第十八話/三月二十一日/真魚⑧
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
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岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
島へ下りると、鉄騎は徐々に速度を落とし、停まった。
「寒い!」
立て続けに起きる事件に意識していなかったが、一度意識し始めると身体を刺すような寒さが襲う。
特にこの、
「ひらひらした着物はなんだ! 寒くてしょうがない!」
「それはスカートというのです。この世界で、女性が主に着る服です」
「足が丸見えだぞ!」
「そういうものなんです。寒さは感じたら負けです。お洒落ですから。そういえば、バイクに乗っているときは気をつけないと下着が丸見えになりますよ。ちゃんとお尻で布を敷いて、捲り上がらないようにして下さいね」
「そんな事を言われても……」
既にだいぶ捲り上がっていただろう。
「服については鬼ノ城に着くまで待って下さい。ところで、お腹は空いていませんか?」
そう言われると、一二〇〇年ぶりの空腹を感じる。
意識すると、腹がクゥーンと鳴った。
「お聞きの通りだ」
「お腹の音も女の子らしいですね……。うどんを食べましょう」
「うどん?」
みさきに手を引かれるままについていく。
建物へ入ると、温かい湯気に包まれた。
みさきは、ここで待っていて下さいね、と席へ着かせ、パパっとどこかへ行ってしまった。
しばらく周りの様子を眺めていると、みさきが盆に乗せた二つの丼を持ってきた。
「これは饂飩ではないか!」
「そう、うどん。あなたが大陸から持ってきたものが、今ではこの国の常食なんです」
丼からは温かな湯気とともに、いい香りが漂ってくる。
「馳走になる」
合わせた掌を解くと、一気に啜り上げた。
「うまい! うまいぞ!」
思わず大声が出る。
衆人の注目を集めてしまった。着席し、声を潜める。
「でも、これは饂飩ではないぞ。うますぎだろう!」
「一二〇〇年の間に進化していますから。当時はもっと粉っぽかったかもしれませんね」
思わずがっついてしまう。反して、みさきはするすると上品に啜った。
「鉄騎に橋に饂飩に刃物少女……今日は驚くことが多すぎる」
「刃物少女には私も驚きましたが……」
刃物少女はこの世界でも珍しいらしい。
「体は温まりましたか? さぁ、出発しましょう」
「ああ、ありがとう」
「寒さはもうしばらく我慢して下さい。急がねば、学校に遅れてしまいますので」
「学校?」
「京の大学のようなものです」
「お前、大学に通っているのか!」
「この世界では私くらいの歳の者は皆、通うのです」
「皆とな! そうか……それはいい時代になったのう。綜芸種智院をお手本にしてくれたのかな?」
「あぁ。あなたの作ったその学校はすぐに潰れちゃいましたよ」
「えぇー! なぜ⁉」
「お金が足りなくて」
「世知辛いのぉ……」
「それにしたって、長く生きておるお前は学校に通う必要はなかろう」
「……暇つぶしです」
「そういうもんか」
「遅れると面倒くさい事が起こりますので。さあ、急ぎましょう」
そう言うと、再び鉄騎に跨り、北へと駆けて行った。
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