第十七話/三月二十一日/真魚⑦
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
丑寅みさきは「鬼」である。
鬼と言っても角が生えている類ではない。
この地方の鬼は『温羅』と呼ばれ、身体能力が高く、寿命の概念が無い。
歴史の変わり目に神の使いとして現れ、気まぐれに去る。
その出現は時に吉兆であり、時に凶兆である。
姿かたちは人間のそれと変わらない。
出会ったのは、みさきがこの世界に姿を現して間もない頃だ。
みさきの父神である温羅が人間によって征伐された。
みさきはその後任としてやってきたのだ。
父が丁重に葬られ、神として祀られている事を目の当たりにしたみさきは人間を許し、見守っていく事に決めた。
しかし、人間は必要以上に鬼を恐れる。
みさきはこの世界に馴染めないまま暮らしていた。
その頃、霊験豊かな鬼ノ城に修行の場を求めた儂は、みさきと出会った。
名を問うと無いという。
どこから来たのかと問うと鬼門の方角を指し示した。
丑寅の方角からやって来た神の使い、『丑寅御先』という名前を与えた。
気に入ったのか、その後はそう名乗るようになった。
一年ほどだったか、鬼ノ城にはしばらく逗留した。
それまで諸国を転々としていた儂にとっては、安息の日々が続いた。
そんなある日、上京を請願された儂は鬼ノ城を発つ事になった。
みさきは、ずっと待っていますから、いつか帰ってきて下さい、と言った。
あれから戻る事のないまま、一二〇〇年も経ってしまった。
東進を続ける二人。白み始めた空に、巨大な影が落ちる。
「みさき! みさき!」
みさきの背を小突く。
「あの大きな建物はなんだ⁉」
「あれは瀬戸大橋です。橋ですよ、は・し」
「あれが! 橋⁉」
なんという大きさだ。
「この鉄騎といい、橋といい、すごい時代になったものだ……」
「もうこの海には海賊もいませんし、橋の上を安全に通ることができるのです。電車というもっと大きくて速い乗り物も走っているんですよ。さぁ、渡っていきましょう」
日が昇るにつれて煌めきを増す白波の間から、島々が姿を現す。
紫の空から解放されるように凛と立つ巨大な白の橋梁。
その壮大な景色に息を呑む。
「みさき、停まってくれんか? よく見たい!」
「追われているというのに物見遊山ですか、この人は……。ここでは停まれない決まりなのです。この先にサービスエリアがありますので、そこで停まりましょう」
技術と規則によって安心が享受される世の中だというのか。
感心した。
みさきはいくつかの操作を行うと、鉄騎を傾けて一つの島へ下りていった。
お読みいただきありがとうございます。
皆様の応援が、執筆の糧です。
もう少し下へスクロールしていただき、
広告バナー下の「☆☆☆☆☆」を押して評価をお願いします。
感想はもちろん、
舞台となる岡山・香川の旧跡・名所のリクエストもお待ちしております。




