をさすりながら、長椅子に寄っかかる。
「ご馳走さまでした!」
「ご馳走様」
「お粗末さまでした。伽耶はこの後どうしますか? 送っていきましょうか?」
「んー、もう帰るのが面倒くさくなってきちゃったな。泊ってもいい?」
「いいですよ。それなら、私からお宅に電話しておきますね」
「ありがとー。じゃあ、私がお風呂を沸かすね」
「助かります」
みさきは早速、伽耶の実家へ電話を掛け始めた。
「家に風呂があるのか?」
「あるよー。どこの家にも大体はあるよ」
「どこの家にも? それは贅沢じゃな。見せてもらおうか」
「オッケー。じゃあ、一緒に行こう」
伽耶が我が物顔で案内してくれる。廊下を進むと大きな引き戸があった。
「ここがお風呂だよ」
引き戸を開くとこざっぱりとした前室があり、その奥の部屋へと入っていく。
そこには大きな桶型のくぼみがあった。
「棺桶?」
「いやいやいや、ここにお湯を張って、そこに入るの」
「ほう。ちょっと思ってたのと違ったから。湯に浸かるなんて贅沢じゃな」
「贅沢って、普通毎日入るでしょ」
「昔はな、水浴びか蒸し風呂だったんだ。たまに湯が湧き出している所があってな、これ幸いにと浸かったりしたもんだ」
「温泉のことね。そっか、お湯は貴重品だったのかー。お風呂に入れないなんて、私には耐えられないかも……」
伽耶は袖と裾を捲り上げると、ゴシゴシと桶を洗い始めた。
「こうやって洗ったら、このボタンを押して、っと……」
伽耶が操作すると、水音とともに大量の湯が桶に張られていく。
「おおー、なんでもやってくれるんだな」
「便利でしょ」
風呂場から戻ると、みさきは電話を終え、食器を洗っていた。
「伽耶のお宅には電話しておきました」
「ありがとー」
「真魚、一緒にお風呂へ入りますか? 作法がわからないでしょう」
「いやいや、一人で入れるわい」
なんて提案をするのだ。
「では、簡単にお教えしておきますね」
みさきに伴われて風呂場まで戻ると、石鹸やシャンプーの説明を受けた。
なんでもこの世界の女の子は清潔さを旨とするらしい。
「では、まず最初は真魚からどうぞ。上がったら、このタオルで身体を拭いて、この寝間着を着て下さい。私の服なので、少し大きいかもしれませんが」
「ああ、わかった」
「何かあったら、呼んで下さいね。近くにいますので」
「近くにいるのか……」
多少の緊張感を伴って、風呂へと向かう。
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