第二十三話/三月二十一日
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
「ちょうど帰ってきたようだ」
忽然と姿を消した時の、みさきの心の内は想像に難くない。
間に合って良かったと胸を撫でおろす。
その時、漆黒の鉄騎が駆けこんできた。伽耶も一緒だ。
「ただいま戻りました! はぁー良かった! いなくなってなかった!」
やっぱり。
「なんで玄関にいるのー? 寂しくなっちゃって、外へ出て待ってたのかな?」
伽耶がニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる。
「テレビに酔ったので、散歩していたのだ」
「なるほど。確かに、突然のテレビは身体が受け付けないかもしれませんね」
みさきは鉄騎から降りると、玄関の傍まで手で押していった。
「お腹は空いていませんか? ご飯にしましょう」
「ああ、ありがとう」
みさきの先導で、三人連なって室内へと入る。
伽耶は一目散にテレビの正面を陣取った。
ここが定位置らしい。
みさきは前掛けを着けると、早速料理に取りかかる。
「真魚、一人で大丈夫でしたか?」
「ああ、鬼ノ城を見てきた。相変わらずの絶景だな」
「今日は特に天気もいいですからね」
「気になったんだけど、みさきは空海の事、マオって呼んでるんだね」
足をぶらぶらと揺らしながら、伽耶が問いかけた。
「空海って、ちょっと堅苦しくて……。『真魚』は両親から貰った、幼い頃の名前なんです」
「そっか。じゃ、私も真魚って呼ばせてもらうね」
「呼びやすいように呼んでもらって構わない。二人は学校で勉強してきたのか?」
「今日は、今度から通う学校に挨拶へ行ってたんだ。それと部活の下見に、ね」
「ぶかつ?」
「学校で練習する趣味みたいなもの。私もみさきも弓道をしてるから」
バーンと言いつつ、弓を射る仕草をする。
「あれだけ正確無比で容赦がないのに、まだ練習が必要なのか?」
「正確無比はともかく、容赦なかった?」
「遊びで命を狙われるんだぞ、まさに鬼だよ」
「鬼を悪者みたいに言わないで下さい」
みさきが抗議の声を上げた。こんな時、本当の鬼がいるとややこしいな。
「まぁ、私は神事でも弓を使うし、ある程度はね」
「神事?」
「言っていなかったですね。伽耶は吉備津神社の宮司の家系なんです」
「吉備津神社といえば、みさきの父が祀られている神社か?」
「そうです。父が祀られている御釜殿には毎日通っていますので、伽耶とは小さな頃からの付き合いですよ」
みさきは手際よく料理を進めていく。いい香りが漂ってきた。
「吉備津神社の庇護のおかげで、鬼でも静かに暮らしていけるのです。感謝していますよ」
「私たちの一族は鬼を敬慕しているからね。感謝しているのはお互い様だよ。まぁ、でも……」
伽耶は思い出を振り返るように目を閉じると、ニコリと微笑んだ。
「私はみさきといると楽しいから、好きだよ」
「キャーありがとー! 伽耶の分、大盛りにしときますね!」
「あとご飯が美味しいのも好き」
「食後のプリンも付けましょう!」
二人の仲睦まじいやりとりに自然と笑みがこぼれた。
お読みいただきありがとうございます。
皆様の応援が、執筆の糧です。
もう少し下へスクロールしていただき、
広告バナー下の「☆☆☆☆☆」を押して評価をお願いします。
感想はもちろん、
舞台となる岡山・香川の旧跡・名所のリクエストもお待ちしております。




