第二十四話/三月二十一日
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
みさきの料理はとても美味しかった。
久しぶりの落ち着いた食事に、心が穏やかになる。
「一息つきましたし、そろそろ今後について話し合いましょうか。真魚はこれから、どうするおつもりなんですか?」
食後のお茶を差し出しつつ、みさきが問いかける。
「美緒が何をしたのか、なぜ追われているのかを調べなくてはならないな。しかし、情報が少なすぎる。何らかの術を使っているのだろうが、見当もつかん。高野山へ行けばわかるかもしれんが、いきなり乗り込んでも事を荒立てるだけで、解決には至らないだろう。まずはこの世界の事を調べ、知る事から始めようと思う」
「みさきから聞いたけど、重要文化財を破壊した挙句、国宝持って逃げてるなんて、普通、捕まるでしょ。刃物少女から匿うのはいいけど、警察沙汰に巻き込まれるのはゴメンよ」
「伽耶とも話し合ったのですが、一度、美緒の実家に電話をしてみましょうか」
「電話?」
みさきは一枚の薄い板を取り出した。
「これを使えば離れていても、会話ができるのです」
「こんな薄っぺらい板で?」
スマホというらしい。って、あれ?
「それ持っとるぞ」
左胸をゴソゴソとまさぐる。
「ほれ?」
「えぇー⁉ めちゃくちゃヒントになりそうな物を持ってるじゃん!」
伽耶が我先にとスマホを取り上げる。
「こんな大事な事、もっと早く言え!」
そんなこと言われても……
「胸鎧だと思って」
「いやいや、小さすぎるでしょ。守り切れないよ」
「そもそも女子高生は胸鎧を必要としませんから」
口口に責め立てられる。
「あぁー、やっぱりロックがかかってるね」
「誕生日とかでしょうか?」
「ろっく?」
「四桁の番号がわからないと、中を確認する事ができないんですよ」
「それなら、ついでに電話で聞こう」
早速、電話番号というのを調べてもらい、電話をする。
ポンポロンポンポポポン……スマホへ耳を当てると、弾むような音が流れはじめた。
『もしもし』
「翁か?」
『美緒! ではなくお大師さまの方ですか?』
「そうだ。変わりないか?」
『変わりないもなにも、こちらは大変だったんですよ。ぶっ壊された雨戸を修理したり』
「そうか。すまない。手間をかけたな。刃物少女はどうなった?」
『話を聞こうと思ったのですが、しばらく放心状態で……。付き添いの方が来られると、逃げるように去っていきました。それはそうと、錫杖を返してもらえんですかねぇ?』
「返すも何も、元々これは儂のだぞ」
『それはそうなのかもしれませんが……。国宝を紛失したとなれば、大騒ぎになりますよ。まあ、しばらくは模造品でしのぐことにします』
「早く返すためにも、この状況を解決する必要がある。美緒の事を調べてもらえんか」
『美緒についてですか?』
「そうだ。美緒が何をしたのかがわからなければ、手の出しようがない。美緒の身の回りをあたってみてくれんかのう」
『なるほど。国宝を人質に取られている気分ですが、わかりました。何かわかりましたら、この電話番号にかけ直しますね』
「あと、美緒の誕生日はいつだ?」
『美緒の誕生日は、四月二十四日ですね』
「四月二十四日だな」
二人に目配せする。
『お大師さまは今はどちらにいらっしゃるんです?』
「今は知り合いの居に身を隠しておる。落ち着いたら、そちらにも検分に行くつもりじゃ」
伽耶からロック番号が違うと指示が来る。
『一二〇〇年来の知り合いとは、さすがはお大師さまですな』
「美緒のスマホが手元にあるのだが、ロックが外せないらしい。番号に心当たりはないか?」
翁から自宅の電話番号などいくつかの候補が挙げられたが、いずれも一致しなかった。
『次来るとき、絶対、錫杖を持ってきて下さいね!』
「錫杖、錫杖、うるさいなぁ」
『では、何かわかれば連絡します』
「ああ、頼む」
電話を切る。
これすごい便利!
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