第十四話/三月二十一日/真魚⑤
“三月二十一日、午前四時、世界は光に包まれる”
佐伯美緒は、自らの身体へ弘法大師、空海の魂を転生させる。
圧倒的な祈りの力、法力を伴って……
千二百年の時を経て、遍照金剛が現世へと降り立つ。
弘法大師『空海』・・・真魚
吉備の鬼神『温羅』・・・みさき
『吉備津神社』宮司の娘・・・伽耶
空海を追う『摩』法少女・・・七瀬
四人の女子高生が織りなす、「因縁生起」を巡る物語――
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岡山・香川の実在の旧跡・名所を舞台に繰り広げられる、バトルコメディ奇譚。
小旅行気分でお読みください。
弘法大師 生誕一二五〇年 入定一二〇〇年 祈念作品
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体、等とは一切関係ありません。
また、特定の宗教・教義を礼賛するものではありません。
話が通じないどころか、聞く気もなかった。
まだ幼さの残る少女には不釣り合いな、圧倒的で純粋な殺気。
とりあえず!
この場から!
離れねば!
殺される!
南大門を目指し、暗闇の中を必死に駆ける。門を出た途端、眩しい光に照らされた。
黒い、馬? 追っ手か?
錫杖を構える。
黒い馬の騎手は、これまた漆黒の出で立ちだ。ご丁寧に黒い兜で顔を覆っている。
明らかに怪しい。
漆黒の騎手は下馬すると、品定めをするように凝視してきた。
何を考えているのか、全く窺い知れない。
突然、何かを確認したかのように大きく頷くと、こちらへ向かって駆け出す。
不思議と敵意は感じない。
刹那、抱きしめられた。強く強く、この身体を抱きしめたのだ。
「いや、あの、今はそんな場合じゃない、命が危ないんだって!」
漆黒の騎手を力いっぱい引っぺがそうと試みる。
しかし、少女の細腕では振りほどけない。
何かに気づいたように、黒い兜が脱ぎ捨てられた。
「お久しぶりです! 真魚! 姿は違えど、真魚ですよね?」
聞き覚えのある声に動きが止まる。こりゃ驚いた。
「お前はみさき! 丑寅みさきか!」
漆黒の被りを取り去り、顔が露わになる。
頭を振ると、その黒髪がサラサラと揺れた。
自らの髪が瞳を撫でたようで、パチクリと瞬きする。
その癖も、その姿も見知ったままだ。
なぜここにいる。
頭の中がシャーラの花で埋め尽くされる。想いが入り混じって、ぐしゃぐしゃになった。
「一二〇〇年ぶりです、真魚!」
とにかく今は、呑気に再会を喜んでいる場合ではない。思考を強引に切り替える。
「あの刃物少女はお前の知り合いか⁉」
「刃物少女? そんな物騒な友人はおりませんが」
みさきはきょとんと目を丸くする。
「目を覚ますと、何者かに命を狙われておるのだ! 逃がしてくれんか?」
「お安い御用です。とにかくここを離れましょう」
みさきに手を取られ、黒馬の背に騎乗する。鉄の、馬?
「腰に手を回して、振り落とされないように」
素早く左足を動かすと同時に右手を捻りあげた。
大きな唸りをあげて、鉄騎が駆け出す。
みさきは体重をかけて、巨体を大きく傾けた。
ひぃぃぃ、倒れるぅ!
体の側面が擦れる寸前で、今度は反対側に大きく傾いた。
何が起こっているかもわからないうちに、猛烈な勢いで死地から脱出する。
五重塔はみるみるうちに小さくなり、視界から消えた。
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